Little Butterfly

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婚約のご報告



5年ほど苦労して何とかたま~にTが家に来れるところまでこぎ着けたものの、「婚約しました~」とぱ~っと明るく話せる内容ではなかったのだ...

家族はいずれ私がTと結婚するんじゃないかと言う事はうすうす感じていたけど、多分、そんなに早くこんな日がやってくるとは思っていなかったと思う。プロポーズされたとき、私は22歳。そしてまだ大学を卒業していなかった...「親のすねかじり」のままだった。

とりあえず旅行から帰った私。お母さんは「おかえり~どうだった~??お土産は~?」という感じで明るくお出迎え。私は「う、うん。楽しかったよ~...」でも、タイミングがつかめなくて婚約の事は口にできず...左手の薬指に光るプラチナのダイヤの指輪がまぶしくて、ついついダイヤを手の平に回して、見えないようにしてしまった(笑)。そのまま、ソファに座って、かな~り経った頃、勇気を振り絞った。「あ、あの~。あのさ~。...婚約指輪もらちゃったんだよね...あはは。」まるでちびまる子ちゃんの顔に縦線が入るときみたいに引きつった表情で告白。お母さんは「はぁ~?」と一言。きっつぅ~!!

その夜、もう一度お母さんと話した。きっともう感づいていてたとは思うけど私はやっぱりT以外は考えられない。Tと結婚したいと思ってる。でも、大学はきちんと卒業するし、卒業してもすぐ結婚ってわけじゃなくて、一年くらいは働いてお金も貯めるつもり。お母さんは、かなり複雑な様子だったけど、最後には「子供の幸せが一番大事なんだ」って言ってくれた。

難関はお母さんではなく、お父さんだった。お父さんは元々Tとの付き合いには反対も賛成もしていなかったんだけど、お父さんに改まって「結婚」の報告をするのはかなり言いにくかったのだ。うちのお父さんは無口で、普段もあまり話すことがない。Tとの途中経過だって、ぶつぶつ文句を言うお母さんにはまめに報告していたけど、お父さんに自分の彼の話をする事は全くなかったから。結婚の事だってお母さんに「ねぇ~、パパにはお母さんから言っといてくれない~?」と言ってしまったほど、言いにくかった。案の定、お母さんは「何言ってんの?あんたが自分で言いなさい!!」って怒られたけどね(苦笑)...

お父さんは毎晩、晩酌をする。その日も仕事から帰ってきたお父さんは居間に座って酒を飲んでいた。私はそれとな~くお父さんのそばに座って雑誌をめくったりしていた。キッチンの方にいるお母さんと目が合うと、お母さんは口をパクパクさせて「は~や~く~」って言っていた。早くしないと、パパは酔って寝ちゃうから。

私は思い切って、お父さんの前に正座をして、重~い口を開いた。そして「あの~。話があるんだけど~。」お父さんはうんともすんとも言わない(ま~、いつも元々こんな感じなんだけど)。そして私はTと婚約した事を説明した。お父さんは「......。」相変わらず返事なし。起きてます?そしてしばら~くしてから、「自分たちでしっかりやっていけるならいいんじゃないか。」ってボソッと言った。

ここまで読み返してみるとうちのお父さんはかなり貫禄のある日本の「おやじ」って感じだけど、実は家のパパはかなり若い。私が結婚の報告をした時点で43歳だった。パパと同世代の人の子供は小学生や、中には幼稚園生の子供を持つ人もいる。「娘が嫁に行く歳」ではなかったかも...。

とにかく、おやじの雷が落ちるわけでもなく、ちゃぶ台がひっくり返るわけでもなかったが、お父さんに婚約の報告をするのは辛かった。なんとなくお父さんを裏切ってしまったような気がしたのだ。

これまで特にべったりというわけでもなかったが、今まで大事に育ててもらった。それが大学卒業を控えた娘が「お嫁に行きます」ってのは何となく可哀想かな~なんてね...

パパ、こんなに早くお嫁に行く事になってごめんね。


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