Sketch Book*

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センセ。~中村*短~








これは前のサイトで書いた『せんせ。』という小説を
先に読んだ人しかわからないと思います 苦笑





長い坂道を転げるように、とはまさにこのことだろうか。
志乃がいない毎日はとてつもなく長かったように思える。

4年という歳月は、俺を堕とし、そして少しずつ地へとあげてくれた。
3年と半たったころにぽつりと呟いた。

『志乃は、もう、イナイ。』

それから猛勉強した。
もう一度、志乃と出逢った教師として、志乃との場所に返るために。

教師としてまた地に足をつけたとき、志乃の墓に行こうと決めていた。
果たしてない果たすべき約束を、今更だと思われてもいいから果たしたかった。

4年。
今となっては『長かった』とヒトコトで終わってしまうようなことだ。
志乃がいないことを受け入れられた俺は、あの4年を長く語ることはなかった。

4年ぶりの再会。
志乃の4回忌。
午前中に誰か来ていたのだろうか、花が添えてある。


俺の持ってきた花は、花というより華だろう。
墓場にはそぐわない両手いっぱいの薔薇の華。
志乃の墓に華をむけて、いい香りだろう?と投げかけても何も返ってこない。

前だったらこれすら駄目だったであろう。
だけど今は、余裕で笑って返せる。


『志乃。』
あの頃、呼んであげられなかった名前。
果たせなかった約束を、こんな形で果たしてしまったけど、俺を許して欲しい。

君は幸せだったろうか。
死に至るそのとき、幸せだっただろうか。

人の、俺のぬくもりに触れていられただろうか。

スーツに薔薇の華なんてちょっとクサいかなって苦笑いしたとき
《かっこいいよ、似合ってる。いい香りだね。ありがとう。》
そういって笑った志乃が見えた気がした。

《愛してる》

波長を合わせると、暖かいものが俺を通った。

『志乃、待っててくれて、ありがとう。』

涙が暖かいのだと思ったのはいつぶりだろう。
ぬぐうのがもったいと感じる涙。

志乃が、俺にくれた涙。

俺は持っていた薔薇を墓の目の前に置いた。
空がきれいに見えるこの場所で、志乃は今日もあの日のまま。

『ほら、志乃。今から空の話をしてやるよ。』

墓石のとなりで寝ッ転がってる俺を見てきていた人たちは笑ったり変な目で見たりしたけど
ゆっくりゆっくり、空の話をしていった。

灰色だった空は
志乃という太陽で反射した水蒸気で青くなった。
君は僕の太陽だなんて、どこのだれが考えたかもわからないクサイことばを使うより
今、俺の言葉で君に空の話をしたいんだ。

約束だったから。


『またくるよ。』

夕焼けがきれいな頃、俺は墓石のあたまをあのころと同じように優しくたたいて
その場を後にした。

明日から、またあの学校で俺は授業を教える。
きっとうわさにでもなるだろうな。
「昔ここの生徒と付き合ってた」とでも言われるのだろう。

きっと聞いてくるヤツもいるだろう。
俺は堂々と胸張って答えてやるけどね。

『生涯愛する女とココで出逢ったんだ』



+ センセ。~中村~ +





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