crying for the moon

crying for the moon

辻仁成さん(2)


豊は笑った。
「君に愛されなくなった時、私の意味は終わる。」
そして豊は急に笑えなくなってしまった。
(「サヨナライツカ」P54より)


二人は口づけを交わした。闇の中でお互いの存在を確かめ合うようなキスだった。
その柔らかい感触は、そこに彼女がいることをはっきりと伝えてきた。このままどこまでも堕落しても構わない、とその瞬間は思うことができた。
きっと薬物中毒者は誰もがそう思って底無しの沼に落ちていくに違いなかった。
(「サヨナライツカ」P61より)





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