FIFTH-PHASE 炎を超えて


「シャトルはそのまま降下しろ、こっちのシャトルもだ!」


大気圏突入準備に入り掛かっていた貨物用シャトルの上部ハッチが開かれ、クルードとクリムゾンの出撃状態が取られる。


「カナト・ガーウィン、クルード発進する!」
「シルバ・シャム、クリムゾン出撃るぜ!」

『ドレイク級2隻、ネルソン級1隻、メビウス46、直も出撃中、お二人とも気を付けてください!』

「結構な数だな・・・もしかして哨戒部隊じゃなくて補給に戻った艦隊かよッ!?」
「俺達だけじゃ分が悪いな、だけど殲滅するのが任務じゃない・・・シャトルを守れ!俺達で出来る限り敵を引き付けるぞ!」
「そういうのは好きじゃねぇんだが・・・仕方ねぇ、了解だッ!」


クリムゾンは前方のメビウス部隊に飛び込み、二挺の重突撃機銃を所構わず乱射する。
何機かは被弾するが撃墜には至らず、その殆どは散開して回避していた。


「今のでいくつか部隊で固まった所が・・・!」


カナトは一つに固まった四機のメビウスの懐に素早く入り込み、両手で握ったシュベルトラングを一度に薙ぎ払った。

メビウス部隊の間をぬう様に敵艦の艦砲射撃が容赦なく撃ち込まれる。
二人も応戦するが、レンジの差で未だ有効打を与える事が出来なかった。


「くっ、艦隊相手で戦艦の援護なしだと流石にきついな・・・」
『シャトルは大気圏突入開始!後は彼等の有効射程外になるまで押さえてください!』
「分かってる!」


一機ずつ撃墜しても直も戦艦から出撃されるメビウスの部隊とネルソン級の砲撃を相手に、二人は苦戦を強いられていた。

クルードはシュベルトラングと重斬刀の二刀流で一隻に迫り、次々とメビウスを両断していく。
しかし、背後から展開していた数十機に周囲を囲まれ、レールガンから一斉に放たれる。
クルードは各部のスラスターを全開に駆使し回避行動に移るが、避け切れなかった一発が左肩に直撃し、大きくバランスを崩してしまう。


「ぐわ・・・ッ!?」


直撃コースの弾丸が迫る瞬間、クリムゾンから放たれたミサイルの弾幕が、レールガンの雨を遮った。
更に重突撃機銃の連射に囲んでいたメビウスを撃墜していく。


「シルバ!」
「道は開けてやったぞ、突っ込めぇ!!」
「あぁ・・・ これでぇぇぇぇ!!」


シュベルトラングを横に構えたまま一直線に突っ込み、正面のネルソン級戦艦の艦首を斬り落とす。
とどめを刺す様にクルードのビームライフルの一撃が動力部に直撃し、ネルソン級は跡形も無く爆発する。


『こちらも大気圏突入準備を開始しました、お二人とも速く!』
「分かった、退くぞシルバ!!」
「後味悪過ぎだ畜生ッ!?」
「戦術的撤退だ、我慢しろ!」


二機は全ての装備を投げ捨て、シャトルに向かってフルブーストで駆け抜ける。
それを連合軍がみすみす見逃す筈もなく、二機の背後から追撃を駆けてくる。


「くそッ、地球の重力と全速力で操縦桿が重い・・!」
「頼む、持ってくれよぉ・・・!!」


背後から攻撃の雨に武装を捨てた二機は回避もせずシャトルに向かって駆け抜け、コックピット内にはDENGARの警告がけたたましく鳴り続ける。


「くぅ・・・・!」
「うぉぉぉぉぉ!!」



『・・収容完了です!ギリギリでしたねお二人とも』
「ふぅ~・・・全く、ヒヤヒヤしたぜぇ・・・」
「・・あはは、ホントだな・・・」


二人が安堵の息を漏らした所で、モニターの中では隊員が突き飛ばされ、横から膨れっ面で睨むシンの顔が入り込んだ。


『隊長は被弾してるし、これは直しがいがあるって事でいーよなー?』
「あ、あぁ・・・す、すまない、また頼むな・・・」


二機を収容したシャトルは直後に大気圏の突入を開始する。

大気圏降下装備のない連合艦隊は追撃を停止し、次々と信号弾が放たれる。
だが一機のメビウスが無視して急接近し、大気圏との摩擦熱をシャトルで遮る形で真上に付いていた。


「なっ・・あの野郎、相討ち覚悟で攻撃する気かよ!?」
「このシャトルに迎撃装備はない・・・くそっ!?」


「青き・・・清浄なる、世界の・・為に・・・!!」


肉薄した距離にまで近付いたメビウスのレールガンが放たれる。
直後に放熱に耐え切れなくなった機体は砲身を中心に爆散した。

放たれた弾丸はカナト達のシャトルに目掛け、装甲の表面で爆発する。


「くぅ・・ッ!ひ、被弾状況は!?」
「先程のは大気圏の熱で着弾前に破裂したので耐久的には問題ありません・・・
 ですが、衝撃で左側部の姿勢制御スラスターが停止、このままではカーペンタリアには・・・」
「コンピュータと他のスラスターで制御、最低でもザフト圏内には!」
「推進剤の引火には気を付けろよ!?」
「もうやってますよ!」


########

[C.E.71 3/1 AM5:26]

アフリカ大陸南部の遥か上空、朝日と共に一つの貨物用シャトルが彗星の如く地球へと降り立った。


「・・・何とか無事に降りた、かな・・・」
「座標確認・・・ちゃんと南アフリカには降りられたようです」
「カーペンタリアも直ぐそこだな、俺達は運が良いんだか悪いんだか」
「そう言うなよシルバ、全員無事に降りられただけでも十分だからな」
「では周辺に駐留基地があると思いますので、其処へ連絡します」
「あぁ、よろしくな・・・俺は少し・・休むから、な・・・」
「・・俺も、そうするわ・・・」


極限の真剣状態から解かれた二人は椅子に深く座り込んで泥の様に眠りに付いた。

次に目覚める、その先の戦いの為に。



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