アジア型食生活を続けると、健康で長生きできるという研究結果は最近、数多く出ています。こうした結果の大半は、コーネル大学の栄養生物学者、T・コリン・キャンプベル(T. Colin Campbell) 博士やChinese Institute of Nutrition and Food Hygiene(北京)のチェン・ジュンシ (Dr. Chen Junshi) 博士が、中国本土の地方に住む6千500人と台湾人1万500人を調べた膨大な研究が基になっています。
研究では、中国人に冠状動脈心臓病やがん、また欧米によく見られる慢性疾患患者が少ない理由が明らかなっています。 China-Cornell-Oxford Diet and Health Projectではさらに、地中海型食生活が健康であると指摘されている理由も解明して見せています。実は、両方の食生活に大きな共通項があり、それはどちらもほとんど肉を食べないことです。
Cancer Fighters(がんと闘う食品) 欧米で患者数が増加している腸がん。でも反対に、東洋ではその罹患率は低いようです。この違いの理由として、アジア諸国の人々の摂る食物繊維量が欧米人の3倍に達する事実を科学者は指摘しています。中国人は米、小麦、アワ、大麦といったものからおおかたの食物繊維を摂取しているのです。キャンプベル医師は研究の中で、中国人が腸がんで死亡する割合を、男性10万人中6.6人、女性は同じく4.3人とはじき出しています。一方の米国では、同じく男性16.9人、女性13.1人という数字が出ました。こうした大きな違いは、単に偶然によるものではありません。
腸がん以外のがんもアジア諸国では目立って多くないことから、キャンプベル医師を始めとする多くの科学者は、大豆の摂取にその答えがあるのではないかと目を向け始めています。多くのアジア民族は、毎日何らかの形で大豆を摂っています。それは、豆腐であり、テンペであり、味噌、豆乳、醤油であったりしますが、National Cancer Instituteによると、どんなものにせよ抗がん作用があるといわれる植物性化合物質の『アイソフラボン』を含みます。大豆はまた、更年期障害の症状緩和効果もあるということです。
Bacteria and Your Immune System(細菌と免疫システム) 完全な菜食型や野菜を多く食べる食生活では、免疫システムが強化されます。コーネル大学のジェフリー・ゲイツ博士の説明によると、人の胃腸器官には500種類ものバクテリアが存在しています。バクテリアの中には「悪玉」があり、また「善玉」もあるということです。善玉バクテリアは、免疫機能を促進し、他の細菌の増殖を押さえます。植物性食品は自然界の糖、オリゴ糖を含みますが、この糖は「善玉」バクテリアに栄養を与える餌となり、成長を促すのです。一方、肉や乳製品を摂ると、「悪玉」バクテリアに栄養をたくさん与えるような結果となります。腸内バクテリアにスポットをあてることは胃腸生態学という新しい学問を形作り、これからの健康関連問題を解明していく力となると期待されています。
Not Always Perfect (いつも完璧とは限らない) アジア型食生活に欠点がないというわけではありません。キャンプベル医師は中国での調査の間、アメリカ人より胃がんの罹患率が高いことや高血圧症も多いことに注目しました。塩気の多い醤油などの食品を多く摂るため、塩分の摂りすぎが原因ではないかと、同医師は考えています。以上の悪い要素を食生活から排除すれば、東洋と欧米の良い所だけを味わうことができます。食生活は、最終的には自分の身に帰ってくることです。だからこそ、じっくりと落ち着いて取り組むことが大切なのです。