カガワちゃんの毎日。

カガワちゃんの毎日。

心の旅



夜半過ぎから降り始めた雨の音を、
夢うつつで耳にすると、
私は決まって、ぼんやりとあの日々のことを思い出す。
きっと、もう夜明け頃であろうに、
激しく降り続く雨のせいで、
外はまだ薄暗い。
思い出すといっても、その記憶は
まるで水面に張った油膜のようにおぼろげで、
淡い画像の一片が、
心の中をぱらぱらと、おちていくだけだ。
そして、それらは
次第に私を心地よいまどろみへといざなう。
降り注ぐ雨の音に包まれながら、
なぜだか私は安堵して
再び眠りにつくのだ。

あの日も雨がふっていた。
あれも
私の人生における邂逅であったのか。
そして
それが僥倖だと
なぜわからなかったのか。

誰しも
心の中を旅している。
私は時折、
そっと追憶の中に心をすべりこませる。
そこから何かが生まれるわけでもないけれど
夜の雨の音を聴くのが
好きなのだ。


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