クレセントムーン2



ある程度時間を潰した薙は家に帰ることにし、いつもの通学路を歩いている。

「何もしてないのになんか疲れたな」

いつもならこんなに疲れないのにと思いながら歩いていると携帯のマナーが起動する。

「ん?ダレだろう?」

携帯の着信画面には非通知と表示されている。

薙は溜息を一つついて携帯をポケットにしまいこんだ・・非通知なので電話にでる気はないらしい。

「嫌がらせか?俺も嫌われたもんだな」

自身に冗談を言ってしまう薙。

傍から視るとなんとも淋しい光景だ・・
しばらくして家に着き玄関の鍵を開けるとドアの奥からパタパタとスリッパの音が近づいてきた。

「おかえり!お兄ちゃん♪今日は遅かったね」

満面の笑みで両手をパタパタさせている少女に薙は返事を返す。

「ただいま!水奈。テスト前なんだろ?勉強しろ。」

少女の名は「水奈」、薙の妹だ。

しっかり者だが抜けている面もあり、薙に対してかなりの好意を抱いている。・・世間でいうブラコンと言う属性の妹だ。

「だいじょ~ぶ♪任せてよ。ところで、お兄ちゃん。いきなりで悪いんだけど買い物に行ってきてくれない?」

うっ・・せっかく休めると思っていた薙にとって今からの買い物はRPGでいうラスボス前で回復ができない状態と同じである。

・・・が、しかし妹の頼みを断りきれず

「かったりぃ!けど仕方ねぇな・。で、何買ってこればいいんだ?」

ハイッ!とメモを手渡された。
メモに書かれていた物は思っていたよりも量が少なかった、そのため

「水奈!なんか別に欲しいものないか?なんか買ってやるぞ?」

と言ってみる久々に妹に頼み事をされたので少しばかり嬉しい気持ちがあるのだろう。

「うにゃ?う~ん・・・じゃあ、シャーペンが欲しいかな」

悩みながらに出した答えがこれだった。

水奈は、あまり私欲が無いのでそこがたまにキズだったりする。

兄以外の人には違うらしいが・・そこはあえて触れないでおこう。

「わかった。ってか水奈、買い物なら電話してくれりゃ帰りに寄ってきたのに」

靴を履き直しおわった薙が問う。

「したよ?・・・でなかったけど」

・・おかしいな?と着信は無かったはずだけど・・と思いかけたとき、あることに気付いた。

「お前、電話駈けるときに番号前に数字つけたか?」

まさかな と思いつつきいてみる。

「うぅん。付けてないよ。どうして?」

ここまできたら後はオチだろう。

・・そう、あの非通知電話は水奈からだったのだ。

そうか、と苦笑しながら靴を履き直す薙と、まだ理解していない水奈は首を傾げている

「まぁ、とりあえず行ってくるわ」

そう言って外にでる。外は日が落ち始めていたため早めに済ませて帰ってきたほうが無難と踏んで駆け足で目的地に迎う。

「一通りは終わりだな。あとは・・」

買い物を終えた薙は近くの本屋で本を買うことにした。

暇つぶしの意味もあるのだろう。

時間が余ったため公園のベンチで少し休む事にした。

「夜の公園もたまにはいいもんだな」

呟きながら、今回はあったかいお茶を飲んでいる。

「今回の自販機は、あったかいがちゃんとあったな」

なぜか満足気である。そろそろ時間と思いベンチから立ち上がる。そこでまた空き缶を投げるが入らない。仕方なく空き缶を拾いゴミ箱に捨てる。すると
「こら~!ポイ捨て~禁止~」

聞き覚えのある声がした。

薙はまさかと想い振り替えるとそこには昼間の少女がやはり頬を少し膨らませて立っていた。

「あっ?昼間の・・またポイ捨て?・・て、あれ?」

どうやらポイ捨てと勘違いしたらしい。薙と少女は苦笑して立ち尽くす。

「まぁ・・あれだ!・・座れよ」

ベンチの隣を叩いて薦めてみる。

「あ・・ぅん」

少女は意外と素直に隣に座った。

「何してんだ?こんな時間に」

薙は問い掛けてみたが少女は無言のまま夜空を見上げて何かを探している。

「お~い?きいてるか?」

薙の問い掛けに少女は少しだけ答えた。

「ちょっと・・いろいろと」

そういうとまた口を閉ざした。・・薙はきっと言いたくない理由があるのではないかと思い問うのを止めた。

二人して星を眺めていると携帯が鳴った。

「もしもし、お兄ちゃん?もう遅いから帰ってきて私、心配だよ」

時計をみると十時を廻っていた。

「わりぃ。妹が心配してるから帰るわ。お前も時間遅いんだから早く帰ったほうがいいぞ?」

少女はコクンと頷いてゆっくり闇の中へ歩き消えていった。

「早く帰らないとな・・」

荷物を抱えてダッシュをする。・・薙は走りながら少し淋しそうな娘だったなとなぜか思った。

次に会ったら名前を聞こうと自分に言い聞かせた薙だった。。。


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