颯HAYATE★我儘のべる

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高天の観察日記 4~7




タマがカンかもしれない。

考えはじめると止まらない。

きっとタマがカンなんだ。

まずはタマを監視しなくっちゃ。

そのためにはまず早起きだ!

タマよりも早く起きて見張らなくっちゃ。

僕はいつもより1時間早く目覚ましをセットした。

朝の6時。完璧だ!

僕は6時に起きた。ちゃんと起きられた。良かった。

急いでタマの部屋に向かったが、部屋は無人だった。

どこに言ったんだろう?

もしかしたら、僕のことをお父さんに言っているのかも。

きっとそうだ。タマはカンなんだから、僕を見張っているはず。

どこだ、どこにいるカン!いや・・・タマ!

僕はゆっくりと辺りを見渡した。

いない・・・タマが消えた。

忽然と部屋の中から消えてしまった。

「坊ちゃん、タマに何かご用ですかね?」

背後から突然の声!!タマ!!!

「どこにいたの?」

「・・・坊ちゃんたちの為にテーブルを整えていたんですよ」

「こんなに朝はやくから?」

「坊ちゃん、お父さんはもう出て行きましたよ」

え?お父さんってこんなに早く会社に行くの?知らなかった。

お父さんはいったいいつ寝ているんだろう。

寝ないでも生きていられるのかな?

もしかしたら・・・タマだけじゃなく、お父さんも化け物かも。

お兄ちゃんがお父さんは猛獣だって言ってたし、お母さんも言ってた。

うん、お父さんは人間じゃないんだ。

じゃあ、僕は人間と猛獣のハーフ!?かっこいいかも・・・

「坊ちゃん」

う~ん・・・僕ももしかしたら変身とかするのかな?

どういうポーズをすると変身するんだろう?

「坊ちゃん!?」

タマの声に我に返った。

「何?」

「・・・まったく、全部声にでていますよ・・・で?このタマに何の用ですかね?」

「・・・タマ、タマっていつも何時に起きているの?」

「4時です。朝の4時」

朝の4時っていつ?僕はそんな時間を知らない。見たこともない。

そんな存在しない時間に起きるタマは・・・やっぱり化け物かも。

ってことは『カン=化け物』なんだ!

だんだん、カンのことがわかってきたぞ!!

よし、明日は朝の4時も絶対に見つけよう。

高天は大喜びで自分の部屋に戻っていった。

その姿を見送りながら、タマは首をかしげた。

「いったい何をしに来たんだい?」


FIN




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●高天の観察日記 5●


朝の4時は簡単に見つかった。

だって・・・時間だってことは僕にもわかっていたからね。

とにかく、その時間を見てみなくっちゃわからない、

だから僕は緒方さんに「起こしてね」って頼んだんだ。

ちゃんと起こしてくれたけど、僕がわかったことがひとつある。

朝の4時は実は・・・夜だってこと。だって真っ暗なんだよ?

真っ暗ってことは夜だよね?タマってば間違っている。

眠くてたまらないけど、頑張ってタマの部屋に行った。

とにかく「カン=タマ=化け物」を証明しないといけない。

僕はふらつきながら・・・タマの部屋へ行った。

ここでタマがでてくるのを待とう。そして尾行するんだ。

探偵みたいで僕ってかっこいい!!

名探偵コナンみたいだ。いや、金田一少年?やっぱコナンだな。

僕は金田一くんより年下だから。

タマはまだ出てこない。朝の4時なのになんでかな~。

「坊ちゃん?」

誰?僕を呼んでいるのは!!タマにバレちゃうじゃないか!

「坊ちゃん!こんなところで何してるんだい!?」

え?タマ?いつのまに・・・僕はあわてて立ち上がった。

あれ?僕は何をしてたんだっけ?もしかして・・・

「坊ちゃん、なんでこんなところで寝ているんだい?」

え?やっぱり僕って寝ていたわけ?朝の4時に起きたはずだけど。

う~ん、やっぱり変だ。起きたのに寝ている。

やっぱりタマが何かしたのかもしれない。何かの術で僕を寝かせた?

「カン=化け物」は間違ってないのかもしれないな。

これって証明されたことになるのかな~? いや、まだダメだよね。

お父さんとお母さんの秘密よりも「カン」を観察して真相を探った方がいいかな。

そうしたら、案外とお父さんとお母さんの秘密もわかったりして。

これって一石二鳥とか言うヤツじゃないかな。たぶん。

「寝てないよ。僕は化け物を観察してるんだ!」

「・・・化け物って何のことだい!?」

あ、思わず口にだしてしまった。僕のバカ!!ドジ!なにをやっているんだ??

「なんでもないよ」

僕はあわてて言った。「タマ=化け物」なんて言えないよね。

言ったら、僕を寝かせる以外のひどい術をかけられるかもしれない。

僕はそんなのは嫌だ。

「まさか、このタマを化け物と言っているわけじゃないでしょうね?」

ええええええ?どうしよう・・・バレてる!?

僕はあせってしまった。どうしていいかわからない。

でも、簡単にバレるなんて・・・やっぱりタマは化け物だ。

これで完全に証明されたと思う。

でも・・・・この場はどうしたらいいわけ??

FIN



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●高天の観察日記 6●


どうしよう・・・つい言ってしまった。

「化け物ってこのタマのことですか?」

げげげ、この家で一番恐ろしいタマが怒ってる???

お父さんよりも強い、お母さん。

お母さんよりも強い、お祖母ちゃん。

お祖母ちゃんよりも強い、お祖父ちゃん。

お祖父ちゃんよりも強い・・・タマ。

僕は一瞬、目を閉じて考えた。

もしかしたら、これは夢かもしれないし。

・・・そっと目を開けてみたけど、目の前にタマ。

「坊ちゃん、別に化け物と言われるのは初めてではないですからね、

旦那様にも榊坊ちゃんにも言われているのは知ってます。

そんなに怯えなくてもよろしい!!!」

え?知ってたの?

僕はホッとした。タマは何でも知っている。

やっぱり「化け物」だな。

「ところで化け物を観察ってどういうことだい?」

・・・僕は正直に言うべきか迷った。

だってタマに言ったら、観察の意味がない気がする。

「えっと・・・」

「・・・嘘を考えるんじゃないよ!?」

げげげ、やっぱり化け物は違う。完全に僕の考えを読んでいる。

タマは人の頭の中を読むことができるんだ・・・怖いな。

これ以上、化け物を怒らす?わけにはいかない。

僕は正直に打ち明けた。

本当はお父さんとお母さんの秘密を探っていること。

カンというスパイを探していること。

カンが化け物だということ・・・。

タマは僕の言うことを黙って聞いていたが、次第に変な顔になった。

なんで???

「坊ちゃん・・・あんた、司坊ちゃんの子だねぇ・・・」

少し呆れたような声。

「でも、まだ救いはあるね。あんたはまだ小学生だ、それも入学したばかり。

司坊ちゃんは高校生になっても日本語が全然ダメなバカだったけど、

高天坊ちゃんはまだ間に合う、このタマがしっかり教えましょうかね。」

タマはそういうと自分の部屋へ入っていった。

いったい何が言いたいんだろう。僕は全然わからなかった。

部屋から出てきたタマの手には一冊の本。

「ほら、これにカンについて載っているから、自分で調べなさい。

ひらがなは読めるんだろうね?」

ひどい侮辱だ!!僕は道明寺高天だよ? ひらがなくらい読めるよ!!!

タマに渡された本は「こども国語辞典」

なんでタマが「こども」国語辞典を持っているのかは謎だ。

もしかしたら、ドラえもんのようなポケットを持っていて

欲しいものは何でも簡単に手に入るのかもしれない。

「タマ=化け物=宇宙人」

僕の頭の中に宇宙人という言葉が浮かんだ。

でも、いくら僕でも宇宙人ではないのはわかる。

これは単純にそう思っただけ、タマはETとは姿かたちが似ていない。

だから・・・宇宙人じゃない。でも・・・しわくちゃな顔は似てるかも・・・

僕はタマに貰った本で調べてみることにした。

カン(缶)=金属の薄い板で作った容器。ブリキ製のものをいう。

カン(寒)=寒いこと。冬の寒さ。

カン(間)=物と物、場所と場所とを隔てる空間的な広がり。また、その距離。

カン(勘)= 物事の意味やよしあしを直感的に感じとり、判断する能力

・・・カンって奴はいっぱいいる。一人じゃなかった・・・

僕は呆然とした。そんなに何人もいるとは思ってもみなかった。

これは、作戦を立て直さないといけない。

僕は頭を抱えて、机に突っ伏した。

もう夏休みの宿題どころじゃない!!!!!

観察日記が全然、進まないじゃないか~!!!



FIN



国語辞典は「大辞林」を引用しました。

本当はもっとたくさんあるんだけどね~。


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●高天の観察日記 7●


カンは複数いる。僕にはどのカンが、お父さんの言っていたカンなのかわからない。

だけど、タマのおかげでわかったことは、この家にはカンという化け物が多数いるかもしれないということ。

だから、僕は決心した。今日から僕は探偵になろう!!本当に!!!

なんとしても僕の敵、カンを探し出し、やっつけなくてはならない。僕は今日から名探偵になることにした。

たまたま、滋おばさんが遊びに来ていたので、僕は相談してみた。

滋おばさんなら、探偵って何をするのかよく知っている気がしたんだ。僕の考えに間違いはなかった。

案の定、おばさんは知っていた。おばさんはこっそりと「探偵グッズ」をくれた。

以前、おばさんが使っていたものらしい。

コートに眼鏡、つけ鼻に帽子、そしてメモ帳。これで探偵になれるんだって。

僕は自分の部屋でそれに着替えてみた。

コートは長すぎて、まるでウエディングドレスとようで、裾が床に流れている。

眼鏡も大きすぎて鼻から落ちてしまう。つけ鼻をつけて眼鏡をかけてもまだ大きい。

その、つけ鼻じたいが大きすぎるのでくっつかない。帽子も大きすぎて目まで隠れてしまう。

僕にきちんと合うのは・・・メモ帳だけだ。でもこれが探偵の格好なら規則に従わなくっちゃ。

僕は歩きにくい、その格好で部屋をでた。辺りを見渡して誰もいないことを確認。

とにかく、家の中を調べてカンが潜んでいそうな場所を特定する。

・・・特定・・・なんだか格好いい言葉だな。なんか探偵っぽい言葉な気がする。

いやいや、僕は今日から探偵だった。それも名探偵だったんだ!!!

「お前・・・何してるの?」

突然の背後からの声。まさかカン!? 僕が勢いよく振り向くと、そこにいたのは・・・お兄ちゃん。

「お兄ちゃん?」

「ああ、って俺に決まってるだろ。で、お前は何をやっているわけ?」

どうしよう、お兄ちゃんに本当のことを言うべきだろうか。僕は悩みに悩んだ。

「高天くん? お兄ちゃんは何をしているのか聞いているんだけどな~」

お兄ちゃんがこんな言い方をするときは要注意だ。あの凶暴なお姉ちゃんよりもタチが悪い。

どうやら今日は機嫌が悪いみたい・・・これは本当のことを言わなくっちゃ。

僕は仕方なく、正直に一部始終を話した。お父さんとお母さんの秘密のことから、カンの捜索までを。

話し終えたとき、お兄ちゃんは大笑いしていた。・・・なんで?

「お、お前って・・・ホンットにバカだよな~。親父とお袋の秘密? ぷぷぷっ!!! 最高!!

カンが化け物って・・・ははははは!!! 笑いが止まらねぇ~。」

なんだかムカつく。なんでお兄ちゃんはこんなに大笑いしているんだろう。

僕から見れば廊下の真ん中で腹を抱えて笑っているお兄ちゃんのほうがバカだと思う。

「何がおかしいの?」

「だって・・・ははははは!! タマに辞典を貰ったんだろ? カンの正体がわからなかったのかよ!?

それに親父とお袋の秘密って・・・・ぷっ!!」

つまり、お兄ちゃんは秘密を知っているってことだよね。

「お父さんの秘密を知っているの?」

「・・・別に秘密じゃねぇもん。 ま、大人になればわかるさ。」

「お姉ちゃんも知ってるってこと?」

「知ってるだろ、たぶん」

「タマは?」

「タマは絶対に知ってるさ。知らないのはお前と楸くらいじゃないか?」

僕と楸だけ秘密・・・なんかひどい!!

「じゃあ、僕にも教えてよ! 僕はもう大きいよ、だってお兄ちゃんだもん。楸より大人だよ。」

・・・お兄ちゃんはちょっと考えていたけど、また笑いだした。

「いや、お前は今日から探偵だろ、自分で解決しろよ。それに観察日記はどうするんだよ。

宿題は自分の力でやらないとな~。ま、頑張れよ。でも・・・そうだな、ひとつだけ教えてやるよ。

カンってのは、別に化け物じゃないぞ。タマも俺もカンじゃないし、椛も楸もお袋もカンじゃない。

そもそもカンって・・・人間じゃないし。」

お兄ちゃんはそう言うと、笑いながらどこかに行ってしまった。僕は呆然としていた。

だって、お兄ちゃんの言っていることは訳がわからない。

化け物じゃないけど、人間じゃないんだよ? じゃあ、何!?

僕はしばらく考えて、ひとつの結論がでた。カンって・・・動物? 犬とか、猫とか・・・

また一からやり直しだな。

でも、ひとつだけわかったこともある。

この格好はすっごく目立つってこと。探偵には向かない気がする。


FIN






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