颯HAYATE★我儘のべる

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高天の観察日記 12~15




宇宙人はやっぱり存在するのだ。 そして宇宙人は大胆だ。

人間のような姿をして、テレビに出ている。そして自分たちの野望を隠すことなく言うんだ。

昨日も、あのコーヒー好きの宇宙人が映っていた。

完全に人間になりきって、温泉が好きとか色々なこの地球の好きなところを言っていた。

地球で好きなところがたくさんできている彼は自分の星に報告できるのかな?

本当に調査に来ているだけかな? 僕は侵略するために調査をしているんだと思うんだ。

でも、テレビの宇宙人は外国人っぽい変身だったけど、あれだけ完全に真似できるなら日本人にも化けると思う。

だからきっと僕の家にも一人くらい宇宙人がいるよ。

そして頭の中でお話をしているんだ。そして記憶操作をするんだよ。

僕の記憶がカンという宇宙人に奪われる前に・・・僕はヤツを捕まえようと思う。





きっとカンは昼間、普通に仕事をしていると思う。バレないように慎重に行動しているんだ。

だから動きだすのは夜。

―――僕は張り込むために荷造りをした。

「懐中電灯とお菓子、それに・・・クロスもいるよね、あとはニンニク?」

宇宙人と吸血鬼は違う存在だが、高天は完全に混同していた。

「ニンニクは見つからないから、クロスだけでいいか。クロス・・・お姉ちゃんの首輪!!
あれだ!!」

高天はとりあえず、リュックの中に懐中電灯とお菓子、それに水泳のときに使う耳栓を用意した。

「―――うん、何か変な呪文を唱えられたら、聞かないようにしないといけないもんね。」

―――宇宙人は呪術は使わない。―――つまり、魔法使いではありません。

高天の頭の中で宇宙人はどんな存在になっているのか・・・それは誰にもわからない。

「あ、あと忘れちゃいけないのは武器だ!! 何か武器になりそうなもの・・・」

部屋を見渡すと目についたのはバット。

宇宙人の攻撃から身を守り、こちらから攻撃できるもの。

道明寺家では小さい頃から色々な武術を習わせる。それに男女の区別はない。

誘拐などから身を守るために必要なことらしい。榊も椛も中学生にして合気道と空手の有段者だ。

高天はため息をついた。

僕はあまり武術を習うのが好きじゃない。だけどお父さんとお母さんの命令だから仕方ない。

―――ん?もしかしたら、これも宇宙人に操られて言っているのかもしれない。

お父さんは本当は武術なんてどうでもいいかもしれない。

う~ん・・・唸りながら考えていたが、当然、結論は出ない。

「これでいいか。」

高天はバットを手に取り、振ってみた。子供用なので案外軽い。

「うん、ま、これでいいか。これだけ持っていこう。」


そういうと高天はリュックとバットを持って部屋を出て行った。







高天が向かった先は父親の書斎だった。

宇宙人はきっとココに来ると思うんだ、だってお父さんを支配しているんだもん。

一番怪しまれない部屋はココだよね。

きっとこの部屋でお父さんの記憶を操作しているんだと思う。

だからここで張っていれば、カンはやってくると思う。

高天はリュックを書斎に隠し、部屋を出て行った。

夜、お母さんが部屋を見に来る、その時は部屋にいないといけない。

それにお姉ちゃんの首輪も取ってこなくっちゃ。

高天は拳を握りして、決意を新たにし、部屋へと戻った。

テレビをつけると、あの宇宙人がまた缶コーヒーを飲んでいた。

なんって呑気な宇宙人なんだ!!!!!


FIN




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■高天の観察日記 13■

高天は司の書斎に潜み、カンが現れるのを待っていた。

首には十字架、手には料理人から手に入れたニンニク。そして耳には耳栓。

「まだ・・・? 今、何時だろ。」

机の上を見れば、デジタル時計がPM9:38と表示し、暗闇の中で机の一部を照らし出している。

ここに来てからもうすぐ30分。カンどころか誰も来ない・・・。

「静かだな・・・なんだか怖いよ」

誰もいない書斎は、部屋を囲んだ本棚が襲ってくるかのようにそびえ、あまりにも静かで怖すぎる。

物音一つしない。―――カンは足音も立てずに歩くのかな?

高天は眠気と戦いながら必死で考えていた。

どうすればカンをやっつけられる?

この家のみんなを守れるのは自分しかいないんだと頑張っていた。

「ふあぁ・・・」

大きな欠伸がでてしまい、慌てて口を押さえて辺りを見渡した。

なんの変化もない・・・今日はカン、来ないのかな?

毎日、お父さんと会っているわけじゃないのかもしれない。

頭の中で交信してお父さんを好きな時に呼び出しているのかな?

高天は隠れていることに疲れ、ゆっくりと立ち上がり部屋を見渡した。

誰もいないことを再度確認して、司の椅子に座ってみる。

「うわぁ・・・ふかふかだ」

大きめの椅子はゆったりとしていて、高天を眠りへ誘う。

「お父さん、こんな椅子に座っているんだ・・・いいなあ、僕の椅子と交換してくれないかなぁ。」

そうつぶやくと完全に深い眠りへと落ちていった。




数時間後、道明寺邸は一気に騒がしくなった。

「つ、司・・・高天がいない!」

喉が渇いて夜中に目覚めたつくしが、それぞれの子供部屋をのぞくと高天だけがいない。

驚いたつくしは司を叩き起こし、屋敷中を探し回ることになった。

家の主が騒々しく動き回れば、住み込みの使用人たちも次第に目覚めるというもの。

その夜の道明寺邸は明々とライトが灯され、総出で高天の捜索がおこなわれることになった。

「つ、司・・・どうしよう。いったいどこに・・・?」

「アイツのことだから、それこそ水でも飲みに行って、どこかその辺で眠りこんでいるんじゃないか?」

(―――当たらずといえども遠からず。いや、当たっているかな?)

「高天坊ちゃ~ん!!」

使用人たちが声を張り上げて探せば、当然ほかの子供たちも目覚める。

「何事だよ・・・」「うるさくて眠れないじゃない!」

榊と椛が目を擦りながら起きてきた。

「高天が部屋にいないのよ~。9時に見たときは寝ていたのに、さっき見たらベッドはもぬけの殻。

トイレかとも思ったんだけどいないの。どこに行ったのか・・・」

「ああ? アイツももう小学生だろ、放っておいても大丈夫だろ。どうせ寝ぼけてその辺で寝てるんだよ。」

みんな考えることは同じらしい。

「―――高天って言えば、昼間、なんだか変な行動をとっていたよね」

「アイツはいつも変だろ」

「そうだな」

榊の突っ込みと司のあいづちを無視し、司は椛に問いただした。

「変って・・・いったいどんな様子だったの?」

「いや、お菓子とか用意して・・・」

椛の言葉を耳にした住み込みのシェフが思い出したように割り込んできた。

「そういえば、何に使うのかニンニクが欲しいと言われて・・・欠片ですが渡しましたね」

「「ニンニク??」」

司と榊が声を揃えて問いただす。似ていないようで似ているのかもしれない。

「お菓子にニンニク・・・なんだ、ソレ」

榊は訳がわからないというように頭をかしげた。高天を理解できる人間は少ないのだ。

「そういえば・・・アイツ、私のクロスのネックレスをどこかに持っていったのよね。

自分ではコッソリ持っていったつもりみたいだけど・・・バレバレなのよ。」

「おい、それって・・・」

「ねえ」

榊と椛は顔を見合わせて、大きくため息をついた。

「なんだよ!はっきり言え!」

司は訳がわからず、子供たちを怒鳴る始末。

「親父・・・高天が用意したものは十字架とニンニクだぞ。どう考えても吸血鬼退治だろ。」

「「・・・・・吸血鬼?」」

さすがに司もつくしも唖然としていた。今時、吸血鬼って・・・

「何か本でも読んだんじゃねぇの?そして屋敷に吸血鬼がいると思いこんでるとか・・・。

どっちにしろ、アイツが屋敷の敷地内から出るのは難しいんだから、部屋中を隅々まで探せばいるだろ?」

「まあ、それはそうなんだけどね・・・」

つくしが納得のいかない失踪理由に渋々頷く。すると後ろから大声で呼ぶ声がした。

「奥様、高天坊ちゃんいました!!」

探してくれていた使用人の一人が走ってくる。

「え、どこに・・・?」

「旦那様の書斎で眠っておられましたよ。」

「はああ??俺の書斎??」

司の眉間の皴はさらに深くなった。吸血鬼退治をするのに書斎では、それは疑問が増える一方だろう。

使用人たちと子供たちに休むように言い、司とつくしは書斎へ向かった。

当然、そこには椅子に座って眠る高天がいる―――。

耳栓をして、クロスを首にかけ、ニンニクを握り締めて眠る息子に二人は大きなため息をついた。

「耳栓はなんのためなんだろうね・・・」

「知るか。コイツはどうしてこんなにバカなんだ? 耳栓してりゃ、静かで熟睡できるよな・・・まったく!!」





「あれ?」

目覚めると高天は首を捻った。

「ここって僕の部屋だ。―――なんで!?」

僕は間違いなく、お父さんの書斎にいた。カンを退治するために張り込みをしていたはずだ。

それなのに、朝になると僕は自分の部屋のベッドにいる―――。

高天は真っ青になった。

まさか・・・カンはやっぱり超能力者でもあるんだっ!

これはテレビで見たテレポーテーション。瞬間移動ってヤツに違いない。

カンは僕がお父さんの書斎にいることに気がついていた。

そして・・・僕を超能力で眠らせ、部屋へと瞬間移動させたんだ!!!

なんって恐ろしいヤツなんだろう・・・。高天はカンの未知なる能力に怯えながら、それでも決意を新たにした。

僕が頑張らないと家族が犠牲になるんだ!! とっても怖いけど、カンをやっつけないといけない。

でも・・・作戦を練り直さないと。超能力を持っているってことは・・・どうしたらいいんだろう。

決意を新たにしたけれど・・・高天は途方に暮れていた。


FIN





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■高天の観察日記 14■


宇宙人であり、超能力者でもあるカン―――。

高天の中で『カン』という存在はどんどん異質なものになっていく。




「はあぁぁぁぁ・・・」

高天はベッドの上で大きなため息をついた。

カンはとてつもなく強大な敵だ、どうやって戦ったらいいんだろう。

このままじゃ、僕もお兄ちゃんたちも全員がカンにやられて、操られてしまう。

人形みたいに、カンが言うままに動いて・・・、どうしたらいいんだろう。

僕の力だけで家族を守れるのかな。いや、家族だけじゃない、タマも他のみんなだって、この家にいる全員を守らなくっちゃ。

僕はまだ6歳なのに・・・責任重大だ。それもこれもお父さんが頼りにならないからだ。

本当なら、お父さんの代わりにお兄ちゃんが僕たちを守らなくちゃいけないのに!!!

高天は考えているうちに榊に対する怒りがこみ上げ、枕を掴んでベッドに叩きつけた。

「お兄ちゃんの・・・ばぁぁ~かっ!!!!」

口から出る文句は所詮、子供である・・・。

一度、口から出てしまうと恐怖と戸惑いでドンドン溢れ、止まらなくなる。

「お父さんだって、簡単にカンにやられるな~!! 僕になんでも押し付けるな~!! お父さんってば、いつからカンに操られてるんだよぉ~・・・」

司を罵倒しながら、枕を叩いていると涙が溢れてくる。

高天は溢れる涙を拭うこともせずに、ただワンワンと泣いていた。

―――家族は司が何気なく言った言葉がここまで高天を悩ませているとは知らないのだから、救いの手を差し延べることもできない。

そもそも、こんなことで泣くほど悩んでいるなんて考えもしないだろう。




しばらく泣き続けたいたが、お腹がググゥ~となると我にかえった。

「あ、お腹すいた・・・」

朝起きたら、お父さんの書斎から自分の部屋にテレポートしていた驚きで、ずっと考え事をしていて朝ごはんを食べていない。

―――というか、ベッドから降りてもいないのだが。

今日は日曜日だし、ゆっくりとご飯を食べてから、カンを退治する計画を練ろう。

立ち直りは早かった。

司とつくしの子だけあった、子供じみだ癇癪は起こすが(子供だもん)、基本的に前向きで深く悩むことは殆どない、つまり楽天的?

高天独自の解決方法も持っているようだ。

―――誰かが、腹が減っては戦ができないって言っていたもんね、朝ご飯を食べよう!

高天はベッドから素早く降りて、部屋を飛び出した。




下ではすでに司、つくし、榊と椛が席についている。楸もベビーチェアに座って寝ている。

高天が駆け込んでくると、それぞれが疲れたような目線を送る。

高天はそれには気がつかず、自分の席に素早く座った。

「みんな、おはよう! 凄いね、今日はお父さんもいるんだぁ~。朝ご飯に全員が揃っているなんてドキドキするね。」

高天の無邪気な言葉に全員が盛大なため息をついた。

「お前のせいで昨夜は大変だったんだぞ?」

榊の言葉に高天は訳がわからず、首をかしげた。

「え、なんで?」

「なんでって・・・お前、昨夜はなんで親父の書斎になんていたんだよ!?全員が夜中にお前を探して駆けずり回ったんだぞ!」

え・・・!!僕を探した!? つまり、部屋を抜け出したことがバレたってことだよね、なぜバレたんだろう。

まさか・・・またカンが告げ口をしたのか? カンのやつぅ~!!!

カンはやっぱり僕を見張っているんだっ!!!

「で、何をしていたんだよ!?」

「――――探検?」

ここでハッキリと自分の考えていることを言えば、誤解も解け、カンの正体もわかるのだが・・・高天は咄嗟に嘘をついた。

もしかしたらカンはすでにお兄ちゃんも操っているのかもしれない・・・。

そう思うと、カンを探していることを言えなかった。

もしかしたら、この家でカンに操られていないのは僕だけかもしれない。

「―――自分の家を探検してどうするんだよ?」

「え・・・えっと・・・」

「それに、ニンニクと十字架ってお前、吸血鬼退治でもする気かよ」

吸血鬼? ニンニクと十字架が苦手なのは吸血鬼なの? 宇宙人には効かないのかな?

高天は榊の言葉に黙りこくってしまった。

僕は間違っていた・・・カンにニンニクと十字架は効かないんだっ!!

そうなると・・・カンの苦手なものってなんだろう。

「おい、高天?」

榊の呼ぶ声がしたが、高天は必死で考えていたので無視した。カンに操られているお兄ちゃんの言葉を聞いてはいけない・・・。

高天は榊を睨み、早くカンをやっつけなければと思った。

お母さんと椛や楸が犠牲になるまえに・・・いや、もしかして既に・・・?

そんなことはないっ!! 高天は不吉な考えを振り切って、運ばれてきた朝食を睨みつけた。

―――うん、スープはおいしい。だからシェフは操られていないと思う。


FIN




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■高天の観察日記 15■

カンはどこまでも人を・・・えっと翻弄?する―――

カンは吸血鬼じゃない。(宇宙人だから)

だからニンニクも十字架も効かない。僕としたことがとんでもない間違いをした。

宇宙人が苦手なものなんて・・・どの本を読んでも載っていない。

じゃあ、僕はどうすればみんなを守れるんだろう。

きっとお父さんはもうダメだ。完全にカンに操られていると思うんだ。

タマは・・・もしかしたら、タマ自身がカンかもしれないし。

たぶんなんだけど、お母さんとお兄ちゃん、お姉ちゃんはまだ大丈夫だと思う。

楸はきっと大丈夫。だって操っても何も役立たない赤ちゃんだから。

う~ん、カンは人の考えを読むし・・・あれっ!?

そうだよ、カンは人の考えが読めるんだったっ!!!

それなら、僕が今、こうして考えていることもカンにはわかっているんだ。

じゃ、どうやってもカンを退治することはできないじゃないか。

「うわぁぁぁっ!!! どうしようっ!!!」

僕はとんでもないことに気がついて、部屋で悶絶した。(・・・悶絶って何だろう?)

きっと僕が十字架やニンニクでカンを退治しようとしていたこともカンは知っているんだ。

だから都合よく僕を眠らせて・・・部屋に戻すことができたんだ。

そうか・・・超能力。宇宙人は超能力があるんだ、やっぱり。

テレビで見たことがある。超能力で何も使わずにスプーンを曲げたり、手を使わずに物を移動させたり。

とんでもないことをする人たちがいた。あの人たちもきっと宇宙人だったんだ・・・。

そうだ、お母さんと見たテレビで不思議な事件を宇宙人が犯人だと探していた人がいたじゃないか。

―――あの二人に連絡をとれば、もしかしたら全員救えるかもしれない。

そうだ! モリダーとスキリーなら・・・きっとカンを捕らえてくれる!!!

僕は素敵なことに気がついて、心が躍った。なぜ最初から気がつかなかったんだろう。

宇宙人と言えば、あの二人じゃないか。

「うん、あの二人にお願いしよう。」

僕は必死にテレビで見たことを思い出そうとした。

あの二人は外国の人だ、どこに連絡すればいいんだろう・・・。

「あっ!!!そうだ、FBIだっ!!!」

僕はあのスキリーが言っていたことを思い出した。

『FBI捜査官のダナ・スキリーです』

そう言って自己紹介していたぞ。っていうことは、彼女はFBI捜査官ってヤツなんだ。

だから、モリダーもFBI捜査官だよね。

だから・・・FBIってところに電話すればモリダーとスキリーがいるんだ。

「よぉぉしっ、FBIだ。FBIは・・・何番だろう。」

僕はしばらく考えていたが、突然ひらめいた。

「西田さんだ・・・西田さんに聞こうっ!! 西田さんなら、どんなところの電話番号も知っているもんね。」





『はい』

「あ、西田さん? 僕、高天です。」

『―――高天ぼっちゃん? いったい・・・』

「あのね、西田さんに聞きたいことがあるんだ。FBIの電話番号を教えて?」

『―――FBI?』

「そう、FBI。ちょっとお願いしたいことがあるんだ。急ぐんだよ。」

僕がそう言うと、西田さんの声が何も聞こえなくなった。

「西田さん?」

『―――高天坊ちゃん・・・FBIにどんなご用があるんでしょうか?』

「それは内緒だよ。教えられない、でも、とぉっても大事なことなんだよ。急がないと大変なことになるんだ。」

『―――坊ちゃんは英語を話せますか?』

英語? 何、それ。 それってお父さんが時々しゃべっている言葉だよね。

僕も教わっているけど・・・まだよくわからない。

「少しだけしゃべれるよ。」

『こんにちは、くらいじゃダメですよ。』

「―――そうなの? でも英語が話せないと何か悪いの?」

『―――FBIはアメリカにあります。アメリカの言語は英語です。英語が話せないと相手に何も伝わりません。』

えええっ!!! 外国ってことは知っていたけど、英語が話せないとダメなの?

いや、そんなはずはない。

「大丈夫だよ、僕が話したい人は日本語が話せるんだ。」

そうだよ、テレビでは日本語だったもん。あの二人は僕と話すことができる。

『―――そうなんですか? ですが、電話にでるのがそのお二人とは限りません。』

僕は返事に詰まった。確かにあの二人が電話に出るとは限らない。

どうすれば、あの二人を呼び出してもらえるだろう。

「―――大丈夫だよ、モリダー・プリーズ、スキリー・プリーズってずっと言うから。

きっとそれでわかってくれると思うんだ。あの二人は有名なんだよ。・・・きっと。」

『―――モリダーさんとスキリーさんに連絡を取りたいわけですね・・・』

あっ! しまったっ!!! 僕はつい二人の名前を言ってしまった。

でも話の内容はまだ言っていないから大丈夫・・・だよね?

「そうだよ・・・あの二人にお願いしたいことがあるんだ。それも大至急。

急がないと大変なことになるんだよ。だからFBIの電話を教えてよっ! お願いっ!!」

しばらく、電話の向こうからは何も聞こえなかった。

ちょっとだけ「お願いします」という西田さんの声が聞こえたかと思ったら、ため息をつく音がした。

『高天ぼっちゃん、聞こえますか?』

「聞こえてるよ! 早く教えてよ。」

急かすとまた西田さんはため息をついたんだ。なんでだよっ!?

『私もすぐにはわかりませんので・・・ちょっと調べたんですが、なんとかわかりました。

紙とペンはお持ちですね、言いますよ。』

もちろん、紙も鉛筆も用意済み。さっさと教えてほしい。道明寺家のこれからがかかっているんだから。

『では・・・・・』

「わかったっ!!・・・・だねっ。ありがとう!!早速かけてみる。」

僕は西田さんに教えてもらった電話番号を大事にたたみ、彼にお礼を言った。

そして電話を切ると、ほうっとため息をついた。

これでみんなを助けることができる。お父さんも手遅れじゃないといいな・・・。

僕は安心して、また受話器を手にとった。FBIのモリダー捜査官とスキリー捜査官に向けて・・・。

FIN



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