颯HAYATE★我儘のべる

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高天の苦悩



今日、とっても悲しいことを知った。

僕は、この家の子じゃなかったんだ。





★高天の苦悩★



今年から僕は小学一年生になった。もうお兄さんだ。

妹もできたし、学校に行き始めたんだからね。

今日の国語のお勉強は『名前を漢字で書いてみよう』だった。

僕は自分の名前を漢字で書ける。頭がいいから。

『道明寺高天』簡単、簡単。

勢いよく手を上げて先生を呼んだんだ。

「高天くん、よく書けましたね。じゃ、今度は難しいよ~。家族の名前が書けるかな?」

・・・僕は書けなかった。だって書きたくなったことがないもん。

僕の名前が書ければいいでしょ?なんで家族も書くの?

僕は悔しかったから、家に帰ったとたんにお母さんに教えてもらったんだ。

「お母さん、みんなの名前を漢字で書いて!!」

お母さんは優しく教えてくれたよ。

お父さんは『司(つかさ)』、お母さんは『つくし』、漢字は無いんだって。

お兄ちゃんは『榊(さかき)』、お姉ちゃんは『椛(もみじ)』、妹は『楸(ひさぎ)』

・・・あれ?

どうして僕だけ・・・ふたつなの?

お父さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも・・・ひさぎだってひとつなのに!

もしかしたら、僕だけこの家の子じゃないのかも。

だから僕だけふたつなんだ!そうなんだ!!

僕は涙がでそうになった。

お父さんが男は簡単に泣いたらいけないって言ったから

僕は必死でこらえたけど・・・やっぱり涙がでた。

「高天?どうしたの!?」

「わ~!!」

僕は大声で泣いて部屋に走った。一人になりたい。

僕は貰われっ子なんだ!この家の子じゃないんだ!!

お母さんが追いかけてきてドアをコンコンって叩いてるけど僕は鍵をかけた。

今、お母さんの顔をみたらもっと涙が止まらなくなっちゃうよ。

あの優しいお母さんが本当のお母さんじゃなかったなんて!

・・・じゃ、僕の本当のお母さんは誰なんだろう。本当のお父さんは?

本当のお兄ちゃんやお姉ちゃんもいるのかな?

もしかしたら本当のひさぎもいるかもしれない。

わ~、どうしよう。僕は知ってしまった。

明日もこの家にいてもいいのかな?

気がつかなかったふりをすればいいのかな。

でも、お母さんはきっと僕が知ったことを知ったよ。

明日になったらきっと『高天は本当の子じゃないから』って言われるんだ。



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「ねえ、司、高天の様子がおかしいのよね。今日、急に泣き出してさ」

「泣いた?なんで?」

「それがわからないから気になるんじゃない! だってあの子ってあんたが男は泣くもんじゃないなんて言ったから我慢するでしょ。

最初は我慢しようとしてたんだけど、よっぽどのことがあったのよ。

もう、大きな声で泣いてしまって・・・後は部屋に閉じこもって夕飯にも降りてこないの。」

「あ?あいつ飯くってないのか?持っていってやれよ」

「うん。もちろん。だけど部屋に鍵かけてるのよね。」

「あければいいだろ。鍵はもってるんだから。」

「だからさ、簡単に開けられるけど、しばらく一人にして落ち着かせようかなと思って。それより、あんたがどうしたのか聞いてきてよ」

「俺が?子供は子供同士で榊に聞かせてみろよ。」

司は気にならないのかネクタイを取りながら興味なさげに言った。

「あんたね・・・自分の子供が何かに傷ついてるのよ!もっと真剣に考えなさいよ!!」

「ああ?俺だって真剣に考えて榊に行かせろって言ってんだよ!子供同士の方がしゃべりやすいんじゃねぇのか?」

そういわれて見ればそうかもしれない。

つくしは榊を呼んで、高天の様子を見に行かせることにした。




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「高天、入るぞ」

ノックもなしにお兄ちゃんが入ってきた。

手にはこの部屋の鍵。勝手に入ってきたら鍵をかけた意味がないじゃないか!

「なに?」

悔しいけど涙声になってしまった。

「どうしたんだ?なんで泣いてる。俺に言ってみろ」

「・・・・」

「高天、泣いててもなんにもなんないぞ。兄ちゃんに言ってみろ」

お兄ちゃんはこの家の子でしょ!僕の気持ちなんてわかんないよ!

「お兄ちゃんには言いたくないんだもん」

「は?じゃ、椛になら言えるのか?親父には言えるか?」

「誰にも言わない」

「ああ!?わがまま言ってんじゃないぞ。ただ泣いてたってどうしようもないだろうが!」

「・・・わ~ん!!!!」

僕はどうしていいかわからなくなった。

わがままじゃないもん!僕だって泣きたくないのに。

「ぼ、僕、僕は捨て子だったんだ。」

お兄ちゃんも知らなかったのかもしれない。

だってびっくりしてるから。

「・・・お前、なに言ってるんだ?」

「僕はこの家の子じゃないの」

お兄ちゃんに言ったら、少し楽になった。

なんでかな。



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どこから家の子じゃないなんて考えがでてきたんだ?

榊は思いっきり頭をひねった。

鏡を見てみろよ!どうみても親子だろ~が!

お前の場合は髪まで天パでクルクルの超親父似だろ。

だいたい、お袋の遺伝子はどこにいったんだ?って思うくらいの激似っぷりだし。

「・・・なんで・・・そう思うんだ?」

「だ、だって兄ちゃんはひとつなのに、僕だけふたつなんだもん」

泣き止もうとはしているが、しゃくりあげながらしゃべっているので

ちょっと・・・聞きづらい

それにしても、俺はひとつで高天がふたつ。それなぁに?

ってなぞなぞか!?

「なにがひとつだって?」

「みんなひとつなの!お父さんも兄ちゃんも姉ちゃんもひさぎも!それなのに僕だけふたつなんだよ!」

ええ?みんながひとつで高天だけがふたつ・・・わからん!!!

「ぜんっぜん、わからんぞ。なにがふたつだって!?」

「な、名前」

名前って・・・お前は道明寺高天。それっきゃ名前はないぞ。

お前もひとつだけだ。芸能人じゃねぇんだから・・・

「先生が家族の名前を漢字で書いてみようって」

あ?漢字?

ああ~!!!本当だ。お袋はひらがなのみだから除外して

マジで高天だけ二文字だな。

え?ってたったそれだけで「この家の子じゃない」という結論がでたのか?

「お前は・・・確かに二文字だけど、間違いなく道明寺の家の子だぞ」

「じゃ、なんで僕だけふたつなの!?」

・・・知らん。親に聞けよ・・・

でも、そうだよな。神頼みで神にちなんだ名なら高天を楸って名にしてもいいのに・・・

「そんなの知らないが、お前は間違いなくお袋から生まれたぞ。」

「・・・なんでわかるの?」

「いや、俺の方がお前より年上だから・・・楸んときみたいにお袋の腹がでっかいのも見てたし」

「・・・僕だけふたつはなぜ?」

だから知らん!!あ~、もう、親父とお袋に聞け!!

俺は高天の手をつかむと、親父の書斎へと向かった。



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「親父、入るぞ」

部屋の中にはお袋もいた。

ちょっと顔が赤いお袋を見ると・・・なにをやっていたかは一目瞭然。

おいおい

「高天、もう大丈夫?」

「・・・」

「あのさ、高天のショックの原因がわかったけど」

そういうと視線を下げ、高天の顔を見た。

うなだれて、まだ少し涙がでているようだ。

「高天は自分がこの家の子じゃないって思ってるんだ」

これには親父もお袋も驚いたようだ。

そりゃそうだろうな。

「ど、どういうこと!?」




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僕は言いたくなかったけど、お兄ちゃんに言ったことを繰り返した。

だってお兄ちゃんがなぜか怖い顔をして僕をじっと見てるんだ。

いつもは僕がなにをしたってあんな怖い顔はしないのに。

「・・・漢字?」

お父さんの声がいつもと違う。怒ってるわけじゃないし、なんだろう。

「漢字が二文字だから・・・家の子じゃないって思ったっていうのか?」

「だって・・・みんなひとつだもん」

「・・・確かに一文字だな。今まで考えたことなかったが」

「そうね、わたしも意識したことなかったんだけど」

「俺も高天が言うまで考えたことなかったんだよね。でさ、親父たちから説明してくんない?どうして高天ってつけたのかさ。」

僕はドキドキした。

お母さんはなんて言うのかな?

僕は捨て子だったんだって言われたらどうしよう。

僕は貰ったんだって言われたらどうしよう。

お兄ちゃんだって子供だから、間違ってることってあるもん。

やっぱり僕はこの家の子じゃないかもしれない。



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「え・・・っと、別にみんな一文字にしようなんて思ってなかったんだけど・・・

あのね、高天。お父さんとお母さんはどの子もかわいいんだよ。

榊って名前は神さまの木からつけたの。椛は女の子だから可愛い名前でしょ。

椛って木を知ってるよね。秋になるととっても綺麗な色になるでしょ。

女の子だから綺麗になってほしいなって。楸はね、やっぱり神さまの木なの。

一番小さい子だからね、神さまに護ってもらおうっと思ってね。

高天・・・高天も実は神さまにちなんでつけた名なんだよ。

高天原(たかまがはら)ってところがあるの。そこはね、神さまが住んでいる場所なの。

とっても素敵なところなんだよ。だからどうしても生まれた子につけたかったの。

たまたま漢字がふたつになったけど、お母さんが大好きな名前なんだよ」

「・・・そうなの?」

「そうだよ。」

「僕が楸でもよかったんだけどな」

「そうだね、でも・・・楸って榊の代わりに使われる木なんだよ。

お兄ちゃんの代わりなんていやでしょ?

でも・・・楸は女の子だからね。お兄ちゃんの代わりでもきっと気にしないかなって思ったの」

「・・・うん、お兄ちゃんの代わりはやだ」

「高天。よ~く考えてごらん。榊も椛も楸もこの地上に植えてる木なんだよ。

でも高天はどうかな。高い天。空の上だよ。高いところになる広い広い空なんだよ。

まるでみんなを見下ろしてるみたいな名前でしょ。」

・・・ちょっと待て!!!!!!!!

黙って聞いていた榊は心の中で異論を唱えた。

おい、それじゃ俺たち3人の方が高天より下みたいじゃねぇか!

そんな慰め方ありか?

それに、そいつにそんなこと言ったら・・・図にのるだろ~が!

「・・・おにいちゃんたちを見下ろしてるの?僕の方が上?」

「そうだよ~」

・・・おいおいおい・・・

親父も黙って聞いてるんじゃねぇ!!

なんとか言いやがれ!

「そうなんだ!!」

高天は一気によみがえった・・・

気分が晴れたらしく、満面の笑みで俺を見る。

って、それでOKなのか?

この家の子じゃない!って話はどうなった?

「高天、お前は俺たちの大事な子だぞ。わかったら寝ろ。」

親父・・・ようするに俺たちが邪魔なんだな!?

俺は渋々ながら高天の手をとり、書斎をあとにした。

それにしても、こんな馬鹿げた説明で納得するコイツって・・・



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僕は貰われっ子じゃなかった。

それにきっとお父さんとお母さんが一番大好きな子は僕なんだ。

だってそうじゃないと一番いい名前つけないもんね。

高天・・・高い天。

僕が一番上なんだ!!!

お兄ちゃんより、お姉ちゃんより、ひさぎよりも。

一番偉いんだ~・・・

な~んだ。良かった。

思いっきり泣いてしまった。

もしかしたら、お兄ちゃんやお姉ちゃんがこの家の子じゃないのかもしれない。

「やった~!!!!」

僕はすっごく嬉しくって大きな声で叫んだ。

「僕は道明寺高天だ~」


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高天の叫びが聞こえる・・・

あいつ完璧になんか勘違いしてるよな・・・

確実に俺より上の人間だと思ってるよ。

人間に上下はないけど、あいつにあんな回答をするお袋もなぁ。

猛獣がもっと超我儘猛獣になっちまうだろ!




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「お兄ちゃん!僕にちょうだい!!」

「はあ?なんで?」

「僕、欲しいの」

「あ?これは俺のなんだよ!!」

高天が欲しがっているのは俺の・・・海パン。

なんでこんなものがほしいんだ?変態な弟・・・いやだ。

「お兄ちゃんは僕のいうこと聞かなくちゃ!!」

「ああ?なんでだよ!自分の海パンがあるだろうが!」

朝から海パンで喧嘩する15歳の俺と6歳の弟・・・

なんかすっげ~情けねぇぞ。

「僕が一番偉いんだぞ!!!!」

「・・・・・」

いつからだ?

唖然としているとお袋の鉄拳が飛んできた!

ガツン!!

脳天にゲンコツをくらった高天はその場にうずくまった。

「高天!あんた何いってるの!?いつから偉くなった!?」

「だって・・・お母さんが言ったモン。僕の名前は一番偉いって」

「「・・・・」」

ガキの勘違い・・・そんなことは一言も言ってねぇぞ。

「あのね・・・高天、偉いんじゃないの。あんたはいつでも榊の弟で年下なの。それは絶対に変えられないのよ。

だから、名前だけは榊より上にしたの。わかるかな?兄弟で平等にしたかったの。

永遠に弟だから、お兄ちゃんにはいろんなことで敵わないことばかりなの。

だから・・・名前は高天。地上にある榊の上にそびえる天にしたの。

偉いんじゃないの!!兄弟でどっちが偉いとかないのよ。どっちも同じなの」

・・・それで6歳児にわかるのか?

高天を見ると頭のうえに?マークがでている気がする。

明らかに理解していないだろう。

でも・・・お袋にゲンコツをくらって、偉いってことじゃないとはわかったようだ。

「お兄ちゃんの水着がなんでほしいの?」

「・・・お兄ちゃんになったからお兄ちゃんのをはくの」

???どういう理屈だ???

「ああ、楸ができて高天もお兄ちゃんになったから、お兄ちゃんの洋服を着るってわけ?」

ああ?わけわかんねぇ。

「あのね、高天。高天はなにを着ていても楸にとってはお兄ちゃんなのよ。

榊のものを着ていなくてもね。着ているものや持っているものでお兄ちゃんになるわけじゃないの」

つまり、お兄ちゃんになったらお兄ちゃんのものを着る・・・そう思ったってことか?

世の中にはお兄ちゃん用と弟用のものがあると思っていたとか?

バカな奴だ・・・

「じゃ、お兄ちゃんは僕がいるからお兄ちゃんなの?」

「・・・」

なぜ無言?そうだろ??

高天が生まれて初めて俺は「お兄ちゃん」という肩書きを手にいれたんじゃねぇの?

「榊は生まれて数分でお兄ちゃんなのよね」

あ?なんだそれ。

「なんで!」

「椛がいるから」

あ・・・そっか椛がいたな。あいつの兄であるなんて考えたことがなかった。

双子だし・・・そっか俺って椛より先に生まれたんだっけ。

「じゃ、僕もお兄ちゃんなのにお兄ちゃんのほうが偉いの?」

「いや・・・お兄ちゃんも偉くはないんだけど・・・」

はっきり言ってお袋もどう言っていいのかわからなくなっている。

高天の頭の中はハッキリ言って理解しがたいものがある。

そこへやってきたのはタマ。

「若奥様、タマが教えて差し上げますよ。」

杖をつきながら妖怪がやってくる・・・

「高天坊ちゃん、この家で一番偉いのは・・・」

そこでいったん言葉を切りながら俺とお袋の顔を見る。

そしてニヤリと笑い、言った答えは・・・

「司坊ちゃんです。つまり高天坊ちゃんのお父様ですな。

あの男が一番偉いんです。そういうことにしておきなさい。

そうじゃないとあの男がうるさいですからね。

だから、榊坊ちゃんも高天坊ちゃんも、この家ではお父様の下にいるんですよ。」

その言葉に俺は笑ってしまった。

お袋も笑っている。

「・・・お父さんは偉いの?」

「そうです、いつも自分で言っているでしょうが。俺は偉いって。

だから高天坊ちゃん、お父さんが一番偉いんだって思っていなさい」

なんだそれ。つまり本当は偉くないけど、そう思ってやれってことか?

タマ、最高!!

親父・・・バカにされてるぞ。

「先輩、それいいですね。そうです、あのバカは自分で偉いって言ってますね」

高天は納得がいかないような顔をしているが、俺もお袋も爆笑していてどうにもならない。

結局、何も解決していないのだが・・・

タマのおかげでムリヤリに解決。

高天の苦悩は・・・結局うやむや。

とりあえず、自分がこの家の子じゃないとはもう思っていないからいいか!!



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なんか、よくわからないけど・・・

一番偉い人はお父さんらしい。

まあ、どうでもいいや!!!

だって、僕は道明寺高天だったんだもん。

僕は楸のお兄ちゃんだったし、お母さんの子だったんだから。

あ~、心配して損した。

でも、お父さんって本当に偉いのかな?

僕は・・・この家で一番偉いのはお母さんだと思うんだけど・・・





fin



で、結局この話って何?

とにかく、やっと終わりです。

なんかよくわからんな・・・

でも司の子ならわけわからんでもOKか?










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