うたたねの店

うたたねの店

愛について考える本


 ディー・レディー著・江国香織訳 飛鳥新書 

今、旬の作家である江国香織さんの訳本である。江国さんのみずみずしく五感を刺激する文体が、私はとても惹かれてやまない。
本著を手にしたきっかけは、江国さんの訳本だったためである。最初の数ページを読んですぐに「これは良い本だろう」と感じた。その直感は正しかった。私は買ってからしばらく、どこに行くときもこの本を持ち歩いた。
猫の視点から書いた作品は、今までいくつかあり真新しいわけではない。しかし、まるで本当に猫の感覚ではないかと思うくらいに忠実に、丁寧に描かれている。
一匹の猫が一生を生きていくことの大変さ、せつなさ。とても上手にまとめられている。
飼い主を「私の人間」と呼び、自分のやりかたを飼い主にわからせ、自分好みの生活をする。実に猫らしい。ダルシーは飼い主をとても愛するあまり、後からきた猫に嫉妬をする。しばらくそっけなく接してしまう。飼い主とはずっと仲むつまじいわけではなく、疎遠にしている時期もある。しかし、飼い主が悲しそうなときはじっとそばにいてあげる。
ダルシーのように、真摯に人を愛することが出来れば本当にこれに勝るものはないと思う。愛することはとてもシンプルで、野生的なものであることを、改めて感じた。




© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: