お気に入り商品はコレで決まり!

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<WWWAトラコン・シリーズ2-2>


あたしは人に待たれるのが嫌いなので、ついつい早めに来てしまう傾向がある。先に待たれると主導権を握られる用で嫌なのだ。
「お待たせしました。こちらへどうぞ」
通されたのは、スタンダルフの執務室だった。簡単な応接セットも置いてある。護衛セットも置いてある。黒服のいかにも、って感じの護衛が二人スタンダルフの後ろに控えていた。
「今日はお忙しいところ突然のアポで申し訳ありませんでした」
「いやいや。WWWAのコンサルタントの方でしたらもちろん優先的にお会いしますよ。ささ、どうぞお掛け下さい」
勧められるままに座る。
スタンダルフは年齢五十五歳位。身長は180cm、結構太めだ。
「さて、どんなご用件ですかな?」
「カジノ必勝法ってありますか?」
あ、フェルのお馬鹿!
「これはまた難しい質問ですなぁ」
「やっぱりないですか?」
「必勝法というのはありません。あってもそれは人それぞれでしょうな。負けない術ならありますがね」
「そうですか」
「で本題は何でしょう?まさかいまのを聞きにわざわざ来られたのではありますまい」
「はい」
あたしが言った。
「スタンダルフさんはベイヤーという人物をご存じですか?」
「ベイヤー、ですか?」
「ええ」
スタンダルフはちょっと考える仕草をしてからこう言った。
「さあ、ちょっと記憶にはありませんなぁ」
「そうですか」
「そのベイヤーとかいう方が何かわたしに関係があるんですか?」
この狸おやじが!
「いいえ。御存じないのでしたら結構です」
「はあ」
「ところで、スタンダルフさんはこのラメールでは監察官よりも絶大な権力をお持ちと伺いました」
「それは誇張でしょう。確かにわたしはこの星の主要な産業である遊戯施設の各種団体を取りまとめてはいますが、単なる世話役に過ぎません。地球連邦はら任命された監察官とは比べるのもおこがましいですな」
「そうですか」
「そうですよ」
ううう・・・きっかけが掴めないよぉ・・・。
「でもこのラメールはカジノの星、そしてそのカジノの総元締めでいらっしゃるスタンダルフさんはこの星の帝王でいらっしゃるんじゃありませんこと?」
「貴女は何をお望みなのですかな?」
「ベイヤー事件の真相を知りたいの」
「残念ながらベイヤーという人物を知りませんし、その事故についてお話しするような情報は何もありません。」
引っ掛かったわね。
「そうですか」
「そうですよ」
「それは残念ですわ」
「私の方こそ協力出来なくて残念です」
「ではもし何か分かりましたらこちらにご連絡をお願いします」
そう言ってメモを渡した。
「わかりました。でも期待しないで下さい」
「はい。では今日のところはこれで失礼します」

「ただいまー」
「おかえりー」
「一応収穫ありだよ」
「だね」
「スタンダルフはベイヤーの事件を知ってたのよ」
「そうだね。語るに落ちる、を地でいってたもんね」
「で、次はどうしようかな?」
「やっぱアラベル監察官でしょ」
「だよね。で、当然アポ取ってくれてるんでしょ?」
あたしは当然の事の様にフェルに聞いた。
「いあー、それが取れてないんだわ」
「なんでよ?」
「それが先約があるんだって、それも終日」
「終日だってぇ?」
「そ」
なんて間が悪いんだろう。幸先が悪いったらありゃしないわ。
「仕方ないわね・・・警察にいきましょう」
「了解っ!」
・・・
警察署はトパーズシティのダウンタウンにあった。警察署という割りには洒落た建物だ。
受付に行く。
「どなたかとお約束ですか?」
約束なんてないけど、この際どうでも良い。
「ヘンダール警部をお願いします」
まずは知り合いからだ。
程無くしてヘンダール警部がやって来た。
「やあ、どうされましたか?」
「中間報告です」

応接室に通された。
「で、どうですか、調査の具合は?」
「スタンダルフ理事長に会ったわ」
とフェルが言った。
「良く会えましたね。ここ暫くスタンダルフは公の席には顔を出していないんですが・・・」
ん・・・あたしは何か嫌な感じがした。
「そうなんですか?スタンダルフはベイヤー事件について質問したのに、そんな『事故』は知らないと言いました。地元の新聞とかニュースではどういう報道をしたんですか
?」
「変死として報道されている筈です」
「じゃあスタンダルフが『事故』と言ったとしても語るに落ちた訳じゃないわね」
「でも事故の線での報道はなかったと思いますよ。事件の少ないラメールですからむしろ他殺として各メディア共に報道していたと思います」
「やっぱり怪しいかな。スタンダルフの写真はありますか?」
「ええ、持って来ましょう」
と言ってヘンダール警部が出て行った。
「どうしたの?」
とはフェル。
「いや、公の席には顔を出していないってのが引っ掛かるのよね」
ヘンダール警部が戻って来た。
「これがスタンダルフの顔写真です」
「やっぱ本人じゃん」
とフェル。
「身体的特徴は?」
とあたし。
「身長170センチでやや細身ですかね」
「イスラ、偽者って事?」
「あたし達の会ったスタンダルフは年齢五十五歳位で身長は180センチの結構太めなおじさんだったわ!別人かも知れないわね」
と思わずあたしが言った。
「食道楽してただけなんじゃないのかな~」
とはフェルだ。
「いくら食べても身長は伸びないわよ」
「やっぱり」
(リーン・・・リーン)
電話だ。ヘンダール警部が出た。
「大変です!ホテル・アルタネラ・ラメールで火災が発生したそうです。お泊まりのホテルじゃありませんでしたか?」
「そうです!」
「荷物がぁ・・・」
「とにかく現地に行きましょう。お送りしますよ。」
「助かります」
・・・
ホテルの火災は39階が火元らしく40階より上が酷く燃えている。
あたし達の部屋は35階だから微妙なところだ。
「あたし等を狙ったんじゃなさそうだね」
フェルが言った。
「そうね。荷物無事だといいけど。お気に入りの洋服を持ってきてるのよ」
と気が気でないあたし。
・・・
結局35階は無事だった。
火災原因はどうも放火らしいとの事だった。
「39階の宿泊客を狙ったのかしら?」
「そうなんじゃない」
と気の無い返事のフェル。
「誰が泊まってたのかしら」
「調べますか?」
「お願いしていいですか?」
「お安い御用ですよ」
・・・
ホテルの35階は無事だという事で部屋に戻る事が出来た。
(トルルル・・・トルルル)
携帯電話だからヘンダール警部からだった。
「宿泊客がわかりました」
「誰だったんですか」
「何と39階にアラベル監察官と40階にWWWAのトラコンらしいのが2名が宿泊していたそうです」
「WWWAのトラコン2名だってぇ?」
フェルが素っ頓狂な声を出した。
確かに一体誰だろう。
それにこの惑星ラメールにトラコンが二組も来るような事件が起こっているのだろうか?
「ヘンダール警部、そのトラコンの名前はわかりますか?」
「いや、そこまでは判っていません。カジノの喧嘩でそう名乗ったと言うだけですから、裏は取ってないんです」
「何か他に事件があるんですか?」
「さあ・・・事件らしい事件と言えばベイヤー事件位のもので、他にはカジノでの喧嘩位しかないですね」
「アラベル監察官の安否は?」
「それは無事だと確認出来ています」
「そうですか・・・ありがとうございました」
電話を切った。
イヤーな予感がした。
「フェル。宇宙港に行くわよ」
「なんでよ?」
「トラコンの正体を確かめるの!」
あたし達トラコンにはWWWAから専用の宇宙船が支給されている。あたし達の専用船はサウンドスターだ。
だから宇宙港に行って宇宙船を見ればトラコンが誰か判るのだ。
・・・
果たして宇宙港にあったのはラブリーエンゼルだった・・・。
「ラブリーエンゼル」
フェルが絶句した。
「またしてもダーティペアか・・・」
あたしも目の前が真っ暗になった。
「またおんなじヤマ追ってるのかな?」
フェルがうんざりしたように言う。
「本部に確認しよっか?」
「そうしよ」
果たして依頼人は違ったがおんなじヤマだった。
「どうしてなんですか?」
さすがのあたしも声が荒くなった。
「本部中央コンピュータの判断だ」
「いくら依頼人が違うとは言え、おんなじ事件に二組もトラコンを派遣して不経済じゃないですか?」
「本部中央コンピュータの判断だ」
「しかも片方はダーティペアだなんて・・・」
「本部中央コンピュータの判断だ」
「ダーティペアが先に事件を解決したらあたし達の報酬はどうなるんですかっ?」
「君達の捜査の進展次第だ。本部中央コンピュータが判断する」
「んもう!わかりましたっ!」
(ガチャン)
通信を叩き切った。
ダーティペアの方はアラベル監察官と行動を共にしているらしい。
アラベル監察官とのアポが取れなかった筈だ。
あたし達への依頼は死体の身元を洗う事と捜査打ち切りの圧力を掛けた人物を洗う事だ。
前者は目下五里霧中だが、後者はスタンダルフでほぼ決まりだろう。
ただし、本人でない疑いが出てきたのが気掛かりだが・・・。
「どうすんの、イスラ?もう夜になっちゃったよ。」
「もう一度全遊振ビルに行ってスタンダルフに当たるかな」
「そだね~」
「じゃあ善は急げで、行きますか?」
「はいな」
(トルルル・・・トルルル)
携帯電話だからヘンダール警部からだ。
「はい、イスラですが・・・」
「全遊振ビルで一悶着があったようです」
あっちゃー、先越されたか。
「状況は?」
「はっきりした事は判りません」
「わかったわ。ありがとう」
電話を切った。
「フェル、行くわよ」
「どこに?」
「もち、全遊振ビルよ」
全遊振ビルは外見上は問題がなかった。
「二台のエアカーが市内を暴走中だ」
ヘンダール警部だ。
「ダーティペアかな?」
フェルが聞く。
「ま、そうでしょ」
「どうすんの?」
「どうしようもない。様子見ね」
「ヘンダール警部、エアカーに乗ってる女性二人組の行方を追って下さい。それとアラベル監察官の所在を確認して下さい」
「わかったが、君達は?」
「アラベル監察官に接触したいんです」
「わかった。じゃまた」
「はい。よろしく」
これで良し。
「どうすんの?」
とフェル。
「アラベル監察官かダーティペアに会いましょう。きっと何か情報を持っている筈だわ」
「じゃあ今はただ待ってるだけぇ?」
「仕方ないでしょ。それとも何かいい考えがあるの?」
「ない」
「がくっ」
期待してなかったけど。
しっかしただ待つのは辛いな。
(トルルル・・・トルルル)
ヘンダール警部だ!
「どうしました?」
「アラベル監察官がつかまりました」
「ナイス」
「で、貴女達の事を話したら是非とも協力したい、と」
「どこに行けばいいんですか?」
「こちらから伺いますので暫くお待ち下さい」
「わかりました」
「じゃあ後程」
「はい」
やったぁ!
・・・
<続く>


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