おいしくありたい! あたふたカナダ生活記

おいしくありたい! あたふたカナダ生活記

一家離散、離婚危機


私としては、カナダでちゃんと籍もいれたんだから、家族移民として彼に移民申請を進めようと思っていた矢先のことだった。家族移民として国内から申請すれば待っている間、就労ビザも出るし、学生ビザだって出る。
しかし、彼は「今更。。。これ以上、ここでどうすればいいんだ?」と。その気持ち、よく分かるけど、私としてははじめての子育てで、不安でいっぱいだし、できればなれるまでは一緒にいてもらいたかった。あんな鬼のようなことを言われても頼れるのは彼しかいなかった。
日本から来ていた母も、日本に残してきた父の具合があまりよくなかったので、予定より1週間早く日本に帰ってしまっていた。

彼が韓国に帰る前々日、かの大喧嘩が勃発。そしてまたあの言葉「お前は最低な母親だ。こんな母親に育てられるより、僕のお母さんに育ててもらったほうがこの子も幸せだ!」その言葉に切れた私は子供を抱えて家を出て、さまよう。結局、近所の友人の家に保護された。
それでも、帰国当日は空港まで送っていった。「送るときは笑顔で送ってあげよう。でも、もうそれっきり」と心に決めていた。もう彼に期待するものは何もなかった。
残された私は本当に心細かった。息子は生まれて一ヶ月。私は慣れない子育てで不安でたまらない。周りには子育て中の友人はいなかったし、子育て経験者の友人はみんな仕事を持っていて忙しかったから、頼ってしまったら迷惑だと思っていた。

彼が韓国に帰って数日後、電話があった。彼は「一時面接と筆記試験、通ったんだ」と喜んでいる。私は「あっそ。」と一言いっただけ。彼は「どうしたんだ?なにかあったのか?」と聞いてくるけど、神経がぴりぴりしている私は「あなたは何も感じないわけ?」と言うと「家族のためにしていること」と一蹴されてしまった。ついでに聞いた「もし、それで仕事が決まったらどうするの?」彼は「一応、一度 カナダに行って、子供を韓国に連れてくる手続きをする。じゅりぃはその後、来られる状態になってから来ればいい」と言った。
一日中、考えていた。どうするか。。。私が行きたくないと言ったら、またあの胸をえぐられるような言葉が待っている。自分の存在を否定されるようなことを言われるのは目に見えている。だからといって、韓国で幸せに暮らせるかといえば、それはあり得ないという確信がある。
心が決まった。

彼の家に電話した。彼に「お願いだから私と別れて欲しい」と言った。彼はものすごく驚いていたようだった。寝耳に水だったみたい。理由を聞かれた。「もうあんな思いをするのはいや。韓国へ行く、行かないの話し合いも、話し合いにならないし、その度にあなたの言葉に傷つけられる。あなたといる限り私の心は死んでしまう」
いつもなら、こういう話になると息を荒立てて交戦してくる彼も珍しく、穏やかな口調で「もう一度、よく考えてみて。子供もいるんだし」と言うだけだった。

彼がいない間、私はどのように生活をしていたか。
カナダのアパートには各部屋に洗濯機を置くスペースはなくて、一般的にはアパートの地下などに大きなランドリールームがある。
いくら子供が寝ていても、子供を部屋においてエレベーターに乗ってランドリーを何度も往復するのは、新米母にはできなかった。
洗濯は近所の友達の家に子供を連れて行ってさせてもらった。
食料品の買出しも友人宅に子供を置いて、子供を見ててもらっている間に買出し。車のガソリンもその方法だった。
本当に、友人たちにはお世話になった。
普段は完全に「引きこもり」生活だった。外は寒いし、子供を持つ友人もいなかったし。。。

年の瀬も押し迫る12月27日、彼から電話があった。
「じゅりぃにとってはグッドニュースだよ。」なに?
「二次面接、ダメだった。僕がやりたい職種と会社が欲しい職種があわなくて、今回は見送りって言われた。年明けて、航空券が買えたら、すぐカナダに行く。永住権申請に必要な書類は全部そろえて持っていくから。もう何も心配しなくていいから」
結婚して初めてかけられた優しい言葉。やり直せるかなぁ。。。とちょっと未来が見えてきた。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: