ある夫婦の始まりから終わりまで・・          (ノンフィクション)

ある夫婦の始まりから終わりまで・・          (ノンフィクション)

陣痛

N県から実家に帰った翌日、地元の総合病院に入院した。

既に、妊娠7ヶ月目に入っていた為、薬で陣痛をおこしての中絶だ。

入院するとすぐに、子宮口を広げる為の器具を入れられる。

これがまた、入れるのに痛く、更に入れている間中も痛いという厄介なもの。

事が終わると、私はベッドに戻った。

部屋は4人位の大部屋で、子宮外妊娠と思われる若い女性が1人と、子宮筋腫の

手術で入院している年配の女性が2人。

この部屋は、注意が必要な患者が入院する部屋らしく、ナースステーションの目の前だった。


産婦人科病棟というのは時に残酷だ。


あちこちから聞こえてくる赤ん坊の声。

その声を聞いていると、とても悲しくなり、

ベッドにもぐり、周りに聞こえないように声を押し殺して泣いた。

何でこんな事になってしまったんだろう?。何で私だけ?

そんな想いが頭から離れない。


翌日、午前中から陣痛促進剤が投与される。

陣痛も始まったのだが、まだ子宮口の大きさが十分で無いと言う。

3回目位の経膣薬投与の時、「これで駄目だったら明日にしましょう。」と、言われた。

こんなに苦しいのに・・・。

赤ちゃんだってきっと、まだ出たくないんだよ!。

また悲しくなった。

しかし、その時は急にやってくる。

担当医も帰り支度を始めた頃(だと思う)、子宮口が開き、分娩台へと上げられる。

助産婦によって担当医は呼び戻される。

そして、これはとても屈辱的な事だったのだが、何故か分娩室に見知らぬ医師が2人。

そう滅多にある症例では無い為、勉強か何かだったのだろう。

私に対して何かをする訳では無く、ただ居るだけの2人に腹立ちを感じる。

分娩台に上がってどれ位だったろう。

そんなに長い時間では無かったと思う。

私は目を固くつぶり、自分の子を見る事をしなかった。

多分、見ていたら一生のトラウマになっていたかもしれない。

看護師から電話を受けた両親が病院へやってくるが、私は会う事を拒否した。

何故か、誰にも会いたくない気持ちだった。

翌日、私の精神面を気にしてくれた病院側によって、個室に移される事になる。



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