翌日、私と森岡は何事もなかったかのようにモンマルトルを歩き、似顔絵描きの画学生をひやかしたり、クレープの食べ歩きをしたり、私設の小さな美術館に入ったりした。私は何となく、どうって事なかったような顔をしている方が大人って感じだわ、と考え、また、この期に及んでまだ森岡の関心を惹きたいと思い、そうしていたが、たぶん森岡は本当に別に大した事ではないと思っていた、いや、そんな風にも考えてもいなかったのだろう。一日私の大好きなモンマルトルで遊び、ホテルに帰り二人でめかしこんで、最後の晩餐だからと張り込んだ「ロヴュション」に向かった。素晴しい料理とサービス。私はもうすっかり昨日の事など忘れていた。上等なシャンパンと料理に酔って、帰りの車の中で「オー・シャンゼリゼ」を口ずさむ私に、森岡はまた信じられない事を告げたのだった。
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