N空港の到着ロビーから、私は公衆電話で、研修も終わって自宅にいるはずの大石に電話をした。「すぐ来て、お願い」と言う私に「どうしたんだよ」と言いながらも、大石は家の車で空港まで来てくれた。大石の顔を見た途端、私は大石に抱きついてわんわん泣いていた。周囲には遠距離恋愛の恋人同志にでも見えた事だろう。正直に言えばその時、私は森岡とのパリ旅行の事などもう何とも思っていなかった。ただ大石に会いたいだけだった。多分パリに出かける前から私は大石に会いたかったのだ。大石は私の頭を撫でながら「どうした?パリで森岡先生と喧嘩でもしたのかい?」と聞いてきた。「ううん、もういいの。さーくんの顔見たらもうどうでもよくなっちゃった」と答えながら私は、やっぱり私には大石しかいない、と、何回目になるかわからない決意をしていた。

