しーくれっとらば~’S

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SERENADE 圭&悠季

 SERENADE



~THE 1st~ side KEI & YUUKI


....ベルト第7未完成交響曲を振ってきます。
      音合わせにも、あちらの会場のキャパに慣れるためにも
      少し期間が必要でしょうから、今週は帰宅が遅くなるでしょう。
      悠季も...来るべきソリスト公演の練習は程ほどに。
      僕の帰りを待つなどと言うことは気遣い無用です。

      .....そんなことをされたら僕の自制心が吹っ飛び
      ただでさえ少ないお互いの睡眠時間を
      大幅に削る事になりかねませんよ。
      いいですね。悠季。
      お互い次のオフまで英気を養う事に専念するのです。

      こうやってすれ違いの生活が続くのは
      僕にとっていささか不本意ではありますが...。
      しかし僕は....!
      まどろみに落ちる少しの間に
      悠季を想って熱さを滾らせる自分の身体を抱きしめましょう。

      瞳の裏に浮かぶ君を見つめて、
      次の逢瀬に弾む心を撫でてやりましょう。

      唯一無二の存在である君を
      こんなに潔く求めて、我慢している自分にごほうびを約束しましょう!

      次に君と体温を分かち合える時、
      僕のこの想いを、思いつく限りの甘い言葉と
      君の好むアレグレットでアパッショナートな動きに込めて
      悠季に伝えよう。

      「声を殺して喘ぐ、甘やかな君」というごほうびに
      ありつくために....。

      おやすみ。悠季。愛していますよ。



       圭・・・君はなんていつも情熱的なんだい?
      それに僕の心を読まれてしまっている様で怖いよ。
      ・・・少しでも君の顔を見、声を聞きたいから
      起きて待っていようと思っていたのに・・・。

      僕は守村悠季(もりむら ゆうき)。
      富士見二丁目交響楽団(通称フジミ)の
      コンサートマスターをしていた。
      最近、イタリアからの留学(バイオリンの修行)
      から帰って来たバイオリニスト。
      フジミでは・・
      正しくは「退団」をさせられたので今はコンマスではないけれど
      「名誉団員」なんて恥かしい称号を頂き、
      日本へ帰って来た今は時間が合うと練習にも顔を出している。
      彼、圭もまたフジミの指揮者でもあるので、
      フジミへは時間の許す限り練習に出る事にしている。

      イタリアでの僕の師匠、マエストロ・エミリオから
      「もうモリムラくんには教える事はない」と言われ、
      僕は破門なんだと半ば落ち込み・・・。
      けれどそれは僕の勘違いでマエストロが僕をひとり立ちできる
      (ソリストとして)と認めてくれ
      圭、・・・僕の恋人の桐ノ院 圭(とうのいん けい)を
      迎えに寄越したのだ。

      圭はM響(MHK交響楽団)の専任指揮者で。
      歳は僕より半年だけ年下。
      天才肌のいや、本当に「天才」な指揮者なのだ。
      僕たちは僕の両親の墓前で二人だけで結婚式を挙げた
      言わば『夫婦』なのである。

      けれど日本に戻っては来たが、
      お互いの仕事やらなんやらですれ違いの生活を余儀なくされて
      こうして交換日記などをして
      お互いの行動や淋しさや心の内を記しておく事にした。

      交換日記なんて女子高生みたいだけど、
      何もしないでお互いの心のすれ違いから余計な心配事を
      増やさなくても済むように僕が言い出した訳で。
      書いていくとやはり気恥ずかしいし、
      圭の書いた物を読むと彼への想いが強くなり
      彼の身体の熱さを思い出してしまう自分もいる訳で・・・。

      圭、君は罪な人だね。僕をこんな気持ちにさせるなんて・・・。
      今日、君はM響でのリハ。僕は昼間、家で練習。

      そして夜、僕は打ち合わせで外出する。
      なので本当にすれ違いな訳で。

      夕飯の支度を終え、出かける前にこの日記を読んでいる。
      本当は目が覚めて一番に読みたいのだけれど、
      書くときに読んだ方がより上手く
      ・・・うーん、違うなぁ、君に対して素直な気持ちで、
      そう!素直な気持ちで書ける様な気がするからで。

      さて、書くかな・・・。


  ***************************

 圭へ。

      お帰り。今日の練習はどうだった?
      まぁ、君の事だから上手く行ったに決っているだろうけどね。

      えっと。
      夕飯、どうしたかな?まだだったら冷蔵庫に
      君の好きな肉じゃがが入っているので
      レンジでチンしてからどうぞ。
      それとご飯はジャーに、お味噌汁も温めてからどうぞ。
      君は早く食べたいと温めずに食べそうだからね。
      ダメだよ、ちゃんと温めてからじゃないと。

      えっ・・・と
      僕も君と同じ気持ちでいるよ。
      いつだって君に触れていたい。
      君の耳障りのいい声を聞いていたい。
      君の熱い吐息を、身体を感じていたい。
      けれどそれは今の僕たちにはなかなか難しい事であって・・・。

      まだまだ書き足りないのだけれど、そろそろ時間なので行きます。
      君も「譜読み」と称して僕の事を待っていなくていいからね。
      コンサートがもうすぐだろ?
      もう既に楽曲の譜面は君の身体に沁み込んでいるのだろうから。

      じゃあ、行ってきます。
      「行ってきます」と「お帰り」のキスがないのが淋しいけれど
      今は我慢しておくね。

      この世の誰よりも愛してる僕の圭へ。 

                                悠季。


  ******************************

      さてと、本当に出かけないと遅刻してしまうな。
      今はここにいない圭に向けて僕は“行ってきます”と呟いた。


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