しーくれっとらば~’S

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SERENADE 第8話 圭



SERENADE


~THE 8th~ side KEI TOUNOIN



....まだ、胸が躍っている。
今日1日のいろいろな精神の躍動が、
一時に今、この胸を躍らせているようだ。
全てを燃やし尽くして終える今日この日を
僕は一生忘れないだろう....。

君のまだほの紅い寝顔と共に....。


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悠季。

まずは、「お疲れ様でした」というべきでしょうね。
僕たちの当面の課題であった「富士見二丁目交響楽団 定期演奏会」が
無事、大成功を収めたのですから。
まあ、それについては先ほどまでフジミの諸君と酒を酌み交わし
君と二人で成功の喜びを全身で交わしていたわけですが...。
興奮の内の言葉では伝わりきれなかったであろう僕の心境を
綴っておく事にします。


君の日記を見て...背筋に冷たい汗が流れるのを感じました。
『けど、心のどこかで僕以外の所を見ていたんじゃないかってね。』
僕は...どこかを見ていたんじゃない。
君の...背中をあらゆる想いと共に見つめていたのです。

あのソリスト公演での「アメイジング・グレイス」
そのまま天に召されていくかのように崇高な気配をまとった君と
それを後押しするような高嶺の柔らかな伴奏。
そして、君が全身全霊をかけて会得した「G線上のアリア」の調べ。
-----手の震えが止まらなかった。
その場に僕という存在が無いのにミューズに召されていく君の
透明な音を聞いて、僕は
早晩必ず、音楽家として君に頭を垂れる日が来る...と。
恐れにも似た『嫉妬』を感じていたのです。


しかし、富士見での練習を重ね、その困惑は
浅はかな迷いだったと確信しました。
僕という存在に確かに花開く君がいる。
僕のタクトに共鳴して、高らかな清音を響き渡らせ
しかもビオラやコントラバスやフルートまでも音の高みに連れて行く
君を見て。

お互いに切磋琢磨しながら「神の音」を目指すライバルが
生涯を共に誓った相手である事に
運命論者ではない僕もその現実に感謝する気持ちになりました。

そして、その花は演奏会でもっと大きく開花した!
僕のタクトが繰り広げる世界を
君のバイオリンがいち早く彩色し、
富士見の諸君がその色に惹かれるように光を放つ。
それぞれの奏でる音たちが僕の世界を天然色のまばゆい世界に
届けてくれました。

君と僕との才能を重ね合わせる事で
音が艶を増すのを、僕はあるエクスタシーを感じるような
興奮で見届けました。

君の才能に嫉妬さえ覚える事が僕を引き伸ばしてゆく。
その才能は僕によってますます深みを増していく。
現状に満足する事の無い二人が心を重ね合わせていけば
もっともっとミューズは傍で微笑んでくれるはずです。

演奏を遂げたあとの君の汗は光り輝いていました!
指揮台を駆け下りて今すぐ抱きしめたい!
そんな気持ちを抑えるのにどれだけ苦労したか。
あのわれんばかりの拍手は僕の鼓動と共鳴していました。

ああ、悠季。
『打ち上げ』と称する喧騒を自制心で乗り越えて
二人の家に辿り着いた瞬間、
僕はもう絶えられなかった。
伊沢兄の肖像画が無言でそこで見つめていようと
溢れる感謝と喜びを込めて
靴も脱がないまま僕は君を抱きしめ熱い口づけを貪ったのです。

君も...待ちかねていたように
両手を伸ばし、答えてくれましたね。
湧き上がる感情の波に身体を預けて
僕たちはそこで繋がった-----。
ジェル無しのインサートも気にならないほど
熱く滾ったそこは僕を固く受け入れて、
僕は、理性のかけらを手放しました。

君の誰にもはばかる事の無い喘ぎを
全身で受け止めて、僕の雄根が憤る。
この男は、僕のものであり
この僕の救世主に自身を突き立てる幸せをその動きに込めて!
どこまでも貪欲に僕を求めて自ら動く悠季の腰に
迸るものをこらえる事は出来ませんでした。
熱くうごめく内部が僕の放ったものを包み込む感触を
至福の思いで味わって....。

荒い呼吸のまま、部屋に入って僕たちは-----。
長くて熱い夜を過ごしたのでしたね。

悠季。
こんなに感動に打ち震えているのは僕だけではないはずです。
君の身体全体から発せられた『愛している』というオーラは
僕と同じ感情からにじみ出たものなのでしょう?

今、君の安らかな寝顔に聞いてみても
帰ってくるのは静かな寝息。
どうか、僕にも君の偽り無い言葉で
君の心境を教えて欲しい。
君がどんなに僕を欲していたかを。
君が僕のタクトでどんなに感じていたかを。

明日の日記を読むのを楽しみにしています。


                       圭


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さすがに少し疲れたようです。
ハメを...外し過ぎましたかね...。
僕の欲求に答え、自らも燃え上がった悠季の寝顔が
らしくない反省の意を思い出させたようです。

僕の悠季。
抱いても抱いてもまだ、違う顔で僕を滾らせ
僕の心を捉えて離さない天使。

愛して...いますよ。



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