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しーくれっとらば~’S
ミスキャスト・完結編
<<ここからは結城の創作駄文です。
ほんのちっとだけBL風味(のハズ)です。
苦手な方はお避けくださいませね・・・>>
ミスキャスト~完結編~
潤との甘く切ない想いを胸に
数ヵ月後、天音は実家へと帰って行った。
天音が帰って数日後、潤のもとへ1枚の葉書が来た。
天音の故郷にある雄大な「南アルプス」の写真入り葉書。
そこには
『マスターさん、いえ、潤さん
いろいろとお世話になりました。
楽しかったあの日を忘れずこちらでも
私なりに生きていこうと思います 天音』
と、だけ。
“天音ちゃんらしいや・・・”
葉書を手に一人でつぶやいた。
その時、後ろからスッと手が伸び、葉書を奪った。
「ん?誰からだって?んー・・・」
「なんだよ、返せよ。」
「ああ。あの時の“シンデレラ”か。」
「ああ。」
「ふーん、な~んか真剣に見てっから。
もしかして帰したくなかったんじゃねーの?」
意地悪そうな言葉を潤の耳元で囁きながら抱きついてきた。
「んだよ!ウザい」
「かっわいくないんだよ、ほんとオマエって」
「バカかオマエは・・・」
そう言うと、慎也の手を振り解き店のある1階へと降りて行った。
今でも時折ふっと天音が店にやって来る様な気がする時がある。
“オレ・・・スキだったのかな”
そんな事を思ったりしてセンチになったり。
「らしく」ない潤がそこにいた。
あれから2年ほど経っただろうか・・・
相変わらず『珈琲人』は常連客ばかりだけれど
忙しく過ぎて行き、天音の事は
自然と頭から離れていっていた。
♪カラ~ン♪
ドアに付いてるカウベルが鳴り客が来た事を知らせた。
「先輩」
「潤さん、お久しぶりです」
「やぁ、拓真、優哉。いらっしゃい」
潤が剣道をしていた時の後輩の
木下拓真とパートナーの矢木優哉。
2人の大学がこの店の側にあったので
学生時代はココを待ち合わせ場所にして
よく来ていたが最近は思い出したかのように
たまに来ては慎也を和ませてくれた。
「優哉、息子は元気か?」
「はい!とっても。やんちゃなんですけどねv」
2人が“息子”と言って可愛がっている犬の健太郎。
優哉は特に「猫かわいがり」していて拓真をヤキモキさせている。
「やんちゃなのはきっと拓真に似ちゃったんだと思いますよ」
イタズラな目つきで拓真を見る優哉に
「オマエが甘やかすからだろ?」
拓真が反撃をするが
「そうだな・・・拓真、やんちゃだった・・からな。
ガキの頃から」
潤が追い討ちをかけて。
「もう、先輩までなに言ってるんですか!」
ムキになってる拓真を見る優哉の目は優しく・・・。
アイツもこんな風に少しでも可愛げがあればいいのになぁ・・・
と、慎也の顔を思い浮かべて。
いや、そんなんはアイツじゃねーか・・・
などと一人で思っては“ふっ”と笑って。
「あ、そうそう、潤さんコレ」
と言って優哉が白い封筒を差し出した。
「ん?」
「ポストにありましたよ」
「サンキュー」
見覚えのある字体。
「天音ちゃん・・・」
ほろ苦い“想い”が胸を過ぎった(よぎった)
夜。まだ慎也は帰ってきていない。
昼間、優哉から受け取った封筒を開けた。
なつかしい天音の丁寧な文字。
「・・・・・結婚、する、のか・・・」
その日、慎也は帰ってこなかった。
数日後の朝
「潤、起きろよ。」
「んん・・・なんだよ、まだ・・寝かせろ。
オマエ、今日・・・休み、だろ?」
「ああ。だから、出かけるぞ。」
「んあぁ?んな事、聞いてねぇ。」
「ああ。今、思いついた」
だるい身体を起き上がらせながら
「っとに、オマエは勝手だよなぁ・・・慎也」
「いいから早く、支度しろよ」
そんなやり取りのあと2人は車で出かけた。
「んで、何処、行くんだ?」
「んー・・・着いてからのお楽しみ、ってーのはどう?」
「バカか、オマエ」
2人を乗せた白のポルシェカレラ。
足を悪くしてから潤は運転をやめた。
自分の車は持っていなかったが慎也と暮らし始めてから
車を買った。
と、いうか潤の言葉で言うと
“慎也が勝手に買ってきた”
何度となく喧嘩を繰り返し、何度となく別れ・・・
その度、車を新しくして。
確か、このポルシェは5台目か・・・。
そんなことを思っていたら行き先が判ってきた。
「オマエ、まさか・・・」
「ん?」
「手紙、読んだのか?」
「読んだんじゃねぇ。目に入った」
「バカか、そういうのを読んだって言うんだ!」
「あ、そ。」
ポルシェは高速を降り、目的地へと近づいた。
「オマエ、場所、知ってるのか?」
「ああ。前に撮影で来た」
「あ、そ。」
市内の中心部にある、建物。
スーッと車が止まり
「この辺で、いっか。」
そう言うと慎也はエンジンを切り外へ出た。
「なんで出るんだ」
「ん?見ないのか?・・あぁ、見たくねえんだ。そっか。
ハートブレイク、だもんな?」
「てめぇ、喧嘩うってんのか?」
「いいや~」
サラッと潤の言葉をかわし車に寄りかかる慎也。
白く、古さはあるけれど引き締まるような
気持ちになる教会。
高い屋根の上には大きな鐘と十字架。
潤と慎也が車に寄りかかり教会を見ていたら
屋根の上の鐘が鳴り、中から列席者らしい人々が出てきた。
「ココでいいのか?」
「ああ。」
教会のドアがもう一度開き、列席の人々が
ライスシャワーを真っ白なウエディングドレスをまとった
花嫁とその腕を取り嬉しそうな表情の花婿に向け投げている。
「帰ろうぜ」
「ん?いいのか?声、掛けなくて」
「ああ。」
「ん。」
慎也がエンジンをかけると、その音に気付いた天音が
ドレスの裾を少し持ち上げ走ってきた。
車のミラーからそれを目にした潤。
“転ぶなよ・・・”
「あっ」
その声に思わず車の中から後ろを振り向くと
花婿の腕が花嫁を支えいた。
顔を見合せ微笑む2人を見て
「オレじゃ・・・やっぱり・・ミスキャスト、だったよ。」
「悲しい?」
からかいを含んだ慎也の言葉に
「・・・少し・・な」
その時
「潤さーん、ありがとー!」
と言いながら笑顔で手を振ってくる2人。
潤は“あの日の夜”の様に窓から手だけを出し
振り返した。
「お幸せに・・・」
心でそう祈りながら。
オワリ
この駄文は結城が書いている
「アイツと俺」というものの“番外編”として書いたのもです。
仲良くしていて下さっている
『はせくら屋』
の「
はせくら
☆
あまね
」さまをモデルにさせて頂きました。
天音ちゃんにも気に入っていただいています。ありがと~♪
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