Marlaのオイシイ生活

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マーラとだんなの結婚までの道のり(6)



彼は汗びっしょりのシャツを着替えるのにトイレに行った。

お母さん、どこにいるんだろう・・・。

彼がトイレから出てきた頃、私たちの荷物も出てきた。荷物を取って

出口の人だかりの方へ歩いていくと、母がちょっと緊張した顔で立っていた。

久しぶりに見る母。ちょっと痩せたかも。私は母の顔を見るなり、我慢していた

涙がドーッと溢れた。

「お母さん、お母さん・・・」

お母さんも泣いていた。彼は飛行機の中で、母に会ったら何て言ったらいいか

私に聞いていたので、教えてあった通り、母に日本語で挨拶した。

「初めまして、○○です。」

母も初めて会う自分の息子になるアメリカ人に緊張していたらしい。

「初めまして、お母さんです」

・・・お母さん、この素敵な瞬間に何て抜けた自己紹介・・・。

さすが私の母です。ハイ。


私たち3人は母の軽自動車に乗り込んだ。

何となく、彼の座っている側が沈んでるような気がした。

母は、翌日、叔父が仕事でいつも使う、隣の市の料亭に親せきを呼んで

披露宴をやるように段取りをしてくれていた。

結婚はアメリカに戻らないとできなかったのでね。

「お前は成人式に着た着物を着ればいい。ドレスなんて準備しないから。」

「うん、分かった」

「お前の彼氏はちゃんと今回着るスーツを持って来たの?」

「持ってきたみたいよ。揃えて買ったんじゃないから紺のスラックスに

グレーのジャケットらしいけど」

恥ずかしながら、彼はそれまであまりスーツが必要なことがなかったらしく

きちんとしたスーツを持ってなかったの。

それを聞いた母。

「そんなんじゃあいかんっ!」

と、その足でスーツ屋さんへ。なんと、彼にスーツ、シャツ、ネクタイ、

ベルト、ソックス・・・と上から下まで一式揃えてくれちゃったの。

しめて 6万円強!!

彼も「お前のお母さん、本当に僕の事を怒ってたの?!」ときくくらい。

私だってびっくりしたわよ~。お母さん、なんて男らしい・・・。

母が彼にスーツを買ってあげたことは姉にはナイショ。

やっぱり母もあれだけ怒っていたのに彼と初めて顔を合わせた日に

彼にスーツを買ってあげたなんて、姉には言えないらしい。

母は夕食にキムチ鍋を作ってくれ、意外にも彼は「おいしい」とガツガツ食べた。

仕事で遅くなった姉を待たずに食べ始めて、姉が帰ってくる頃には彼が

お肉を殆ど食べてしまっていて、姉に申し訳なかったなぁ。

姉が元々あまりお肉を食べない人で良かったワ。

姉もなんだかんだ言いながら、私が帰ってきたのを喜んでくれていた。

彼を交えた家族団らんの食卓。ずっと夢に見ていた事が実現したのだ。


翌日、私たちは披露宴の準備をすべく、美容室に向かった。美容師さんが来て、

「Marlaちゃん、どのドレスがいい?」

ときいてきた。???と不思議そうな顔をしている私に母は

「まぁ、せっかく披露宴をするんだから・・・」

と言った。母はドレスをちゃんと準備してくれていたのだ!

私と同じく意地っ張りな母。私にドレスを準備してるとは言いたくなかったらしい。


料亭に着くと、おじちゃん、おばちゃん達が

「Marlaちゃん、良かったね~!!」

と泣いて喜んでくれた。タキシードを着た彼に日本語で話しかける親せき達。

そんなのわかんねーっつーのよー!

でもみんなどうしても彼と話したいらしく、私は訳すのに大忙し!!

近い親せきだけを招待した、出席者約50人あまりの披露宴。

普通新郎新婦は殆ど出されたものを食べないんだけど、彼と私はガツガツガツ・・・。

特に彼は飲むわ、食うわ。

「親せきがあんたの前にやってきてお祝いの言葉をいいながらビールをついで

くれるから、全部じゃなくてもいいけどちゃんと飲むんだよ」

と言ってあったんだけど、そんな事、彼にとってはノープロブレム!

コップにつがれたビールをくいくい空ける、空ける!

みんなかなり喜んでいてくれてはいたのだけど、初めて間近で見るアメリカ人が

珍しいのか、彼の前にはビールを片手に持った挨拶をする人の列が・・・。

「おめでとう」「ありがとう」

「Marlaちゃんを大事にしてね」「はい、分かりました」

と返事を2種類教えていたのだけど、たまに私のサインを聞き違えて焦ったわ。

親せき「Marlaちゃんを幸せにしてあげてね」

彼「ありがとう」

おいおい、間違ってるよ~!!

1時間程経ってお色直し。私は成人式に着た振袖を着、彼はこれまた母が

準備してくれていた袴を着たの。彼は初めて着る袴に大喜び!!

私の着付けが終わるまで、彼は写真撮影用に中庭に立って待っていたの。

みんなが「○○ちゃん(←彼の事)、カッコイイー!」と言うので、私に

「カッコイイって何?」と聞いてきた。みんながあんたの事ハンサムだって、

と言うと、「カッコイイ?」と自分の事を言い始めた彼。アホ~。

そして、訳の分からない彼の隣にみんな順々に行っては写真を撮っている。

良く言うと、まるで有名人、悪く言えば動物園の動物もどき。

ただ笑って立っている彼の姿がちょーおかしかった。

袴はお腹の辺りが楽ならしく、大食いの彼はますます食う食う!!

私も負けずにムシャムシャ食べていたのだけど、着物に着替えたもので

帯が苦しくてあまり食べられなくなってしまった。それでも食べていたら

後で着物を脱いで見ると紐が体に食い込んであざになっていたわ。

そこまでして食うかい、普通?!

みんなとっても楽しんでくれて、着物に着替えてから3時間も披露宴が続き、

もっと続きそうだったのだけど、私はかつらの重みで頭痛がしてきたので

それを訴えると、やっとの事で披露宴を終了してもらうことができた。


ちょっと余談だけど、その料亭のおかみさんが

「うちの娘は歌手になるって言って東京に行ってるのよ~。ものになるんだかねぇ。

でも好きにやらせようと思って」

と言っていたのだが、後で聞いたらおかみさんの娘さんはgloveのKeikoだった。

びっくり~!!


彼はその後、2泊ほどして、一人でアメリカに戻っていった。

私は日本でフィアンセビザが下りるのを待たないといけなかったからだ。

結局下りたのは申請書を送付してから7ヵ月後。

そして私は9月に、彼の待つアメリカへ戻った。

「お前が自分で選んだ道なんだから頑張るんだぞ。体に気をつけて・・・」

母と姉は空港で声を詰まらせながら私に言った。

これからどうやって母と姉に家族孝行していくか。

課題はまだまだ残っているけれど、一歩一歩前進していかなくちゃね。


終わりまで読んでくださったみなさん、どうもありがとう!

こうして書く事によって、またいろいろ見直せた事がありました。

うちは喧嘩が多いけど、何とか乗り切っていけるのはこの辛い経験があるからかも。

みなさん、家族はやっぱり大切な宝物(ちょっと臭いけど)。

ずっと大事にしていきましょうね!!


うるうるストーリーおまけ


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