サトゥの死ぬまでシネマ。

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第7話。

「第7話 キャンディ・デイズ」
学校へ行くために自転車に乗ろうとしたら、サドルに一匹のカマキリがいた。危うくお尻で潰すところだった。それを想像した俺は一瞬鳥肌がたった。
「危ないぞ。よかったな。潰されなくて」俺はおそるおそる、カマキリを手で掴み近くの草むらに放り投げた。ひょっとしたら彼女(勝手にメスだと決めた。つうかカマキリは区別の仕方あったっけ)はこれから起こることの象徴なのかもしれない。暗示か、隠喩(かっこよく言えばメタファー)か。なんにしろ、嫌な予感がした。
「大丈夫だ。多分、どっかの国じゃあ、カマキリは幸福を呼ぶ虫として崇められてるはずだ」そんなことをつぶやきながら、俺は学校へ向かった。
葬儀場の側を通る。そういえば野ザルをプロデュースし始めてから、「今日は誰か死んだか」という確認はしなくなった。それがいいことなのかいまいちわからない。それを「充実している毎日だから」と単純に言ってしまうのは何か違う気がした。学校に着き、教室へ入るとケイタが話しかけてきた。
「人生ゲーム持ってきたぜ」
「センキュウ」
「昼休みが勝負だな」
「ああ、クニオ昨日から緊張してるらしいな」
俺はクニオに目を向けた。机に座ったまま、下をみている。俺の登校にも気づいていないようだ。
「野ザルは?」
「あいつは表情読み取るの難しいからなあ」
「なるほど。そんじゃ昼休み」
退屈な授業(といっても国語の岡山先生の「職員会議事件」の告白はおもしろかった。が、ここに書くほどのことじゃあ、ない)を4つこなして昼休みになった。
俺、ケイタ、クニオの3人は飯を食いながら人生ゲームをやり始めた。
「なんだかんだいって、木村カエラはカワイイ」
「ここら辺サクサク映らねえんだもん」
「俺ん家かろうじて」
「マジで!今度録画しておいて」
「砂嵐まじりのカエラちゃんでもいいのか」
「まあ、UA好きの俺は加藤ミリヤを薦めておくよ」
「だれだ?」
「知らないのか?今度CD貸すよ」
「加藤っつったらローサじゃね」
「じゃあ、加藤茶でFA?」
そんな他愛もない会話をしながらも、俺達は緊張し始めていた。もうすぐ作戦が始まる。実は人生ゲームはやってるフリ、というか、一応やってはいるがあくまでそれは芝居だった。実際、今ビリはこの俺だ。そろそろいいだろう。俺はクニオに目で合図した。
「ドゥワ!負けた~」
比較的大きい声でクニオが叫ぶ。教室の何人かがこちらを見た。よしその調子だ。
「じゃあ、罰ゲームなあ」
ケイタがニヤリと、これまた比較的大きい声で言った。ちょっと、わざとらしいが合格ラインだ。そして俺達はまたヒソヒソ話になる。
「いいか。いくぞ」
「オウケイ。まかしとけ」クニオが言った。深呼吸をする。
「マッジで~!」
さっきよりも大きい声でクニオが叫ぶ。さすがにクラスのほぼ全員が一瞬彼に注目し、またそれぞれの世界へと入っていった。
「マジマジ、オオマジよ」ケイタはニヤニヤしながら言うがこれはクニオの迫真の演技をみてのことだった。
「じゃあ、ルーレット回すぞ」俺は人生ゲームのルーレットを回した。
「マジかよー。えーホントに?」クニオは叫んだ。この頃にはクラス全員が彼に注目していた。
「ほら、行けよ」ケイタが野ザルを指さした。
「えっ今?マジかよ」
クニオは野ザルの席まで行った。
「あの、えっとサルノさん・・・。ちょっといいかな」
「はあ、な、なんでしょう」
「ちょっと来てくんない」
2人はそろって教室を出た。途端に騒がしくなる教室。
クラスメイトの男子が一斉に俺とケイタに話かけてきた。
「おい、なんなんだよ、あれ」
「まあ、ちょっとした罰ゲームでね・・・・」
2-Bのカツマタクニオが罰ゲームで同じクラスのサルノシンコに告白し、OKもらっちゃって付き合うハメになったという噂はその日のうちに学年中に広まった。

第8話
目次


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