最初の目標をクリア
相変わらず羊水の漏れは続いていたが、どうにか24週目に入る事が出来た。超音波検査での赤ちゃんの体重も700kg近くになって来ていた。まだまだ安心は出来ないが、破水をした頃の状況に比べるとずいぶん良くなって来ていた。先生は羊水が漏れてはいても、漏れた分だけ赤ちゃんが羊水を作ってくれていればあまり心配は要らないと言っていた。それよりも陣痛が始まる事や破れたところからばい菌が入ってしまうのをもっと心配していた。
その為に私は毎週血液検査を受けていた。この検査が早朝行われるのだが、看護婦さんが朝、5時ごろ注射器を持って現れる。こっちは半分寝ぼけているので何がなにやらよくわかっていない。最初の頃は痛みで目が覚めてしまっていたが、1ヶ月も経つと寝ぼけた状態で血を採ってもらい、そのまま又眠ってしまうようになった。人間、慣れとは恐いもんである。
24週目を迎えた私の次の目標は28週目を迎える事であった。28週になると生存の確率も90%近くになり、障害が残る確率もかなり減ると言う。体重も1000kgを超えると体力も付き、治療もしやすくなるらしい。私は出来るだけ体を動かさないようにしてベッドの上に横になっていた。
そんな私の「唯一の友」は小さなテレビであった。ちょうどこの時、和歌山の「毒入りカレー事件」が起こった頃だったので、ワイドショーは連日このニュースを伝えていた。私はたぶん、日本でも一、二を争うくらいこの事件については詳しかったと思う。
余談だが、今でも（2004年夏）ニュースであの事件の映像を見ると、条件反射的に私の脳裏には病室の風景が浮かぶ。これはきっと死ぬまで続くと思う。
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