大阪で魚河岸をしていた叔父をしのぶ
まいど、俺や。
この前、冷蔵庫から塩サバ出した瞬間、
ふと――叔父の顔が浮かんだ。
大阪で魚河岸(うおがし)をやっとった人や。
市場の朝の空気みたいな人でな、
声はでかいけど、笑顔はもっとでかかった。
魚と一緒に生きた人
子どもの頃、夏休みに叔父のとこ行ったら、
朝の3時から市場連れてかれたんや。
眠い目こすりながら、氷の上に並ぶ魚を見て、
あの頃の俺は「ここは海の延長や」と思ってた。
叔父はどんな魚でも触る前に一言、
「おまえ、ええ顔してんなぁ」って声かけてた。
魚に話しかける魚屋。
その姿、今でも忘れられへん。
豪快で、優しい人やった
叔父は仕事は荒っぽいけど、
家ではめっちゃ優しかった。
俺が刺身にしょうゆつけすぎたら、
「味殺したらあかん」って笑いながら言う。
そのあと自分の皿の刺身を一切れくれて、
「ほら、これが本来の味や」って。
――あの一切れが、たぶん今の俺の“味覚の原点”や。
魚河岸の風景を思い出す
氷を割る音、
トラックのバック音、
威勢のいい掛け声。
あの喧騒の中に、
“生きるリズム”があった。
働くって、本来こういうことなんやろな。
汗かいて、声出して、誰かに食わせる。
叔父はそれを、言葉より先に体で見せてくれた。
ある年の秋、突然の知らせ
病気で倒れたと聞いたのは、秋口やった。
海の匂いの似合う人やったのに、
病室の白い匂いが似合わへんかった。
でも、最後まで冗談言うてた。
「魚は死んでも腐らせたらあかん。人もや。」
……たぶん、自分の生き方そのまんまやったんやろな。
葬式のあと、魚を買いに行った
あの日の帰り、無意識でスーパーの鮮魚コーナー寄ってもうて。
鮮度も並べ方も、叔父の店とは全然ちゃうのに、
氷の上に並ぶ魚見て涙出た。
その瞬間、わかった。
叔父の“仕事”って、ただの商売やなくて、
命と人をつなぐ仕事やったんやなって。
親父の言葉
防大卒の親父が、通夜の帰りにポツリと言うた。
「お前の叔父は、不器用やけど真っすぐやった。
そういう人間は、魚に嫌われへん。」
……親父なりの弔辞やったんやと思う。
うちの家系、ほんま言葉が不器用やけど、
そのぶん言葉の裏が深い。
おかんの言葉も沁みた
「魚の匂いする家って、ええ家やったな。」
――ほんま、それや。
潮の香りは、働く人の証。
叔父の家には、いつも“生きる匂い”がしてた。
今の俺にできる供養
俺は今、魚を食べるたびに、
心の中で「いただきます」といっしょに「叔父ちゃん、ありがとう」って言うてる。
包丁を入れるときの手元に、
叔父のあの豪快な笑い声が、
今でも聞こえる気がするんや。
魚の目に
叔父の笑顔が
残りけり
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