趣味の漢詩と日本文学

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January 24, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】故権中納言、左の大殿の君をよばひたまうける年の師走のつごもりに、

物おもふと月日のゆくもしらぬまに今年は今日にはてぬとかきく

となむありける。


【注】
・故権中納言=藤原敦忠。時平の子。三十六歌仙の一人。枇杷の中納言と呼ばれた。(906……943年)
・左の大殿の君=藤原忠平(時平の弟)のむすめ、貴子。
・よばふ=求婚する。言い寄る。
・物おもふ=もの思いをする。思いにふける。
【訳】故権中納言藤原敦忠さまが、左の大殿の君藤原貴子さまに、求婚なさっていた年の十二月末日に、



と歌を作ってお贈りになったとさ。


【本文】又かくなむ、

いかにしてかくおもふてふことをだに人づてならで君に語らむ
【注】
・人づて=ほかの人を通じて、言葉を伝えたり聞いたりすること。
【訳】また、こんなふうに歌を作ったとさ。
どうやって、このように深くあなたを愛しているということだけでも、他人を介することなく直接あなたにお話しようか。

【本文】かくいひいひてつひにあひにけるあしたに、

けふそへにくれざらめやはとおもへども堪えぬは人のこころなりけり
【注】
・そへに=副助詞「さえ(さへ)」の語源とされる「添へ」に助詞「に」の付いたもの


【訳】このように、恋心を歌に作って訴えて、とうとう逢って夫婦の契りを結んだその翌朝に、

今日もまた、日が暮れないことがあろうかと思うけれども、夜になったら逢えるのはわかっていながら、その待ち遠しさに堪えられないのは、人間の気持ちなのだなあ。






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Last updated  January 26, 2011 07:38:23 PM
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