姉妹からのプレゼント



会場でサイン本を購入した人には、抽選で一緒に写真におさまる権利が与えられる。

私は書店で買ったので、本はあるが抽選権がない。

サインをくれ、とお付きの人に食い下がってみる。
お付きの人はちょっと虚勢を張って、「お断り」ポーズである。
完全にごくごく普通のお姉さんだ。

じゃぁ、と私も粘ってみる。
部屋からは興奮した女の子達が、3ショットのポラロイド写真を持って続々出てくる。


・・・私にサインは必要なのだろうか。
今日の目的はなんだろう。得たものはなんだろう。

物事には目的が必要で、実現には期限と小さな具体的な数値目標が有効なこと。
満足が自信を生み、満足度は投入した前向きの力に比例すること。
ちょっと練習すればマニキュアくらいは上手になること。
一方美しさなど、積み重ねられた蓄積は圧倒的な力だということ。
TVはあてにならないこと。
洋服が重い時、軽いのを選ぶほかに身体を鍛える手があること。
目が肥えていなくて、歩きの本質はとらえられなかったこと。
意外や意外、彼女らもさらに美しくなる余地があったこと。
キャラが確立しないと冗談すら言えないこと。
運に頼っていては質問の回答は得られないこと。
口に出して、会話してみて初めて見えてくる自分の本音もあること。
短絡的な望みほど、本気だろうということ。
いいわけめいた演技は、人間の中身までむしばむということ。
真剣に生きろということ。

今日の目的は彼女らの生き様をかいま見て、ものの考え方を決める一助とすることだった。

・・・とすると・・・?

サインは何の一助にもならない。
せいぜい明日、会社の同僚にムリヤリ見せていやがられるくらいだ。

私はサインをもらわず立ち去った。
すてきなプレゼントだけを正しく選択したんだ。




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