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小説「ゲノムと体験が織りなす記憶」 第 9 話
いろんな気持ちが落ち着いて、リョウは右脇を見る。
そこには、いつものようにマリが身体を埋め
顎をリョウの肩の付け根の上に乗せている。トロンとした目もいつも通り。
(三毛猫のミーみたいだな・・・)
もう一度、今度は声に出してみる。
「三毛猫のミ―みたいだな」
「う、うん?なんか言った?」
「ああ、お前がそうやってるのを見ると、昔なじみの三毛猫のミーによく似てる。そう言ったんだ」
「え、リョウさんとこ、猫飼ってたの?」
「いやいや、自分ちの飼い猫なら『昔なじみ』なんて言わないだろ」
「・・それもそうか・・・」
「むかし、俺んちの裏手に住んでた杉田さんのとこの飼い猫で三毛猫のミーっていうカワイイけど気の強い猫がいてね・・・そう言えば、気の強いとこもマリに似てたわけだ」
「んふ、ツンデレフェチなの、昔っからってわけなんだ」
「・・・・・・・・」
「はい、続けて・・・」
「お、おう・・ミーは他所の飼い猫なのに、冬になると時々俺の部屋にやってきて、布団の中に入って、丁度今のお前さんのように俺の脇の付け根っていうか肩の上に顎を乗せて寝てたんだ」
まじまじとリョウを見つめてマリは言った。
「不思議だよねリョウさんって、人だけじゃなく犬や猫にも好かれるんだ。どうしてだろう?」
「昨日言ったろう、神社の池に泳ぐ鯉を見て『魚心あれば水心』って、あれだよきっと」
「・・・っとそれどんな意味なの?」
「なんだよ、意味が分からないから返事しなかったのかよ。俺はまた何か考え事してんのか、そう思って追及しなかったのによ」
「ごめん、どうしたんだろ?あの時は、何だか聞くタイミングを失っちゃったみたいになって・・・ごめん教えて」
「おう、『魚心あれば水心』ってのは、何でも本来は『魚、心あれば、水、心あり』って言ってて、(魚が水に親しむ心があれば、水もそれに応じる心がある)というふうに、こちらが好意を示せば、相手も自然と好意を持つ。そういう事らしいぞ」
マリは普通に目を見張った。
「すごい!リョウさん、どこでそんな事を覚えたの?」
「うん、高校の時の現国の先生が話題の豊富な人でね、授業中眠くならなかった・・・からかな?」
「うーーん、・・・」
マリは思わず布団の上で起き上がり、腕を組んでいた。
「おい、マリちゃん、お前その恰好、どうかと思うぞ」
と指をさすリョウ。
「キャッ!」と慌てて布団に潜り込む。
「何がキャッ!だよ・・・ほら、そろそろ寝るぞ」
「火を付けたのは何処の誰!?」
「おやすみ・・・」
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