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久々の更新ですが、長く間を空けてしまっていた私のところへ
多くのアクセスを頂きました。本当にありがとうございました。
この酷暑の折、皆様におかれましても、どうぞ健康に充分留意され
て食欲の秋をお迎え下さい。
マトリックス A
20
話
は高木健司(たかぎけんじ)という。
ついこの間まで、健司の心はどこか晴天を望めない、長く続く梅雨
に嫌気がさして、人々がみな空を見上げる気さえ起こさなくなる、
それに似た心模様を抱えたままでいた。
おそらくそれは、現在の彼自身の生活環境、親から受け継いだ資産
を活かしてマンションを建て、その家賃収入だけで充分に生活出来
る。
その恵まれた環境にいつのまにか慣れてしまった日々の中で、ふと
我に返った時、自分の中に何かを切り開こうという願望、希望とか
そういった内心の活力が薄れていることに気付き愕然としたのであ
る。
彼が軽音喫茶「ブルース」を開いたのは、彼の内心に未だ消えずに
あった若さに呼び起こされた結果であろう。
このまま安定し過ぎた生活を続けたまま年老いてそれでお前は良い
のか?
「このままで良い筈がない」と彼自身が将来を見据えて奮起し、
出した答えであった。
それでもなお、彼の梅雨が完全に明け切れたとは言えてなかった
日々、そのともすれば曇りがちな日々に明かりを灯してくれたの
が、裕也と香織が持ち込んだ「あの梅の木は」なのであった。
そして今日この日、つい今しがた体験した未曾有な出来事によって
長く健司の心に居続けていた梅雨は完全に明けたのである。
裕也と香織はもう一度、今度は声尾を大きくしてマスターを
呼んだ。
「マスター!」
我に返った健司が顔を上げた。眩しいほどの笑顔だった。
二人はとにかく玄関のドアを開けて駆け下りていく。
「マスター、どうかしたの?」
「ほんと、二度も呼んだのに返事をしてくれないから心配
しちゃいましたよ」
先に裕也が、続いて香織が言った。
「あ、そうかごめん、ちょっとあってね・・・いやちょっとじゃ
ないか」
再び顔を見合わせて首をかしげる裕也たちに健司が言った。いや
告げたというのが相応しいだろう。
香織の家の一角を見上げた健司
「あの梅の木は、ただの木じゃない!きっと別の世界との接点
だろう」
常ではないことを常とは違う力強い声で告げたマスター。裕也たち
は聞き返すことも出来ずに立ち尽くした。
困惑する二人に笑いかけながら健司が言う。
「さあ、もっと近くであの梅の木を見たいな。計画通りご両親に
僕を紹介して下さい」
香織はこくんと頷いて歩き始めた。
いつも有難うございます。
今日もどうぞよろしくお願い致します。
「あの梅の木は」 第21話 2026.09.01 コメント(4)
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