GORORI NETWORK

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いつも君を見ている


「僕は君のことはいつも見ているんだよ」
電話の相手は自分の名も告げずに、いきなり彼女に向かってこう言った。
相手の男の声に彼女は全く心当たりはない。
それから男は彼女の一日の行動を見ていたと言ってその様子を詳細に語り始めたのだが、その内容は彼女の実際の一日の行動にはひとつも当てはまらなかった。
変ないたずらをするやつがいるな。
そう思った彼女は無言で電話を切った。

その翌日の夜にも同じ相手から電話がかかってきた。
男はまたも一方的に彼女の今日一日の行動と称したことを語り始めたのだが、やはりその内容は彼女の実際の一日の行動にはまったく当てはまらない。
どうやら彼女のことを、誰か別の人と勘違いしているようだ。
また同じように彼女は無言で電話を切った。
次の日も、そのまた次の日も男からの電話はかかってくる。
いいかげんうっとうしくなった彼女は、男に向かってこう言い放った。
「いいかげんにしてください!私はあなたが狙ってる人じゃありませんよ!」
その日以来、男からの電話はかかってこなくなった。

それからしばらくしたある日。
彼女がこの電話の一件をすっかり忘れかけたころになって、またもやあの男から電話がかかってきた。
ただ、今度はいつもと少し様子が違う。
「この前は本当にごめんなさい」
そう言って男は彼女に謝罪した。
やはり彼女が思った通り、彼は番号を間違えて電話をしていたのだ。
あるいは彼に電話をかけられたくなかったどこかの女性が、でたらめの番号を教えていたただけなのかもしれない。
だが、彼女にとってはそんなことはどうでもいい問題だ。
彼女は一刻も早くこのストーカー男との話を打ちきり、電話を切ってしまいたかった。
しかし、次に男が話しだしたことを聞くと彼女はその場に凍りついてしまい、それが出来なくなる。
男は彼女のその日一日の行動を見ていたと言って、その様子を詳細に語りだしたのだ。
その話の内容は実際の彼女の行動にピタリと一致するものであった。
「だから言っただろ」
男は楽しそうに彼女に言った。
「僕は君のことはいつも見ているんだよ。ひひひひひ・・・・」



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