GORORI NETWORK

GORORI NETWORK

学生寮の住人


 このKという学生寮にはもともと奇妙な話が多いのだが、とりわけ彼の住む部屋は代々幽霊が住みついているという噂のある部屋であった。
 そして彼自身からもこんな話を聞いた。
「今はあたりまえのこととして慣れましたけどね。なにかはわからないけど変なものはいます。僕の部屋は二階でしょ。なのに窓の外を人影が通るんです。それも昼夜問わずにしょっちゅうです。レコードを聴いているでしょ。A面がもうすぐ終わるなと思っている時、下に電話がかかってきて誰かが取り継いでくれる。呼ばれて下へ降りていって電話を済ませますよね。部屋へ戻るとレコードのB面がかかっているんです。テレビをつけっぱなしにして寝るでしょ、朝起きるとテレビがちゃんと消えている。寝坊していると誰かが僕をつついて起こしてくれる。起きるともちろん誰もいない。よくあります。最初は君気味悪かったけれど、今は友達みたいなもんですよ」
 さて、彼の証言が本当かどうかを確かめようと彼の部屋に泊まりこんだ数人の物好きがいた。彼らの話によればこうだった。
「夜中、彼の部屋に数人で泊まったんです。酒飲んでわぁわぁ言いながら夜中を待ったんです。彼は絶対出ると自信満々なのに一向に幽霊は出てこない。大勢いると妙なもので変に強気になって、誰かが『出れるもんやったら出てきやがれ!』と大声をあげたんです。そしたらその瞬間、部屋の隅に置いてあったギターがボロローンと鳴ったんです。みんないっぺんに酔いが冷めちゃって・・・」

角川文庫『新耳袋 第一夜』より


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: