blanc+

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眠れない。


口の付近にあてられ、声にならない声で泣く息子。

息が苦しいのかしら。
傷口が傷むのかしら。

色々案じているとどんどん不安になって
渦巻く闇に吸い込まれそうな感覚に陥った。

だが、感覚はすごく研ぎ澄まされていて
普段はまったく気にならない遠くのシャワー室の音が
妙に近くに感じたものだ。


声にならない泣き声もようやく本来の声になってきた。

どうやら息子はお腹がすいているらしい。

看護婦さんの指示どおり、最初は白湯を少しずつ様子を見ながら
与えていく。
50mlを飲み干したがまだ足りないとばかりに
泣き続けた。

30分後、ミルクを少しずつ与えてみる。
勢いよく飲みすぎてムセながら、50mlほど飲み干し
疲れたのか、眠りについた。

ほっぺをつついても目を覚ましそうにない。
泥のように眠る。

このまま目を覚まさなかったらどうしよう。

私はこの気持ちに囚われて
この日から眠れない日々が続いた。

ケータイでカチカチ調べ物をする。
もちろん病気について。
手当たり次第、ガンについてはほとんど調べぬいた。
この時の私が気にしていたのは、
命が救われる可能性・確率。
治療方法や選択肢についての記述もあったがここまで読んでしまっては
頭がパニックになるだろう。
そう思って可能性・確率に要点をしぼったのだが。

ガンって
"ん~、ガンですね。お薬○日分だしますから~"
なんていう時代にはならないのだろうか。

時代を重ねるにつれて人の病気は多様化するんだろうな。
ガンが命を脅かす病気でなくなった頃には
また別の病気があらわれるんだろう。

ある日、図書館司書をしている友達に手紙を書いた。

"実は息子が入院しています。ガンの可能性があるので
それに関する資料をなんでもいいので集めてほしい"

と。

私はガンという文字を漢字で書くことが出来なくなっていた。


眠れないとぼんやりしている部分と妙に冴えてくる感覚がある。

私は人が息子をどう思っているのかがわかるようになった。

興味本位で息子のことを訊ねてくる付き添いの母親。
本当に心配してくれている人。
この区別がつくようになっていた。




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