椿荘日記

椿荘日記

「RAINING」



イギリス生活が始まって、間もない、ある日曜日のことです。
自宅のあるグリーン(芝生の広場)沿いの小道を小走りに急いでいると、ある老婦人に、すれ違いざま何か言われました。
はっと振り返ると、輝かしい銀髪の下の、きらきら光る瞳で悪戯っぽく笑って、綺麗にぺデイキュアした人差し指を横に振ってそのまま通り過ぎて行きました。
その時辛うじて聞き取れた言葉は(マリは当時未だ余り英語が判りませんでした)
<日曜日に女性が走ると雨が降るのよ>でした。

日曜日はクリスチャンの多いイギリス人にとって安息日です。
殆どの人が、家族や親しい友人達とパブでローストの食事を取ったり、自宅の庭でテイーを楽しむ、大切な日です。そんな日に、あくせくと走る日本人を可笑しく思ったのでしょう。
マリは、細いヒールの靴でおっとりと歩いていった老婦人の姿を真似て、背筋を伸ばし、肩の力を抜いてゆっくりと歩き始めました。


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