その7。



bali 2002 kechak

かけ声がかかった。そしてケチャが始まる。
舞台のかなり奥の下の方にライトが2個あるのみ。
ガスランプの灯りがゆらりゆらりと揺れるなか、男たちが舞台に出て
きた。上半身裸で、黒いサロンに白黒チェック柄のサロンを重ねてそ
れを赤い帯で結んだものを身に付け、片耳に真っ赤なハイビスカスを
挿した男たちはゆらゆらと、独特の掛け声をかけながら円座になって
腰掛ける。ガムラン等の楽器は無し。この男たちのかける掛け声や、
朗々と歌い上げられる節回しが不思議な“場”を作っていくのだ。
弱く強く低く高く、波のように近く遠く、男たちの声が重なりあって
不思議な高揚感を生む。
円座の真ん中、大きな灯りの周りに踊り子が出てきて、ストーリーに
合わせて踊る。このケチャはインドの叙事詩『ラーマーヤナ』を下敷
きに作られた踊りで、男性達は猿の軍団を表している。
ストーリーの展開に合わせて、猿軍団の声の調子が変わり、時に両手
を挙げて小刻みに震わせたり体を揺らしたり。
数人の踊り子が入れ替わりながらバリ独特の繊細で神秘的なダンスを
踊っていく。それにケチャの声が重なる。そこには無いハズの音楽が
聴こえてくるような幻聴に囚われる。
以前見たケチャはもっと観光客用にショーアップされてしまっていて、
とても俗っぽい感じだったのですっかり侮っていたけど、今夜見てい
るこのケチャはとても真面目で静謐な雰囲気さえ漂っている。
ガスランプだけのほの明るい感じもとても神秘的でいい。
盛り上がって終わる。

次は“サンヒャン・ドゥダリ”。すでにトランス状態にある少女が2
人、担がれて出て来る。
これは元々神憑きの踊り“サンヒャン”で、村で疫病が流行した際に
これを踊るようにと神から啓示された、と伝えられる奉納舞踊だ。
初潮前の少女2人を依童に、神がその中に降りてきて踊る。
私が座っていた所から少女たちの踊っている所まで少し距離があり、
視界が暗いのであまりよく見えなかったが、どうやら少女たちは目を
つぶったまま同じ踊りを舞っているらしい。
舞台中央におかれた線香の独特な匂い、女性達の祈るような静かなコ
ーラスから突然男声のケチャ風の躍動感あるコーラスに変わり、少女
達の舞も静から動へ激しく変わる。トランスがピークになるといきな
り少女たちは手前にぱたり、と倒れる。抱き起こされてまた踊る、を
2回繰り返し、3回目には目覚めなくなり僧侶に聖水をかけてもらっ
て我に返る。神秘的で美しいダンスだった。

最後が“サンヒャン・ジャラン”。いわゆるファイヤーダンスで、こ
れもトランス状態にある男性が、作り物の馬に跨って火を蹴散らかせ
て歩いて踊る。
前のサンヒャン・ドゥダリが終わった後、中央のガスランプが片付け
られ、薪が積まれて油がかけられ火が点けられる。ご~っ!とスゴイ
勢いで火が燃え、かなり離れているのにその熱気が伝わってくる。
そっか~だから舞台から客席までが遠いのか、と納得する熱さ(^-^;
その薪を蹴って焚き火を崩し、その上を歩きながら更に火を蹴って歩
く。暗い中に赤く、火が軌跡を描いて撒き散らされる。
最後に火の上を踊り回る男は捕らえられ、僧侶の聖水で正気を取り戻
す。これは本当にすごかった!正気に戻った踊り手の足の裏、真っ黒
に焦げてたし。。(-.-;;

bali 2002 dance3

私はガムラン等楽器を使った民族音楽が好きなので、ガムランが無い
踊りって。。と思ったけどそんな心配は杞憂だった。予想外に良かっ
たので満足(^-^*
トランスが本当かどうか?なんてのは愚問。この島にはちゃんと神様
も悪魔も居て、人々は信仰心も篤い。毎日お供え物(チャナン)を沢山
作り、毎朝お祈りをして回るのを日課にしている。自分の所属する村
の寺の儀式を何よりも大事に思っている。そんな土地柄だから、こう
いう神憑りが有り得ても不思議ではないような気がする。
バリのこういうダンスは、元来あった奉納舞踊や儀礼の舞をアレンジ
して観賞用にしたもので、歴史的には浅い。ただその元になった神に
捧げる芸能はきちんと歴史のあるものなのだから。

帰る客に混じってシャツを羽織つつてろてろ歩いているケチャの格好
をした人達と並んで歩く。皆その格好のまんますぐ帰るのね(笑)

ちょっとお腹空いたかな?と思い、ホテルのすぐ向かいにある「カフ
ェ・ワヤン」に入る。店員のおね~さんの感じがあまり良くなくて、
日本人だけ集められている入口近くの席に案内される。ここはもっと
奥が広いのを知っていたのでちょっとムカつく。どれも値段も高く、
ここで美味しいと有名な“Death by Chocolate”Rp12000とバリコー
ヒーRp6500でもと注文してみる。確かにこのケーキは美味しいかも
しれないが、ガイドブックがこぞって絶賛するほどのもので無い。
じゃりじゃりと砂糖の粒が口にざらつき、私としてはまぁまぁ程度、
っていうか普通??それにしても高い!という印象。

満足感皆無ですぐ店を出る。これではお腹も納得してくれまい。。
ホテルを通り過ぎ、窯焼きピッツァで有名なロータスレーンという
お店の真横に「MENDRA’S cafe」というカフェを発見。外に出ていた
メニューを見ると良心的値段。少し奥に入口があるみたいなのでち
ょっと迷ったが、えいっ!と中に入ってみる。暗い道をちょっとだ
け歩くと現地のおっさん達が数人座ってTVを見ているテラスみた
いなのがあった。ん?と思い引き返そうとすると、テラスの隣にあ
ったインターネットスペースからおに~ちゃんが慌てて駆け出して
きた。で、カフェは上だよ!と笑顔で言う。
そっか~と上に上がると、数人の客が居た。オープンエアになって
いる店内はすっきりと感じが良く、店員のおね~ちゃんも控えめで
可愛らしく、丁寧でいい感じ。ここのお店の名前がついたサンドウ
ィッチをお持ち帰りにしてもらう。油紙にくるっと包まれたそれを
持って20:50頃ホテルに戻る。

汗だくベタベタだったのでシャワーを浴び、サンドウィッチを食べ
る。軽くトーストした薄めのホワイトブレッドにトマト・レタス・
チキン・タマゴ・オニオンと盛り沢山に挟んであり、けどしつこく
なくて美味(^-^* これでRp1万以下だなんて安い。
あとマンゴスチン一個食べて、本を読みつつ就寝。

                     その8。に続く。





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