≪☆女神☆の広場≫

≪第十九話≫

<未だ見ぬ我子>

私は漸く意識を取り戻した

時々虚ろな意識の中で

彼と愛し合った

楽しい一時を夢の様に感じていた

夢の中ではまだ兄とは知らず

ただただひたすら

2人だけの世界で

愛し合うことだけを堪能してた

そして今現実に引き戻され

やっと久し振りに兄と再会出来ると思ったら

もう実態の無いお墓に埋められた

冷たい現実だった

この事ですっかり母は生きていく気力を失い

心の無い躯状態の肉体だけになっていた

父も結局生きている兄には会う事は叶わ無かった

もう話事も手を繋ぎ合う事も抱き合う事も許されない

全て拒絶された魂の無い骸と会い見える事となった

22年間一時も忘れた事の無い我息子

余りにも運命は残酷で有った

父も母もこれからの人生をどう遣って

何を生き甲斐として生きて行けば良いのか

途方に暮れる眼差しをただ虚ろに

正体の無い物へと向けている生きた屍

私は自分の悲しみを感じる前に

この憐れな2人の両親の嘆きを思って

本当は兄を追って自分も後を追いたい

強い衝動を抑えて

出した私の結論

この痩つれた母を支えて

この母と死んだ兄が過ごした札幌で

暮して行こうと決心を固めた

そしてこれから誕生する兄の子供

まだ見ぬ確実に私の身体の中で成長している我子

この子を支えに私は残りの人生を

生きて行けるであろう

新たなるこれから襲う事実を前に

一時だけの安息

兄の死が無駄で有った事を知らされる

これから数ヵ月後を

この時点で分かる筈も無かった

・・・・・・・・・・・

ただひたすら胎児の成長を願っていた

・・・・・・・・・

父と母にとってはそれは苦しみでも有るけど・・・・

私にとっては生きる糧

もう歯車は回っていた

3人の運命を乗せて

3人の感情に関係無く

無残に冷たく


そして外では

季節外れの祭りの花火が

煌々と鮮やかな光を放っていた

私達人間の感情に関係無く

まるで何事も無かった様に

・・・・・・・・・・・・




© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: