うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2024年10月07日
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カテゴリ: 近代短歌の沃野
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児等 こら
小夜 さよ 更けてひそかには喰ふこの梨の実を

こほろぎのしとどに鳴ける真夜中に
            喰ふ梨の実のつゆは垂りつつ



歌集『くろ土』(大正10年・1921)

子供たちが やまい で臥せっている手前
昼は食べられず
清らかな夜が更けてからはひそかに食う。
この梨の実を。

秋の虫がはなはだしく鳴いている真夜中に
食う梨の実の汁は滴って。


こほろぎ:今でいうコオロギだけではなく、広く鳴く虫全般を指した古来の意味で用いていると見て間違いないだろう。

しとどに:はなはだしく。したたかに。ひどく。やや被害的な感情を含意する。ここでは、秋の虫が「うるさいぐらいに」鳴いていて、その合唱と夜陰にまぎれて、といった意味合いか。

垂り(つつ):現代語の動詞「垂れる」ではもちろんなく、中近世以降の「垂る」(下二段活用)でもなく、鎌倉時代頃までの、とりわけ(おそらく作者の意識としては)万葉時代(奈良時代)の上古語としての「垂る」(四段活用)の連用形なので、この形になる。動詞「したたる(滴る←下・垂る)」の造語成分。
一種の古拙(アルカイック)な素朴さと格調を醸し出している。

私の勝手な印象では、牧水はこういった古典文法的な技巧に凝るのが好きで、かつ得意だったと思う。言葉に対して、今でいうマニアックな気質があったのだろう。詩歌人としては、とても幸福な資質だと思う。


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最終更新日  2024年10月08日 03時46分48秒
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