イランで値切る 続き


かくして、彼女は45万円で絨毯を買ったのでした。
6倍さえしておけば、彼女は270万円でその絨毯を買ったことに気づいたでしょう。

それはともかくとして、トルコは物価が日本の六分の一であることを念頭において、そろそろあなたは、目の前の商品をいくらで買いたいのか決める時が来ました。

今や店主は45万円という日本人価格で売りつけぼろ儲けをしようと考え、あなたは20万円という正当な価格で買いたいと考えています。

彼らはよく、「では、あなたはいくらならいいのですか?」と逆に質問してきます。あなたの腹を探ろうとしているのですネ。
早い段階からこの質問に乗ってはいけません。値段交渉が佳境に入り、お互いの腹が決まった頃にスペードのエースは切って下さい。

この時、この商品の妥当な値段が20万円と仮定しておきましょう。
そして、あなたが10万円で買いたいと言えば、彼は直ちに非常に怒って商品をかたずけだすでしょう。
しかし30万円とあなたが言えば、一瞬渋い顔を見せてから、「私はあなたの事が好きだから」とか何とか言いつつ、40万円までしてやるとなるでしょう。

要するに、怒らないし、かたずけないのです。これはもう明らかに失敗です。
ですからして、怒らせないと、しかも一度かたずけるふりをさせないといけないのです。
日本でこんなに怒って、商品をかたずければ、客は逆に怒って帰ってしまうと思える位の勢いです。すごいです。ビックリしますヨ。
でもあなたはそんな勢いにビビってはいけません。
「あぁそうか、そこまでは出来ないんだな」ってな具合に冷静に「まあまあ、そんなに怒らずに」と一度店主をなだめて下さい。

これでやっと土俵はととのいました。
後は存分にあなたの日頃鍛え上げた腕を発揮して下さい。

短時間で決着しようという考えは禁物です。彼らの時間は、我々とは違ってゆっくり流れているのです。

トルコとイラン、基本は同じです。違いを少々のべます。
もしあなたが指値(25万円にしろ)をして帰るふりをしたとします。トルコは追いかけてくるでしょう。20万円以上の時は儲かりますから。
でもイランは追いかけてきません。彼らは誇り高い商人です。
「本当に欲しければ戻ってくる」と考えるのです。これが、観光客相手に商売をしているトルコと観光客などほとんどいないイランの違いです。もうひとつ、イランはトルコほどはふっかけないと言えます。同様の理由で。

いずれにせよ、「こいつはあまり知らないな」と思えば高く、よく知っているなと思えば安く言って来ます。
一にも二にも勉強です。

更に一言付け加えさせていただきます。この通り実践されたからと言って成功するかどうかは保証の限りではありません。当方一切の苦情は受け付けません。失敗は成功の元とおあきらめ下さい。
何せ、はじめに言ったでしょ。相手はシルクロードで交易が始まった頃からこんな駆け引きを行っている商人の末禽なんですから。

でも私、優しいですから必ず成功する方法、ひとつだけお教えします。
それはネ。あなたが信用できる現地の人と一緒に買い物に行き、値切ってもらうことです。信用できる人ですヨ。
あなたトルコで、3000円のスカーフ1500円に値切って喜んで買ったでしょ。そう、それ、そのスカーフ500円で買ってくれますから。



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