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2010.08.22

活劇の王道！★「隠し砦の三悪人」（'58年　東宝）

(4)

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

今夜の名画は、黒澤明監督初のシネスコ作品です。
娯楽性に満ち溢れ、シナリオ構成、カメラワーク、衣装、小道具等、
細部に渡って緻密にして秀逸、完成度の極めて高い「隠し砦の三悪人」。

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戦国の世‥‥しがない百姓の太平（千秋実）と又七（藤原釜足）は、
戦に加わることで財をなそうとするが、儲けるどころか残ったのは命だけという有様。
そんな時、盗んだ米を薪で炊いていたら、その薪の中には金塊が‥‥
金塊は先ごろ戦で負けた大名・秋月家の軍資金と睨む太平たち。
そこへ、秋月家の侍大将・真壁六郎太（三船敏郎）が現れ‥‥

この作品、日本の戦国時代が舞台設定のれっきとした時代劇なのですが、
全体的にハリウッドの黄金時代の活劇のような雰囲気です。
いや、西部劇っぽいとでも言ったほうがいいかな？
山奥の隠し砦や宿場町の造りなどは、ジョン･フォード監督の西部劇そっくりだし、
夜の木賃宿のシーンでは、和楽器ではなくバンジョーやラグタイムが流れていても、
全然違和感がないくらい。
それと、六郎太といい、百姓たちといい、お姫様といい、衣装が非日本的、
てゆーか、洋服に近い造りです。
あまりにも有名な、三船敏郎が馬を駆りながら敵方の侍を次々と斬るシーンや、
藤田進が、「♪ひーとーの、いーのーちーはー」と歌いながら槍を振りかざし、
まさかの逆転劇を演じるシーンは、
ハリウッド冒険活劇そのものでした。
のちにG・ルーカス監督が、この作品をモチーフに「スターウォーズ」を撮ったというのも、大いに納得できますね。
佐藤勝のOPのマーチも、全身の血が騒ぐようなノリです。

これはモイラの私的な意見ですが、
この作品で一番魅力的なのは、なんといっても雪姫です。
まず、雪姫の顔が美しい！
少しつり上がった大きな眼、きりりとした口元、漆黒の長い髪。
でもそれより美しいのは、卵型の顔の輪郭です。
雪姫役の上原美佐さん、かなりメイクもしているけど、メイクであの美しい輪郭は出せません。
次に魅力的なのは、雪姫の性格の強さ。
両親を戦で失くし、城も追われ、首に賞金をかけられる身となっても
決して自分を悲劇のヒロインとは思わず、愚痴らず、人前でも決して涙を見せない強さ。
モイラは強い女に憧れます。
そして、第三の魅力は、一見わがままでヒステリックな性格の裏にある優しさと慈悲深さ。
自分の身代わりに妹を差し出した家臣・六郎太を怒鳴りつけた時の言葉、忘れられません。
「小冬も十六、私も十六、命に何の変りがあろう！（略）私が小冬ならこの雪姫を恨むぞ！」
宿場で売られそうになる秋月の村娘を助けろと、六郎太に命じて拒絶された時のセリフも忘れられません。
「嫌じゃ！その方は姫の心までおしにするのか?!」
映画公開当時、評論家どもが、「大根」「セリフ下手すぎ」等等、好き勝手書いてたそうだけど、
お姫様役ってのは基本的に大根でもかまわないと思うのは、モイラだけ？

二人の百姓のやりとりも、かなり面白いです。実に人間的‥‥

まだ未見の方、この映画は絶対、ぜーったい見て損はありません！

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最終更新日 2023.07.02 15:25:11
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■コメント

Re:活劇の王道！★「隠し砦の三悪人」（'58年　東宝）(08/22)

ドレミ王子さん

こんばんは～♪

「隠し砦の三悪人」絶品です。
「蜘蛛巣城」「七人の侍」
この３作は文句なしに好きです。

二人の百姓（足軽）
最近の戦国モノの映画は足軽を既製品のように個性なく一様に描いていますが、実際の足軽はずるくて、気ままで、それでいて勇敢であって臆病。昔の書物を読むと、黒澤さんの描き方が正しいと思います。 (2010.08.23 21:02:09)

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Re[1]:活劇の王道！★「隠し砦の三悪人」（'58年　東宝）(08/22)

モイラ2007 さん

ドレミ王子さん、こんばんは♪
＞
＞「隠し砦の三悪人」絶品です。
＞「蜘蛛巣城」「七人の侍」
＞この３作は文句なしに好きです。
＞
「蜘蛛巣城」の独特の様式美は、もはや美術品のレベル。
「七人の侍」は完璧。
黒澤明監督という人は、まさに天才だと思っております。

＞二人の百姓（足軽）
＞最近の戦国モノの映画は足軽を既製品のように個性なく一様に描いていますが、実際の足軽はずるくて、気ままで、それでいて勇敢であって臆病。昔の書物を読むと、黒澤さんの描き方が正しいと思います。
-----
足軽に限らず、いまどきの時代劇の人物描写はほんっと没個性ですね。
第一、武士も商人も百姓も武家の妻女も商家のお内儀も、同じ歩き方をしているので、噴飯ものです。
「勉強不足」の一言ですね。 (2010.08.23 22:25:15)

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西部劇ですよネ！

snowman さん

モイラ2007さん，こんばんは。御指摘の如く本作は絶対に
西部劇だと思います。主人公たち一行が敵兵から攻撃を
受けるシーンはテッポウによる銃撃だったり，馬に乗って
駆けるシーンなんか実に西部劇そのものではないかと思う
のです。ハリウッドのアクション映画のルーツは西部劇
であり，本邦においては時代劇であると思いますが，その
時代劇の中に西部劇の要素をじつに上手に生かしてしまう
黒澤監督のセンスのよさは流石です。
あ，もちろん狙われるお姫様もイイです！
なんだか出来のいい映画って褒めるトコロがアレコレあって
長くなるので，とりあえずこれにて！ (2010.08.24 00:15:08)

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Re:西部劇ですよネ！(08/22)

モイラ2007 さん

snowmanさん、こんばんは。コメントありがとうございます！
＞御指摘の如く本作は絶対に
＞西部劇だと思います。主人公たち一行が敵兵から攻撃を
＞受けるシーンはテッポウによる銃撃だったり，馬に乗って
＞駆けるシーンなんか実に西部劇そのものではないかと思う
＞のです。ハリウッドのアクション映画のルーツは西部劇
＞であり，本邦においては時代劇であると思いますが，その
＞時代劇の中に西部劇の要素をじつに上手に生かしてしまう
＞黒澤監督のセンスのよさは流石です。

まさに監督のセンスというか、才能でしょうね。
時代劇なんだけど、
多くの日本人が根っこのところでは大好きな浪花節や演歌的なものが
全く感じられないのも、また良いです。
（黒澤監督は演歌が大嫌いだったそうです）

またいつでもいらして下さい♪ (2010.08.24 21:25:23)

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