飛び散りケーキなココア難儀

飛び散りケーキなココア難儀

三 時 の 森




三 時 の 森


赤い木苺の群生。  森の外側に黄緑色に萌える低木に赤い粒が点々と浮か
   んでいた。 それだけで目を満たしてくれた。
     森の入り口にさしかかると、木々の高い枝々がアーチ状に重なり日陰をつくてい
   た。 傍らの木苺を摘んでは、手に提げた籐の茶色いバスケットのチーズやリンゴを
   奥へ少し押しやり入れた。
      森の中は、頭上のほうでさわさわと風が葉を揺らし、涼しく斑模様のひかりが身
   体の上を後ろに辿る。 一人のはじめての森を半ば、はずむように歩き、草の掛かっ
   た五十センチ程度の土の小路を進む。木々の丸い茂みを回り込んで、目に飛び込ん
   でくる白や桃色の低木花を左で押さえて、右手で水に挿す部分の細枝まで数本手折
   った。鼻先が隠れる位の花の茎を両手で持って、寄り目がちになりながら花の中心
   をじいっと見つめた後、 小さく息をふっと吐き、近づけて匂いを吸うと、とても優しい
   香りがする。  赤や紫の実なども通りすがりに数粒かごの隙間にコロコロと落とされ
   た。 緑の木々を、手で分け入って、さっきの道の先に戻りして、目的の場所まで向か
   っていく。 無事に着いたら、枝花を模様のついた綺麗な花瓶か、透明の空いた硝子
   瓶にお水を注いで挿そう。だって、花瓶が合わなくて空きが無かったら、そうやって生
   けたらいいんだもの。あの窓辺に置こうかしら。日のひかりが水にきらきらと反射して
   窓辺の壁のあちらこちらに、光がこぼれてきっと、素適だと思いました。



続 く





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