不安とプライドと自己嫌悪

不安とプライドと自己嫌悪

拒食症


その間だんだんわたしの生活はエスカレートし、食事をほとんどしなかった。
わたしは「食べて吐く」タイプではなく、ひたすら食べないタイプの拒食症だったのだ。
原因は病気。
糖尿病の疑いがあると言われたのだ。ある日。
子供のわたしにはショッキングすぎる告白だった。
更に食事制限を言い渡されるに及んで、わたしは完全に取り乱していた。
だって甘いものも揚物も大好きだったのに。
でもその日からわたしの「闘病」は始まった。
やっつけるべき病は糖尿病だった。最初のうちは。

わたしの食事制限は少しずつエスカレートして行った。
中学卒業間際にはすっかり拒食になっていた。
どうしても外食しなければならない日は、朝と夜は絶食していた。
学校でも、お昼の時間、お弁当やパンは一口しか食べなかった。
いつのころからか、「食べたら死ぬ」と思い込んでいた。

もちろん両親は気がついて、厳しくも優しくも、わたしを止めようとした。
でもわたしは「じゃあ病気が悪化して死んでもいいの!?」と言い返し、
母を泣かせたことも何度もある。
本当はもう、闘うべき病気は「拒食症」の方になっていたのに。

食べないから体力がない。エネルギー補給直後でないと歩けないのだ。
体育の授業は見学だったし、プールで泳ごうものなら教室まで歩いて帰ることもできなかった。
車椅子、の言葉が囁かれていた。
最後に体重を量ったとき。32キロ弱になっていた。
それでもそれから数ヶ月は拒食症をやっていた。

わたしは見るからにミイラか骸骨か、という感じになっていた。
当時の写真は見るのも忌まわしいので、全て燃やしてしまった。
空に還してあげるよ、悲しいわたし。
悲しくてもプライドを持って生きていたわたし。
そのプライドと不安に押しつぶされて、命まで落としそうになってしまったけれど。
あの時死ななくて良かった。
高校時代は嫌いだったから、そんな嫌いな時代の中に自分を置き去りにはできないものね。


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