NO,6










その後も警察の質問は続く。

笑っている私に恐る恐る近づいて来て、「今ちょっといいですか?」と聞かれた。
私は笑う事が止められず目で答える。
警察官があわてて走って行く。「看護婦を呼びに行ったんだ!」
とっさにそう思った。
案の定看護婦を連れて私の所に戻った警察官が
「この人おかしくなっちゃいました。さっきからずっと笑ってるだけなんです。」
看護婦 「大丈夫ですか?」
私   「大丈夫です。」
看護婦 「こっちに来て横になって下さい。」
私   「嫌です。ここにいます。お話は出来ます。ここでします。」

その場所は入れなかった部屋の扉のすぐ外側の廊下だった。
そこにある長椅子に私は座っていた。
その場所を離れたくなかった。私の居れる一番彼に近い場所に居たかった。
そのくらい許してほしかった。

そこで事故の状況説明があった。看護婦も一緒だった。

警察官 「先ず被害者の**さんは法廷速度以内の時速58kmで走っていました。
     ヘルメットはかぶっていない状態でした。多分、ぶつかった衝撃であごひもの所から
     切れたみたいです。ヘルメットの状況はこれです。
(私にヘルメットを見せる)
     それから持ち物の確認をして下さい。(彼のバッグを持って来て)
     これは**さんの物に間違いないですか?」
私   「間違いありません。」
警察官 「財布の中にあなたのこの電話番号が入っていたんですよ。これです。」

それは私が捕まらない時にどうしても私と連絡を取らなければならない時、
「家族が居ればこの電話番号で出るよ。」
と言って「念の為」に渡しておいた電話番号の紙だった。

私   「だから私の所に一番最初に連絡が来たんですね」
警察官 「ご家族にはあなたから教えてもらった番号で連絡がつきました。
     今、こちらに向かっていると思います。」
私   「そうですか。あの、すみません、バッグの中をもう一度見せて頂けないでしょうか?」
警察官 「いいですよ。」
私   「ありがとうございます。」

中を見ると昨夜書いた「婚姻届」が。
私がそれを見ていると、警察官が「これから頑張って下さいね。」

それは一体どういう意味だろうと思った。
その後は看護婦の説明。





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