NO,8






部屋について私はどんどん恐怖心が大きくなり、また寝る。
これしか一時的な現実逃避が思いつかなかった。

すると電話。時刻、8:27AM。
留守番電話になっていた。私はそのまま電話を取らなかった。
すると、聞き慣れた声が、、、。**のお父さんからだった。
一瞬**と間違えるくらいのよく似た声。

「せがれが、、、**が死んだ。今家に帰って来た。
ここで88keysが来るのをあいつ待ってるぞ。早く来い。」

打たれた。悲しかった。でも、不思議と涙は出ない。
彼は私の隣で寝ている様な、そんな感じがしていた。
なんだか、心と身体が別々になった様な感じがしていた。

その日私は高校時代の友達と彼と三人で遊ぶ約束をしていた。
彼女に電話。
彼女は急いで飛んでくる。きっと凄く心配したんだろう。
コンビニでおにぎりやら何やら食べ物をたくさん買って来たらしい。
大荷物でやって来た。
「大丈夫?」「大丈夫」そんな会話が交わされた。

弟が仕事先から心配して早く帰って来た。
「お姉ちゃん平気?」「平気」

三人で黙って夕方6:00を迎えようとしていた。
そこへ電話。**のお父さんである。
弟が電話に出る。電話が終わる。
「お姉ちゃん、早く行った方がいいよ。みんな待ってるみたいだよ。」
「分かってる。」

でも、**の家族や人に会うのが怖かった。
それでも私達は**の家に出掛けて行った。

そこには朝元気に話していた**が、冷たくなってドライアイスに囲まれ固くなっていた。
髪の毛の艶も無くなっている。今にも抜け落ちそうだった。
その髪の毛を撫でると、私の目にはうっすらと涙が浮かんで来た。
「どうして、こんなんなっちゃったんだろう。」そう口に出して言ったとたん周りの人たちが
一斉に泣き出した。その瞬間私は「ここでは泣いちゃいけないんだ。」
何となくそんな気がした。

それから告別式が来るまで**の家族のお願いで、**の家に世話になった。

告別式の日が来るまでに用意をしなければならない事があった。
**のお母さんは**が亡くなったショックで病院に運ばれていた。
その病院から戻ってくると、私を連れて買い物に出掛けた。私の喪服を買ってくれた。
「本当はもっともっと色々違う物を買ってあげたかったんだけど。」
と言っては涙を流す**の母。
何も答えず、背中をさすってあげる私。

そんな事が続き告別式の日がやって来た。
この日は寒かった。
その時私が親族の席に座るか、一般の席に座るかと言った事が彼の親類の間で問題になっていた。
最終的に私は親族の席に座るのを断った。私が親族でない事は事実なんだから。
でも、もし後一日ずれていたら私が喪主をしていたんだと思うと彼を遠い人の様に思えた。

火葬されて、すっかり小さくなった**。不思議だった。人ってあっけないと思った。
火葬場には彼の両親は来れず、代わりに私が中心となった。不思議と落ち着いていた。


その後,一人で彼が買ってくれた指輪を取りに行き、
二人で借りたばかりの部屋をはじめ、全ての物をキャンセルしなければならなかった。

これで一段落した。














© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: