愛すべきものすべてに

マトリックス

「マトリックス」はオレがシリーズ作品全てを劇場で観た、数少ない作品のうちの一つである。
大方のシリーズものは、続編やパート２などと謳っていてもエピソード的には直接つながりのないものが多いが、
この作品は３本を順に観ていかないとストーリーが完結しないしくみになっている。
（厳密には「アニマトリックス」やプレステ２ソフト「ENTER THE MATRIX」内のストーリー群がそこにリンクしていたりするが。）

かの松本人志氏は著書「シネマ坊主」の中で第１作を評して「わからない」「理解できない」と書いているが、
わからなくてイイのである。理解できなくて当然なのである。
いや、これだけ難解な話がすんなりと理解できるハズがない。
おそらくは監督であるウォシャウスキー兄弟でさえも説明できない部分があると思われるし。
そういった意味では、作品の方で全てを理解される事を拒否していると言ってもいいのかもしれない。
（ホントはそういった言い回しって、あんま好きじゃないんだけどね。）

実際に映画館で観る場合、家でＤＶＤやビデオを観ている時とは違い「アレ？今の何だった？」なんて思っても
当然プレイバックなどできない。って言うか、してくれない。
細かな疑問や見逃しは解決されないままスクリーン上のストーリーは進んでゆき、そして否応無くラストを迎えるのだ。

以前テレビで興味深い実験をやっていた。
“あぁオモシロかった”と劇場を出てきた人達に今観たばかりの映画のストーリーを語らせる、というものである。
ほとんどの人が説明ができなかった。たった一度観ただけなのだから当然である。
説明できた人はおそらく予備知識があったか、パンフレット等で復習したかのどちらかであろう。

そう、映画を楽しむのに何もストーリーの全てを把握する必要などないのだ。
とくに「マトリックス」のようなアクション映画というものは大筋さえつかんでいれば、
後は怒涛のごとくやってくる戦いの場面を、流れに身を任せるようにして楽しんでしまうというのが
正しい鑑賞法なのではないだろうか。

そう思って観れば「ストーリーが複雑難解でよくわからない」なんて敬遠している人達でもシンプルに
この作品を楽しめると思うぞ、きっと。
だって大抵は場面場面は憶えてても、結局細かいストーリーなんて誰も憶えちゃいないんだから。
もちろんマニアックにエピソードを掘り下げてみたい、なんて人にはとことんハマっていける世界って要素も
この作品にはあり過ぎるほどありますがね♪