milkyの心のままに独り言

ショートストーリー 創作の世界



それは誰もが知ってる

大きな1本の木‥愛称で、ベルの木と呼ばれてる

おじーちゃんも、父さんも、ベルの木に登り

朝から日暮れの頃まで、色んな話をしたらしい

今の僕がそうであるように、小枝に腰掛けて

笑ったり、泣いたり、毎日、話してる

大親友のエマと一緒にね

ベルの木からは、この村がずーっと見渡せるんだ

エマがすごい必死な顔をして、ベルの木を目指して

走ってくるのもよく見える

そして、僕は手を振るんだ‥そんなエマに向かってさ

そうそう!このベルの木には、風の通り道の扉があって

僕達は、その扉が開いたり、閉じたりするのを

何度も見ている‥

でも、何故だか、ベルの木に登っているはずの

おじーちゃんと、父さんは、その話をすると

夢でも見たのか?と笑うんだ

ベルの木の葉が、ゆさゆさと揺れて

扉をノックするみたいにすると

パーと扉が開いて、キラキラの光の間を

風が抜けて行く

エマが亡くなったママの思い出話をして

ちょっと涙声になった時や

僕が、少し寂しい時

風の通り道の扉は開く

木の葉がゆさゆさって揺れだして

エマはママの子守唄を聞いてるみたいに

その風の中で居眠りを始める

そして、僕はそんなエマの横で

エマの寝息を聞きながら

なんだか、ちょっぴり大人になった気持ちになって

だって、僕は男だからさ

エマを守ってやらなくっちゃって思うんだよ

エマと2人で並んで見ている大きな夕日

ベルの木も、真っ赤に染まる

また明日と、振り返ると

ベルの木の風の扉も静かに閉まり

そろそろ帰る時間だよって‥教えてくれる気がするんだ

おじーちゃんと、父さんは笑うけど

僕は夢なんか‥見てないよ(笑)


BY。Milky



窓辺のメアリー

窓辺に置いてある白いロッキングチェア―

いつも、メアリーが腰掛けていた

春には草花を眺め

夏には香る緑を眺め

秋には編物の手を動かし

冬には読書に夢中になっていた

メアリーのお気に入りの場所だった

メアリーは笑うと、とてもチャーミングで

人を笑わせるのも得意だった

1枚の写真を取り出し

これ誰だかわかる?

何を隠そう、私なのよ

今じゃ、こんなおばぁちゃんだけど

私にも、こんな時があってね

と‥その写真は、3歳ぐらいのメアリーが写っていて

みんな大笑い

洒落たジョークは愛らしくもあった

愛用のマグカップにカフェオレを入れ

それを持ったまま居眠りをした時

カフェオレが減ってるのだけど

どうやって誰が飲んだのか!解る?

きっと長いストローを持った人よ!

アッハハ♪メアリーは笑いながらそう言って

その時も、噴出してしまう程‥可笑しかった

彼女が天に召される少し前

いつものように、笑顔でこんな事を言っていた

そろそろ時間なの

えっ?何の時間

今朝、窓辺に青い鳥がやってきて

どうも、私の祖先は鳥だったらしいのだけど

つまり、私も人間の姿をした鳥‥本当に驚いたわ

それでね‥そろそろ鳥の姿に戻る時間がきたと言われたの

メアリー!そんなジョークは、やめてよ

違うのよ‥今日のはジョークじゃなくて本当の事なのよ

だから、明日は鳥の姿になってしまうかも知れないの‥

その次の朝、メアリーは静かに眠ったように

天に召されていったのだけど

その日以来、青い鳥がやってくるようになった

窓から見える、大きな1本の木の枝で

その鳥は夕暮れまで‥可愛い声でさえずり

空が茜色に染まる頃、森へと帰っていく

もしかして、メアリーは本当に鳥になったのか?

それを確かめる方法はないけれど

主を亡くしたロッキングチェア―は

今日も青い鳥がやっくるのを待っている


By。Milky・:*:♪・゚'★ '・:*☆'*:・'


ベルの木に続いて、2作目ですが

今後も、こんなショートストーリを綴ってみたいと

思います。

前回の、ベルの木は‥大人になると忘れしまう

色んな想いを風の扉に託しました

いつまでも、子供のままでは居られないけど

誰もが持っていたもの!もう1度取り戻せたら

素敵だと思います。


終わり



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