入院安静生活（8Ｗ～
入院安静生活（8Ｗ～13Ｗ）「なぜ安静にするのか」
最初安静を言い渡され、病棟のベッドに入ったときはまだことの
重大さがよくつかめていなかった私。
つわりがない上に、これといった痛みもなく、身体が動いてしま
うために、絶対安静の意味もよくわからず、看護婦さんがいなくな
ったと同時にベッドから出て、電話をかけに行った。
実家と、仕事先の先輩に電話をかけて、ひとしきりしゃべる。そ
のうち背後に人の気配を感じて振り返ったら、看護婦さんが怖い顔
をして立っている。
「絶対安静ですよね。ベッドに戻ってください。電話かけたい時は、
呼んでくれれば 車いす 出しますから」
車椅子？ そんな、 病室から電話まで５メートル
くらい しかないのに大げさな……。最初は、そう思った。
自分は、絶対安静の生活なんてしたことがない。だからなまじ身体
が動くのに、看護婦さんを呼んでちょっとしたことを頼むのが申し訳
ないと思っていた。
しかし、何のための入院か？ 何のための絶対安静か？
ということを考えていなかった。
入院して、何もしないことは私のタメじゃなく、 赤ちゃんの為 なのだ。
今、根付いたばかりの命は子宮の壁から、無理矢理ひきはがされそうに
なって、必至で血を流しながらしがみついているというのに、自分が
動けるからといって気づかずに私が動き回るたび、その振動が確実に
赤ちゃんの小さな根を根本から揺すっていたのだ。揺すられるたびに、
赤ちゃんと私をつなぐ細い根っこからは血が流れ、子宮内は真っ赤に
そまったおりものがつまり、身体はそれらを不要物とみなして、赤ちゃん
ごと外にひっぱり出す準備をしていた。
それがわかるのに、３日かかった。入院して初めての診療で、どん
どん悪化する子宮内の状況に、担当の先生が激怒した。
「あなたは安静の意味がわかってない」
これ以上、歩いたり起きていたりすると、本当に保証できませんよ
と言われる。どのくらい危険な状態なのか、もうここまできたら運です、
っていうくらいになっていた。
８週という早期の段階では、赤ちゃんに与える影響のことを考えると
強い薬がだせない。出血の原因もつかめていないが、とりあえず流れ
そうになっているのは事実だった。
先生の話では、そうした段階では、とにかく身体を動かさず、全身
の力を子宮に注ぎ、時間をかけて治癒を待つしかないとのこと。
私は、長くても３～４日で退院できるものと思っていたし、先生が
予想外の長期戦を構えているのを知ってびっくりした。
先生が求めている絶対安静とは何なのか、よくわからなかったから
正直に聞いた。
「絶対安静の意味」
安静の意味は人によって違う。特に妊娠の場合、色々なケースがある
ので 一概には言えない が、私が先生に厳しく言い渡された「絶対安静」
とは、以下のようなことだった。
・歩行禁止。もちろん食事の上げ下げ禁止。
手に物を捧げ持つ姿勢は腹筋を使うので絶対禁止。
・仰向け寝は避ける。右向きか左向き、あるいはうつぶせに。
・座るのも禁止。要するに、背中をベッドから離してはいけない。
24時間のうち、背中が離れる時間を1時間以内におさえる。
（数回のトイレ、食事のみ起きあがってよい）
座って本を読むとかはしてはいけない。
・お風呂、シャワー、もちろん禁止。
私よりももっとひどい人は、トイレも禁止で、管を入れて用を足す
ことになる。先生は「本当はそうしたいけど、それだとあなたが辛い
だろうから、トイレだけ行ってもいいよ」と親切で言ってくれたのだった
が、それも後から聞いたこと。トイレがいいなら、電話やお茶を取り
に行くことくらい、してもいいだろうと思っていた愚かな自分だった。
しかし２回目の内診で悪化していることがわかり、先生にこんこんと
説明をされてからは、マジメに安静に取り組むこととなった。しかし、
一番重度の安静よりまだマシとはいいながら、なまじ身体が動いてしま
う上につわりのない自分にとってはこれだけの制限は 拷問 に近かった。
ひたすら、横になったままテレビを見る。起きあがることが禁止なの
で、隣のベッドの人と話すのも寝たままだ。
一日中、寝ているから体力が余って、９時の消灯後も寝られず、夜が
恐ろしく長かった。大部屋では遅くとも10時にはすべての電気が消える
ので、暗い天井を見つめてまんじりと朝を迎える。
昼間は昼間で、本を読むにも座ることができないので、寝ながら手が
重くて上がらなくなるまで本を読んだ。
そのうち三度の 食事だけがものすごく楽しみ になってしまい、毎日
食事日記をつけた。動かないから、どんどん 太った 。
身体は清拭タオルで拭けても、頭が洗えないのが辛かった。
毎日病室に往診にくる先生も、他の患者さんには心音を聞いたり、
点滴の調子をみたりと声をかけるけど、私は何もすることがないから、
安静にしててね、の一言で去っていく。
おそろしく 退屈 で、ただ時間だけが過ぎて
いく生活が13日間続いた。最初はなかなか血が止まらなくて、トイレ
にいくたびに流れる血に、「こんなに安静にしてるのに」と泣きそう
になった。先生も「こういうのは、時間がかかるんです。外で出血が
止まったように見えても、子宮の中で出血していることは多い。少なく
とも10日はかかるから、大人しくね」と言う。
よくなってる感触もつかめず、いつ退院できるかもわからないまま、
ただ入院費だけが膨らんでいった。医療保険にも入っていなかったから、
赤ちゃんも心配だけど、経済的にも心配だった。
８日過ぎたころ、ようやく外側の出血が止まった。
でも、先生は慎重だった。
内診すると、手袋が真っ赤になる。
「中では、まだ出血してます」
そうして、さらに4日。３度目の内診で、なんとか出血が止まったよう
だから退院できることになった。哀願するように退院させてくださいと
頼んだし。
退院が決まった夜、ダーリンに報告の電話をし、迎えにきてくれるよう
メールをした後、トイレに行ったら、またうっすらと血が出ているような
気がした。
でも、そのときはもうこれ以上ガマンできないと思った。
それで、次の日、そのことを黙ったまま、退院した。
結果、やはり 完治していなかった 。
そして退院後、わずか ４日 で私はまた病院に戻った。
４日間、悪化していく様子が手に取るようにわかった。今思うと、
あんな状態で再入院したのに、よく助かってくれた、と思う。
後で、同室になった患者さんから言われた。
「よほど赤ちゃんの生命力が強かったんだね」
頑張ったのは、赤ちゃんで、私はちっとも協力してあげなかった。
これを書いている現在は34週、９ヶ月も後半だ。
あれほど、かよわかった赤ちゃんも今は元気に動き回っているし、
33週になって性別も男の子と判明。
スイカみたいに固くまーるく膨らんだお腹に、感謝する。
よく頑張ってくれたね！
何度も苦しい思いをさせちゃって、本当にごめんね。
産まれて、大きくなって、これを読んだら怒るかな。
本当に、 妊娠初期の安静は大事 。最初が肝心なら、こんなに長い入院を
する必要もなかったはず。
結局、２回あわせて一ヶ月近く、分娩と同じくらいの費用がかかり
ました。その間、ダーリンは一日も欠かさず病院に来てくれた。
大部屋で他の患者さんたちから「さすが新婚、ヒューヒュー(*^-^*)」
と、からかわれるくらい（笑）。うひょ～っ、でも ありがたかった です♪
本当にみんなに迷惑かけちゃって、自分の 無自覚と無責任さを痛感 した。
その後、実は安定期に入ってから再度１週間の入院があったけど、
それは動きすぎの原因不明の痛みによる入院。
とにかく、あまりに色々ありすぎてなんだか妊娠てものすごく大変な
ような印象をダーリンがもってしまった(^^;。二人目、三人目の妊婦さん
だと、上のお子さんたちの世話もあるからなかなか初期の安静が保てず、
入院しているお母さんも多かったけど、 初産からこんなにドタバタしてる
ヤツも珍しい のかも～。
ごめんなさい、マタニティライフをとんでもなく大変にしているの
は自分です。
せめて、産むときはすんなり、パパや赤ちゃんに迷惑かけないよう頑張るね。
……といいつつ、今日はお腹が張るぅ……。
【参考】 ○切迫流産・私の場合（悪化の過程）
○三度目の入院（経過と症状）
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