第14回 早坂茂三さんの遺言 その7

早坂茂三さんの遺言 7   茶目っ気な早坂さん

 白川荘の広間は数々の料理と熱燗によってすっかり暖かくなっていました。どんどん出てくる料理の数々とその量の多さに驚く私たちでした。

 支配人の伊東さんは珍しく女性の支配人です。伊東支配人の気の利くことに感激した相澤嘉久治さんはすっかりこの白川荘の常連になっていました。

「いかがですか?お肉も美味しいし、山菜料理もなかなかでしょう」と相澤さんは早坂茂三さんに感想を求めます。

「うん、旨い。第三セクターと云うから心配していたが、なかなかなものだ」と早坂さんがほめていたところへ、伊東支配人が今度はヤマメを持って来ました。串に刺されたヤマメを火鉢に縦にさしていくのでした。

 それを見た早坂さんはちょっとばかり呆れた顔をして「おいおい、こんな年寄りにどんどん食べさせようっていうのかい?もう食べられないよ~」と言いました。

 伊東支配人が笑いながら「ペロ~ッと平らげていく方も多いんですよ」と言って大広間を去りました。すると早坂さんは「もう少し量を少なくすることで、旨さを確認しながら食べられるのになあ」と茶目っ気たっぷりに言うのでみんなは大笑いでした。

 政治談義もひととおり落ち着き、早坂さんは私と新関寧さんへ話を向けてきました。
「さあ、遠慮することはないよ。こんな機会だから私に何でも訊いてくれ」と早坂さんが言いました。

 さすがの新関さんも喉をゴクンと鳴らしました。私たちは緊張していました。

つづく

 2004年9月12日記


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