オーストラリアでは、12~18歳の高等部学校が対象となった調査で(Rigby&Slee 1999)、フィンランドでは、14~16歳の高等部学校の生徒が対象となった調査で(Kaltiala-Heino et al., 2000)。それぞれ、検討された結果によると、いじめ被害・いじめ加害者の両方に、高い自殺願望が見られた。元来は、イジメと心理的症状との関係を検討した多くの研究者が、イジメ被害者に焦点を置き、その被害者と精神的不健康をとの有意な関係を訴えてきたが、イジメ加害者にも自殺願望などのような心理的症状が強く見られるという結果を報告する研究が出てきている。
「孤独感とイジメの関係」 アメリカのナンセルらの調査(6年生~10年生の15686人を対象)では、イジメ被害経験者、いじめ被害。加害両方の経験順に、強い孤独感を示した(Nancel et al., 2001)
「イジメと抑鬱的傾向との関係」 フィンランドでは、カルティアラが(Kaltiala-Heino et al 1999:Kaltiala-Heino et at 2000)、イジメ・いじめられ経験と様々な心理的・身体的症状と関連を検討する研究を進めている。その中で、高等部学校の8年・9年生(14~16歳)を対象に行われた1997年度の調査(参加者17643人)によると、抑鬱傾向との関係が最も高く、中でも、イジメ・いじめられの両方の経験がある生徒が最も強い抑鬱傾向を示した。アメリカでは、ヘイニーら(Haynie et al 2001)の行った調査(中等学校生4263人)で、イジメ被害・加害者両方の経験ある生徒が、抑鬱傾向が最も強いという結果が得られた。以上のように、イジメ被害者だけではなく、イジメ被害・加害者両方の経験ある子ども達にも、強い抑鬱傾向がみられた。