Blue kiss

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風呂屋でデトックス

風呂屋でデトックス


帰宅したのは21:00

とても憂鬱なことがあったわたしは
心がダヨーんとしたまま帰って来てしまって
家の扉を開けると

開け放された台所の向こうの
その向こうの部屋で
Riiがパソコン叩いているのが見えた。

「ただいまぁ・・・」
返事が無い。

「たぁだいまぁー!」靴をぬぎながら叫んだら
Riiが椅子ごとのけぞってこっちを見て
「あーおかえりー!」と答えた。

いつもSaaに占領されている
我が家に1台しかないノートパソコンで、
久しぶりにRiiは小説の続きを執筆している。
Riiはフリーターだが文芸クリエーターでもある。

Riiと会うのは36時間ぶりだ。
昨日の早朝6時に出かけて一昼夜
大好きな仲間と派手なバーベキュー大会を
楽しんで来たので、リフレッシュされて
いるようだ。

ダヨーんとしたわたしは
時計を見ながらダラダラと服を脱ぎ
「面白かった?バーベキュー。」と平たく声をかける。
「うん。サイコーだったよ!」
Riiは背中で答えてカタカタとキーを押している。

Saaはまだか・・・
ふと思いついた。

そうだ。風呂屋へ行こう。

自宅マンションの並び5軒目に銭湯があるのだ。
今風にジェットバスやサウナや露天風呂が備わった
こじんまりとしているが清潔で居心地の良い銭湯。

RiiとSaaとわたしの3人で行く時もあれば
バラバラに行く時もある。
1回420円だが、カラダと心への貢献度を考えると
安いものだよ。


「Rii。ママ風呂行ってくる。」
わたしはシャンプーやタオルを袋に詰め込むと
部屋を横切って時計や指輪やネックレスを
テーブルの上に置いた。

「えっ?そう?いってらっしゃい・・・」
Riiはわたしの鬱々モードに敏感に反応してる。
それ以上なにも突っ込んでこなかった。


あぁぁぁぁ~~!どっか行きてぇ!
心の中で叫びながらエレベーターを降りると
前のめりでどんどんと歩き、風呂屋に向かう。


下町の上品なおばちゃんたちで
和やかな会話が響く広い風呂の湯につかって
わたしは天井を仰ぎ見た。
背中に泡が心地よく当たってる。

ぼーっとした目が天井の梁をなぞる。
行ったり来たりしていると
なんだか眠くなってきた。

露天風呂に行かねば。

露天風呂といっても、庭に面した内風呂みたいな
風呂だが、人がいないと独り芝居が出来るほど
風情のある空間なので、感情を吐露するには
絶好の場所なのである。

ラッキー。誰もいない。

わたしは独り言を言い始める。
「なぜ?どうしてこんなに収められないの?
わたしは、一体何をどうして欲しいの?
あぁ・・わたしの中のわたしの神様、どうか
この心の底に潜在する私自身と会話をさせてください・・・」

その時の会話や、飲み込んでしまった思いを
声を出して語りはじめること数分。
お湯の中で仰向けに大の字になって目を閉じる

来た・・・
身に起こった出来事がプロセスが
ぐるぐると出てきて出せなかった感情が
再生されてリアルに沸きあがって来た。

ううぅっ! 嗚咽と共に涙がドンドコ溢れ出る。
うぅううううう・・・っ 
泣きながらお湯で何度も顔をぬぐう。

あぁぁぁぁ・・・!思いっきり顔を歪めて泣く。
泣くこと5分あまり。

お湯の温度は結構熱いし、本気で泣くから
頭に血が上るしで、またたくまにわたしの脳みそは
のぼせ状態。お湯から上がって休憩用縁台に
ドサッとすわると  眩暈で部屋がまわる。

休憩室のテレビで「嫌われ松子の一生」第2話が
クライマックスを迎えていた。
内山理名が「ぎゃぁ~~~!やだぁ~~!」とかなんとか
叫んでいる。

扉を全開にして風を受けたわたしの頭部の熱は
急速冷却されてすっかりリフレッシュ

何も解決してないのに、スッキリする単純な脳みそ。

今日のデトックスはこれで完了だ。
この気分のまま
帰宅したらRiiやSaaに意見を聞こう。




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