Blue kiss

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架空の現実

架空の現実



「山路」のカウンターはいつの間にか満席になっていた。
カズキと飲み始めて2時間になる。
お互いの仕事の近況やら、現場の問題やらを
なんとなく話しながら、途中からどうでもよくなった。

一緒に仕事をしていた時は、良く反省会になったものだ。
人間関係や段取りや、わたしへのダメ出し発言で
激論になったが、夢中になれた。
今は向こうのことにあまり興味はなくなった。

環境が変わると全てが変わるというのは
本当だと思う。
あのころチームを組んでいた仲間は
お互いに自分たちにとって
最高のテンションをもたらしてくれた。


能力をフルに発揮出来る環境に
それぞれがいて、どんな問題が起きても
「解決できないもの」などなかった。
常に厳しさがあり、
常に笑いがあり、
そして常に思いやりがあった。

未来に続く仕事とは、何だろう。
きっとそれは仕事の中身ではなくて
誰と共にそこにいるかにかかっているのだ。

そこに情熱や希望が沸いてくる。
そんな時代がまたいつか
来るのだろうか?

カズキやわたしや仲間が
同じ時間を共有していた輝いていたあの頃。

出来ればずっとあのままが続いて欲しかった。

でももう、過去の話だ。
わたしが辞めたあの時、チームも解体した。


「これからどうする?」
カズキがわたしの膝に手を置いた。
あぁ、まずい。フェロモン放出の眼差しだ。
わたしが一番弱いカズキのこの表情。

俺はどっちでもいいけど、
おまえ、我慢できる?
・・・そんな無言のセリフがそこにある。

時計は8時半を過ぎたところだ。
「ん・・・」
わたしが一瞬、エロい気持ちになった時

「もう一軒行こうか。」
とカズキは置いた手のひらで
ポンとわたしの太ももを叩いた。

何なんだ、コイツは?!
悔しい。

今の一瞬のやりとりで
わたしは一気に顔に赤みが増してしまった。
まんまとカズキの期待に応えてしまった。

「いいよ。何処へ?」わたしはフツウに答えたが
勘定を払うために立ち上がったカズキの背中が
余裕をかましていることが
憎らしかった。


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