じゃじゃのめ

じゃじゃのめ

木男


木彫りの
おとこが
いました

肌は
赤茶けて
ひからびて

腕は
ごつごつで
細くて
まっすぐで

遠くの国から
来たようでした


木彫りの
おとこは
桜と雪が
見たいんでした

木彫りの
おとこは
もう
何年も
ここに
いるんでした

木彫りの
おとこは
もう
何回も
桜も雪も
見たんでした


ここに
来たばかりの頃は

木彫りの
おとこは
桜も
雪も
大好きだったんでした


けれど
最近
目の
調子が
悪いんでした

それは
目玉の代わりに
はめられた
ガラス玉の調子が
どうにも
悪いんでした

そして
それを
直してくれる人は
誰も
いないんでした


それでも
木彫りの
おとこは
帰ることを
忘れてるんでした

帰り方も
忘れて
るんでした


木彫りの
おとこは
もう
前ほどは
桜も
雪も
好きじゃないんでした

だって
目玉が
曇って
るんですから

そんなに
きれいには
見えな
いんでした


木彫りの
おとこは
いつも
だまされ
るんでした

だって
木彫りだから

だけど
何でも
美しくって

だけど
みんな
優しくって

そいで
自分も
嬉しいから
平気なんだ

って
思いた
いんでした


木彫りの
おとこの
目玉の代わりの
ガラス玉は
もう
そんなに
きれいじゃ

いんでした

だけど

こないだの



おとこは
とうとう
見たんでした

ほんとは
ずうっと
まえから
見えて
るんでした

けれど
ずうっと
気づかない
ように
して
るんでした

桜の花の
まきおこす
ふわふわぴんくの
視界の中で

雪の
積もった
びかびかまぶしい
視界の中で

その
ずうっと
ずうっと
向こうの方で
誰かが
ずうっと
おいでおいでを
してるのを

こないだの

こないだの


おとこは
とうとう
見えたんでした

曇った
ガラス玉の
視界の
向こうに


それは
かあさんなんでした

遠くの
国に
いるはずの
ぼくとおんなじ
顔をした

かあさんが
ぼくを
ずうっと
呼んでいるんでした

ぼくは

気づい
たんでした

かあさんは
今にも
消えそうなんでした

ぼくは
急に
帰りた
くなっ
たんでした

帰り方も
分からないけど

かあさんが
待ってるかも
知れな
いんでした

やさしい
かあさんが

jaaja


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