雨のちハンターだまり♪

雨のちハンターだまり♪

”飛竜の力”



そして強固で、堅岩である。

彼等と渡り合うならば

それなりの覚悟というモノを持った方がいい。

その形が、死であれ生であれ。
【王立図書館 古代文化図書棚第1列”スワン・ノベルツ記述の書”】
(本の名は不明)


戦いは、やはり絶望的だった。

突如として現れた黒い巨塊の大きさは、
人間の比ではなかった。

(でかすぎる・・・・・。)
ミズキの体に、想像を超えた恐怖が走る。
目の前の黒塊は、ゆっくりと首をあげてこちらを見ている。
---まるで目の前の獲物を品定めするかのように。

「みんな!私に続けーーー!!」
「「「「オォォォォオオオオ!!」」」」

一斉の怒号とともに、騎士団全員が束になってかかっていった。

---グラビモスは、その勢いに動けないでいる。
  かに見えた。

最前兵との距離が10mとなったところで、
グラビモスが突撃を始めた。
「何!?」
「ウワアァァアアア!!」

最後列の兵まで走りきったグラビモスをよけきれた兵は20名弱。
残りはけがを負っているか、直撃を受けて黒塊の体にへしゃげついている。

隊全員に再び恐怖が走る。


と、その時。
グラビモスの目が苦しそうに閉じられた。
それとほぼ同時に、ミズキが声を上げた。
「脚をねらえー!!」

先の刹那。エドガーが決めた一撃は、
突撃で姿勢の崩れたグラビモスの脚部に当たっていた。
それに対する反応を、ミズキは見逃さなかった。

(今までだって、こうやってやってきた。
         今回だって行けるはずだ!!)

号令を受けて、特攻を書ける騎士達。
王立騎士団御用達の鋼の剣が、黒塊の脚に傷を刻んでいく。

そしてついに、脚へのダメージが最高に達した。
こらえきれずに倒れ込むグラビモス。
何人かは巻き込まれてつぶされたが、
残りの兵は再度攻撃をかけるために中間距離を保って周りを取り囲む。

「王への忠誠をこの剣に!」
王立騎士団の、決め台詞とでも言おうか。
ミズキは高らかにそう叫ぶと、全兵に突撃の合図を出した。
「「「王への忠誠をこの剣に!!」」」

突撃する騎士達。
ミズキに、少しの安堵感が出始めた。
----その時だった。

黒塊は倒れたまま首をもたげて、迫り来る騎士にねらいを定めた。
(何か来る!)
直感的にそう感じたミズキは、ふせろ!と叫んだ。
遅かった。
何もかもが遅すぎた。
「危ないッ!!」

一瞬目の前が赤くなって、悲鳴が聞こえた。
そのあとは、驚くほど静かだった。
死んだのだと思ったが、なぜか臭いがする。
----肉の焦げた臭いが。

おそるおそる顔を上げるとそこには、、、
「エドガーさん!!?」
信じたくない光景だった。
返事のないまま倒れてきた彼は、正面から一撃を受けたらしい
もはや顔と呼べるモノの原型がない。
その顔のどこからか、声がした。
「い・・・・き・・・・」
「喋っちゃダメです!」
ミズキがそういうと、彼は首にかけていた物を差し出した
「これを、おま・・・に」

彼の手渡したのは、先の攻撃の傷など何処にも見あたらない
綺麗なシルバーのロケットだった。    ロケット=(鎖で首に掛ける装身具
                              中に写真などが入る)
「ミズキ・・・・」
「はい・・・!!」
「幸せだった・・・・・・・」
そういうと、眠るように静かに目を閉じた。
彼はもう二度と、目を開ける事はなかった。
その時、過去の記憶がよみがえった。

暗い路地、誰にも認められずにさまよっていた。
ただ認めてほしかった。ただ側にいてほしかった。
ただ---愛してほしかった。

あの時、涙は枯れたはずだった。
彼と会ったとき、もう泣かないと決めたはずだった。
気付いたときミズキは、声も上げずに泣いていた。
しかし、泣いていられる状況ではなかった。
----殺してやる。
    殺してやる!!
心でそう叫び、ミズキは剣を握る。
目の前で起きあがった黒塊をにらみつけた。
ちょうどその瞬間だった。

バヒュ!ザン!
どこからかの爆音、噴火の音ではなかった。
ミズキが反応し終わる前に、グラビモスの頭部に強烈な爆発が起こる。
突然の攻撃にとまどうグラビモス、攻撃の主は見あたらない。

「こっちだ、デカブツ!」
黒塊の足下に、人影が見えた。
自らの存在をアピールし、おびき寄せようとしている。
応戦の構えを見せたグラビモス。

その背後には、また2つの人影があった。
「スキ見せちゃぁ・・・」
「ダメでしょ!!」

一斉の挟撃はグラビモスの尻尾に深々と食い込み、そのまま切断してしまった。
体のバランスを崩し前に倒れるグラビモス。
その眼前にはさっき囮になった男がいた。
「チェックメイトだ!!」

彼は背中から一対の蒼剣を取り出すと
顔面の一番柔らかい部分。
---そう、目に突き刺した。

グォォォォォォォォオオオオオ!
雄叫びとも悲鳴ともつかぬ声をあげ、暴れ回る黒塊をあざ笑うかのように
その男は引き抜いた双剣で続けて斬撃を繰り出す。

ー序章 ”栄光と呼び名”へ続くー


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