☆☆☆誠意って・・・？
これがＲＹＵをこんな姿にした子の両親の言葉だ。
私達は相手の両親と 何度か話し合いをした。
その度にこの言葉を頻繁に繰り返していた。
一番最初はまだＲＹＵが事故に遭って間もない頃だった。
私達は病院に泊り込んでいたので 家族室という所で
話をした。相手側が個人賠償の保険に入っているという事で
とにかく病院代だけはそちらでお願いしますと伝えたがすぐに返事はない。
「誠意はあるが 家だけが悪いわけじゃない」と言う。
どこからそんな言葉が出るの？
状況が分かって言ってるの？
これが私達の素直な感想だった。
それからも２ヵ月後ぐらいに話し合いを持ったが その前に無料の
弁護士相談に行ったらしく「過失割合というのがあるから家が
全部悪いわけではないし 加害者ではない。ただ怪我をした方を
被害者というだけ」ととんでもない事を言う。
私達が「お宅の息子さんに押されなかったらこんな事にはなっていないんですよ」と言っても
「誠意はあるが保険以外の対応はできない」と言う。
「加害者ではない」という言葉に私は切れた。
過失割合があるのは私も知っていた。
こちらも弁護士を入れる準備をしていたし
私はない頭ながら法律の本を読み漁りある程度の知識を身につけはじめていた。
でもそれは民事で争った場合に初めて出てくる事である。
同じ年の息子を持っているとはいえ 相手の両親は私達夫婦より一回り以上年上である。
もう少し常識的な話し合いは出来ないのか・・
次の日病院へＲＹＵの話を聞く為に来ていた担当の刑事さんに聞いた。
「相手側に加害者ではないと言われた」と・・
すると刑事さんは「この件は車の事故でも、ただの事故でもなく事件なので、現時点で
そういうのが出るのはおかしいしそれは民事裁判での事で、重過失傷害罪で検察に
書類が行き家裁で今からＡ君の非行歴などを調べ、審判が下るのですから間違いなく
お宅が被害者で、相手側が加害者ですよ」と呆れていた。
その後電話で相手側と話した時に言ってはみたものの理解できないようだった。
この時点で私達が相手側に要求していた事は入院費用である。
第三者行為にせず 社保を使うので病院代を見て欲しいと・・
本当だったら初めから第三者行為にしても良かったのだが
保険を使わなければ 入院費が初めの一ヶ月で５００万円を超えていた。
それを保険を使い１００万強にし それから高額医療をつかったので
３０万ぐらいになったのだ。
私達は好意で保険、高額医療を使った。
相手側も家と同じサラリーマンの家庭だったからだ。
それを説明しても理解しない。
とにかくないお金は払えないと言う。
「それなら個人賠償の保険から降りるように働きかけて下さい」としかいいようがない。
でも相手側の言った言葉は「一体お宅はいくら欲しいんですか？」だった。
これには主人も切れた。
「ＲＹＵが今まだ死ぬか生きるかで頑張っている！この先治療次第で
どうなるかもわからないし（まだ車椅子になると知らなかった）後遺症も確定してない。
ＲＹＵが元の体に戻るなら慰謝料とかも考えてないし金の事など
今考えられない！！」と・・・
私達夫婦はまともに仕事にいけない状態であったし
家に残している子供達とも二重生活を強いられていた。
入院費は相手側に払ってもらわないと生活が出来ないし
また子供がよその子を怪我させれば親が払って当たり前だと思った。
「わかりました。家も今の状態で入院費は払えないので
保険診療をやめて第三者行為に切り替えます。
退院後そちらへ社会保険事務所の方から全額請求が行きますから
よろしく」と話を切った。
相手側はそれから慌てたようであちらこちらに相談したらしい。
この話し合いをするまで 電話でも何度も話し、時に相手側は
居留守を使ったり 折り返しの電話もかけてこない事が多かった。
「払えない、お金がない」の一点張りだった為私が切れて
「私が逆の立場なら自宅を売り払ってでも相手に償いをします！」
と言えばどこをどう聞き間違うのか「お宅に家を売れ！と言われる
筋合いはない！！」と言い返してくる･･･
「私は自分だったらと言ったんです。お宅の事は言ってない！！」
と言い返したが・・するといつもの同じ台詞で「誠意はあるんですよ」と繰り返す。
「お宅の誠意の意味がわからない。保険以外出す気はないって事は
お宅の腹は痛まないってことですよね！」と言うと「そうですねぇ～」
「でも誠意はあります。」と言う。
あまりの言い方に「お金も一銭も要りません。入院費も結構です。
その代わりお宅の息子をホームに引きずっていって列車の
前に突き落とします。それで五分五分でしょう」と泣きながら訴えた。
すると慌てて「いや、気持ちはあるんですよー」と言う。
「気持ちがあるならＲＹＵの足を返して！お宅の息子の足と
取り替えて私は息子を五体満足に産んだのに！！」
こちらが 感情的になりここまで言っても「誠意はあるんですけどね」
この件は後でこちらの弁護士に注意を受けた。
「感情的に物を言ってはいけない」と・・・
結局個人賠償の方から１月分を払い 高額医療の戻りで２月分を払う・・という事になった。
ＲＹＵの入院後 本人が警察の事情徴収へいけない為
私が何度か呼ばれていった。
相手の子Ａ君が 自分が押してＲＹＵを怪我させてた事を１００％認めていたので
状況説明などが主だったのだが・・
私達はＡ君に対して当然恨みは持っている。
例えふざけ半分の行為であっても ＲＹＵの将来を奪ったのだから。
だからと言って 憎んで憎んで憎みきっている訳ではない。
別の意味で「あの子も可哀想に」と思うからだ。
この事故でＲＹＵは足を失い右手にも障害が残っている。
排泄機能も駄目だ、子供も望めないだろう。
でもＡ君も一生抱えていかなければいけないだろう。
もしかしたら ＲＹＵとＡ君は逆の立場だったかもしれない・・・
そう思うとあの子も哀れだと思う。
私達がどうしても許せず後に訴訟を起こすことになった要因は彼の両親だ。
彼らは 事故後２ヶ月ぐらいの時 どうしても
ＲＹＵに会わせて欲しいと言った。
私は反対だったがＲＹＵが「Ａにこうされたのが悔しい。その事を
向こうの両親に訴えたい」と言った。
ＩＣＵの中へ入れると ベットの両側に駆け寄りＲＹＵの左右の
手を握り締め 涙ながらに「ごめんねーＯＯを許してねー
この償いは一生掛けて叔母ちゃんたちがするから許して・・・」
と泣いて繰り返すのである。
辛い治療を強いられていたＲＹＵは恨み言の一つも言いたかったので
あろうが両親の泣き崩れる姿に何も言えなかったのである。
「もういいよ」とでも言うように私に目配せをした。
そんな姿を見た後 まさかこんなに常識も誠意のかけらもない
人達とは思わなかったのである
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